第2章 〇〇編 第1話 とある辺境の村にて
「村長! 既に半数以上の村民が病に伏しています。もう空き部屋がありません!」
この村は数日前に、ある人が発症したのを皮切りに謎の疫病が蔓延していた。既存の薬も魔法でも解決できず、ひとり、またひとりと倒れてゆく。それを村長は見ていることしか出来なかった。
「集会所に入り切らん者は、わしの家に寝かせろ。」
「ですが……」
「ですがもクソもないわ。わしは友人の家にでも泊まらせてもらうわい。」
感染の仕方がわからない以上、隔離するしかない。一応皆殺しにするにも一つの手だが、村民思いの村長には酷な話であった。
そして数日が経ち、逃げ出した者を除けば大半が病にかかり、村長も病にかかってしまい、絶望していた時だった。見慣れぬ服装に身を包んだ人が数人やってきた。皆首に太陽のような飾りを身につけていた。
村長は藁にもすがる思いで声をかける。
「すいません。この中にお医者様か魔術師の方はおらんじゃろうか。」
「申し訳ありません。私達は宣教師でしてお力添えに慣れるかは分かりませんが、話ぐらいは聞いてあげられますよ。」
村長は現状を余すことなく説明した。
「なるほど。それは私達ではどうにも出来ません。」
「そうですか……」
村長が項垂れていると、
「我が太陽神様ならもしや」
と後ろの方の宣教師がぼそっというのが聞こえた。それを流すわけもなく、
「もし、その太陽神様というのは? 」
「太陽神様は私達が信仰する神様です。信じるものは救われる。信じるものには太陽神様が奇跡を与えなさるのです。」
それは村長にとっては願ってもない機会だった。現状でどうにかできない以上、奇跡しかあるまい。
「ならば、わしがその太陽神様を信仰すればもしや。」
「はい。太陽神様は誰も拒みません。たとえそれが大罪人であっても。」
「わしは信じます。我が村民の疫病が治りますよう。」
「でしたら、これを授けます。毎朝朝日に向かい、祈りなさい。さすれば奇跡を与えてなさるでしょう。それでは太陽神様の御加護が在らんことを。」
そう言って宣教師らは去って行った。
そしてまた数日後、病は村から消え去った。確かに数人は亡くなってしまったが、宣教師がいなければ一体何人の犠牲者が出ていただろうか。
村人たちはその奇跡に感謝し、太陽教の存在を知る。そしてその話が吟遊詩人の詩の種となり、今や王都はその話題で持ちきりとなったのだった。
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