第55話 エルフの里


 出国審査は簡単なものだったが、入国審査で引っかかる。

「お前とお前は人間だろ?何しにこの国へ?」

「え?私とアースは?」

「お前は青い瞳に青い髪だから多分海王族じゃろ?そしてお前は岩窟族じゃろ」

「へぇ、アースは岩窟族だったのか」

「オラも知らなかっただよ」

「んでなんで人間がダメなんだ?」

「ダメというわけじゃないがここからはエルフの国だ、人間というだけで嫌われるぞ?」

「マジかぁ、嫌われるのはやだなぁ」

「でもここからしか通れないしね」

「お前らは売るものはあるか?」

「あるけど何故?」

「商人には多少の優しさはあると思うぞ」

 というのはエルフの男。

 なら商人になるしかないな。

「俺は商人になる!」

「そうね、そのほうがいいわ」

「よしなら何を売るのか見せてもらおうか?」

「んじゃケーキは?」

「これは綺麗だな食べ物か?」

「そうだ、食べていいぞ」

「では、…美味い!こんなものがあったとはな!」

 一つのケーキをペロリと平らげると、

「これを、二つくれ!嫁と娘の分だ。いくらだ?」

「ぎ「金貨一枚です」おい!」

「それは高級な菓子だな、だが買うぞ」

「毎度あり」

「売れちまったよ」

「あんまり薄利多売できる物じゃないんだろ?ならまずは高くしなきゃ大変だろう?」

「あ、あぁ、そうだな。俺が大変だ。ありがとうウェン」

「どういたしまして旦那!」

 ケーキを二つ渡すとマジックバックなのか、バックにしまうエルフの男。

「とりあえずエルフの里にようこそだな」

「あぁ、ありがとう」

 街道を走り次の街まで一日で着いた。

「人間が何ようだ!」

「商売に来ました」

「何も乗せておらんではないか?」

「これは移動用でして、こういうものを売っています」

 ケーキを出すとそれを手に取って匂いを嗅ぐと食べてしまった。

「うー、美味い!もっとくれ!」

「お買い上げですか?」

「う、いくらだ?」

「金貨一枚です」

「たかっ!高いぞ!」

「それを食べてしまったのですから本当はお代をもらいたいくらいですよ」

「な、し、しかたない。通ってよし」

 エルフの兵士は仕方なく通した感じだが、まぁ、買いに来るだろうな。

 ついでに樽シャンプーとコンディショナーも売るか。グラスもまだあったな。こう考えると売るものはいっぱいあるな。


「オラも食べたいだよ」

「私も!」

「はい二人にもやるから」

 ケーキを取り出してやると美味そうに食う二人。

「ニャー」

 お前はチェールね。とチェールを渡して宿に着くと。また、人間は入れないだとか言い出すので。おひとついかが?と、ケーキを渡すと機嫌が良くなり商人ならそういいなよと、宿を借りることに成功した。


 こりゃ骨が折れるぞ。

 たしかに美しいとされるエルフだし本当に美しいのだが年齢がわからない。女将もそれなりに行ってるようだが若く見える。

 まぁ、こっちのシャンプーとコンディショナーはあまり質が良くないのでゴワゴワの髪をしている。試しに女将にあげてみる。


「なにこれ!魔法みたいに綺麗になったわ!」

「こういうものを販売してます」

「もっと早くに欲しかったわ!でも売るんでしょ?買いに行くわね」

「ありがとうございます」

やはり人間とそう変わらなかったか。


 そうと決まれば日本に行きケーキを大量に購入し。あとはシャンプーなどの瓶を大量にネットで購入する。樽シャンプーなどは売ってないからだいぶ余っているし大丈夫だろう。


 さて、それでは開店といきますか。


「お客さん来ないねぇ」

「素通りだからね」

 と最初は来なかったが、門兵が来てガッツリ大金貨一枚分買ってくれたのでおまけでシャンプーとコンディショナーの試供品を渡すと喜んで帰って行った。次は女将さんで髪をサラサラさせながら歩いて来てはシャンプーとコンディショナーを買ってくれたのでおまけでケーキを二つあげた。するとどんどん人が集まりだして大繁盛になった。

 も、もう店じまいです


「っがれだー」

「大変だったな」

「うー」

「あんなに来るとはね」

 ようやく店じまいをして帰ってこれたが物珍しさで来る客も多くてやることがいっぱいだった。


「スタミナ定食だよ!元気だしな」

「うーん、飯だぞ」

「腹減ったぁぁ」

「ニャー」

 お前はいつものカリカリな。

「明日には収まるかな?」

「いや。一週間は続くだろうね」

「お金もういらないよ」

「しょうがないよ。商売人できてるからな」


 案の定朝から待ちが発生していたので、とりあえず開店だ。

 忙しさでアクアの目がぐるぐる回っているのでちょっと休ませて俺とウェンで捌いていく。アースはシャンプーなどを入れる係だ。

「シャンプーラストだよ」

「はいよ!シャンプー売り切れだよー」

「ケーキももう無いよ」

「ケーキも売り切れです!」

 午前中にはもう完売してしまったのでカフェで休む。ケーキを出してみんなを労う。

午後からは買い物だ。いろんな珍しいものが売っていて面白い。

 エルフは弓矢のイメージだったが、結構いろんな武器を取り揃えてあるな。

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