ミスって『威圧』をユニークスキルに選んでしまった俺の学園生活
天白あおい
プロローグ
15歳以上のものは皆ユニークスキルというものを持っている。個人個人の特別な能力みたいなものだ。剣の扱いが上手くなったり、魔法が扱えたり、身体能力が上がったり、はたまた料理が上手くなったり。
15歳以上と言ったのは15歳になると教会でユニークスキルを授かるからだ。宗教ごとにやり方は微妙に異なるらしいが、俺の場合は女神像の前で膝をつく儀式をした。
その時俺が授かったのは全部で9つだった。聞くところによると、平均的に5個くらいらしいので多い方だった。
授かれるスキルはその時までにやってきたことが影響するらしい。例えば隣お菓子作りが好きで作っていたら、料理系スキルを授かれるし、剣の鍛錬に勤しんでいたら、それ相応のスキルを授かれる。
ただし授かったスキルを全て選べるわけではなく、一つに絞らないといけない。
その選択に人生が大きく影響されることから、約半年くらい猶予がある。その間に、親などと話し合って決めるというわけだ。そして決まればまた教会に行けばいいという感じだ。
そんな人はいないのだが、もし選び忘れていたらランダムに選ばれるらしい。誰も怖くて実験できていないらしいが。
だから厳密に言えば15歳でも持っていない人もいるけれど、そこをつっこむのは勘弁して欲しい。
ここで、以上のことを踏まえて、俺に起こった一つの話を聞いて欲しい。信じられないけど、実際に起こった話を。
情景描写とか経緯とか全て吹っ飛ばして、教会に入って9つのスキルを授かった時だ。
平均5個らしいこともあり、少し浮かれていた。
中には見切りと言って、相手の行動を予測する能力が上がる、剣士うってつけのスキルもあった。他には筋肉増強系や、職人系も何個か、そして威圧があった。
魔法系がないのは予想していたけど、少しがっかりしたのを覚えている。
それでもよりどりみどり。その道の専門に進みたい人からすれば喉から手が出るようなスキルも多い。それこそ前述した見切りなんかがそうだ。
というのも、いくら剣術に長けていても、攻撃を受けてしまって腕がなくなるなど、酷い怪我を負って仕舞えばそれで剣士としておしまいだからだ。
それを生身でやってしまえる化け物が居ないこともないが、それは一旦横に置いておく。
閑話休題。
俺の話に戻すと、剣術学園に通いたい俺としては見切り一択だった。
一応親にも確認したけど、好きなものを選べばいいと言われたので、その場で見切りにすることにした。
決めてしまえばあとは簡単。
魔法陣の描かれた、茶色がかった紙にそれぞれスキルが書かれていて、そのうちの一つに血判を押せばいいだけだ。
少し勇気を振り絞り、親指に刃を当てる。
しかしその瞬間、どこから吹いたのか、風が紙を吹き飛ばしたのだ。それを落ち着いて拾えていれば良かったのかもしれない。しかし、俺は反射的に飛んでいるそれを掴んでしまった。先ほど切った手で。
そして親指から出た血は見事綺麗に「威圧」の紙に綺麗に指紋の跡を残し、無事「威圧」が俺のユニークスキルになってしまった。
これを踏まえてみんなの気持ちを代弁させてもらおう。
「そんなことある!? 」
そんな偶然あるわけがないと。分かる。その気持ちはすごく分かる。
でも言わせてもらう。
そんなことある!?
俺が一番そんなことある!? って叫びたいのだ。
今考えてもそんなタイミングよく、そこそこ重い紙を飛ばすほどの風がピンポイントで吹くなんて訳がわからない。
そして未だその原因がわからぬまま、俺は王立魔剣学院に通っているのだ。
あともう一つ、なぜ俺はスキルが威圧で受かっているんだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます