第三話 君の事が知りたい
scene7 仕事終わり
―大知―
「お疲れ様でしたー」
「ありがとうございました」
雑誌の取材を終え、着替えるために急いで控え室に戻る。壁にかかった時計を見上げると、あまり時間に余裕が無かった。
「ハル、時間大丈夫かな。眞白に連絡した方がいいんじゃない」
セーターを脱ぎながら背後で着替えている悠貴に声をかけるが、呑気な返事が返ってくる。
「へーき、へーき。眞白、待つの慣れっこやで」
「ましろ、ってだれー?」
隣で着替えている千隼が首を傾げる。
「何、大知くんデートでも行くの」
瞬がにやにやしながら話に入ってくる。
「え、違うよ。眞白は……」
「デート?ちょっとやめてよ、スキャンダルは」
さっさと着替え終わった碧生が顔を顰めてこちらを向く。
「だから、違うんだってば」
「おーっし!行くで、大知くん」
いつの間にか支度を終えた悠貴がリュックを背負った。
「ちょ、ちょっと待ってよハル……」
「え?ハル、どこ行くん」
奏多が驚いて悠貴を見た。
「まだ俺と、もう一個仕事あるんやで。忘れとらん?」
「あーっ!」
悠貴の顔が青ざめた。
「忘れとった!」
「え、ちょっと嘘でしょ」
ようやく着替え終わったのに、荷物をまとめる手が止まる。
「大知くん、ごめん!眞白に言っとくで、先に行ってご飯食べとって!」
「え?!」
「ほら行くで、ハル。時間ないんやから」
奏多が急かす。
「ごめん!絶対行くから!」
「ハル!え、ちょ」
呼び止めたけれど焦ってる悠貴の耳は届かず、奏多に連れられ控え室を出て行ってしまった。
「……えー」
「すげえな、ハル。自分のスケジュールを忘れるなんて」
呆れたように碧生が呟く。
「大知くん、行かんでいいの?」
瞬に肩を叩かれ、はっと時計を見ると、眞白との待ち合わせ時間まであと五分もなかった。
「やば、行かなきゃ」
慌てて荷物の入ったバッグを掴んで部屋を出た。気をつけてねー、と背後で千隼の無邪気な声が聞こえた。
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