第44話 鉄壁


 しょうがないから、魔法屋に来ている。

 回復魔法を買うとアクアに割らせる。魔法はちゃんと使えるようになったようだ。

「これで怪我しても平気だね」

「怪我しないようにするんだ」

「はーい」

「それじゃあ、宿は別々だな」

「えー、一緒でいいよ」 

 まぁ、小さい時から一緒だから今更だが。

「ダメだ。これからは別に泊まること」

「はーい」

 あとはなにがあるかな?

「アクアが危険だと思ったらすぐに逃げること」

「ヒロトさんは?」

「俺はどうにでもなる最悪逃げればいいだけだ」

「異世界に!」

「あと異世界人というのは秘密だ」

「なんで?」

「なんででもだ!」

「分かった」

 あとはアクアの感覚に任せるか。

「後はついてくるなり好きにすればいい、いいところがあったらそこに住むのもいいだろう」

「はーい」

 本当にわかっているのか?

「明日次の街に行くぞ」

「歩き?」

「走ってだ」

「うそ?」

「本当だ」

「次の街まで6日はかかるよ」

「じゃあ走ってだから3日だな」

「げっ、マジじゃん」

 アクアもマジとか使うとはな。

 まぁ、奴隷でもないからいいんだけどな。

「荷馬車買おうよ」

「走りの方が早い」

「本当に走りなんだね」

「そうだ」

「分かったついていく」

「遅かったら置いていくからな」

「走りは得意だから大丈夫」


 さてどこまでついてこれるかな?

「じゃあいくぞ」

「おう!」

 ここら辺はもう慣れ親しんだ道だから快調だな!一日目はなんとかついてこれたみたいだな。

「ヒロトさん早すぎる」

「これが普通だ」

「クッ!絶対追いついてやるんだから!」

 夜の番は2人で交互に行った。

 2人いると楽だな。

 2日目にして遅れて来た。

「よう。もう飯の準備まで進めたぞ」

「クッ!早すぎる」

「ついてくるんじゃなかったのか?」

「だからちゃんと遅れてついたでしょ」

 3日目は街の門が閉まるギリギリに入って来た。

「本当に3日でついた」

「ギリギリだけどな」

「これから早くなるから」

 宿に着くと飯をガッツクアクア。

 そんながっつかなくてもいいのにとエールを飲みながら思う。

「疲れてるから先に寝るね」

「さて、これからどうなることやら」

 飯を食い部屋に入ると日本に帰る。

 テレビをつけると新しい内閣が決まったらしいが、不祥事だらけで叩かれている。

 俺につけられた警察ももういない。

 こちらでは自由にできるようになった。

 

 シャワーを浴びてビールを飲む。

 アクアがいる頃からの日課だな。

 ブログには書き込みはない。

「まぁ。異世界に行ける人間がそう何人もいたらパニックになるよなぁ」

 異世界に戻って寝る。

 朝は強いアクアはもう起きて朝飯を食べていた。

「今日は何するの?」

「決めてない、街ブラかな?」

「決めてないのにあんな急いでたの?!」

「急いでないぞ?」

「な!なんでそんな早く走るのよ!」

「早く走ってないっつーの!女将朝飯」

「ぶー」


「本当に普通に走っただけだ」

「もうちょっとスローに」

「しない」

 快調の時になんでわざわざ遅く走らなきゃならんのだ?

「クッ!分かったわよ」


「私はギルドで何か依頼がないか探してみる」

「んじゃ、俺は街ブラな。気をつけろよ」

「分かってるわよ」

 アクアは怒りながらギルドに向かった。

「さあて、ここはなにがあるかな?」

「魔法屋に行くが何も収穫なしか」

 剣も鎧も上等なので傷んできたブーツでも新調するかな?

 まぁいつもの似たブーツになってしまったが履き心地が違うのでなれるまで履き慣れないとな。

 あとは奴隷屋はほんとは行きたくないから行かない方がいいんだが見にいってしまう。

「お客様、どのような奴隷をお求めですか?」

「いや、ただ見にきただけ」

「まぁ、見ていってください!きっと気にいる奴隷がいますから」

 奥に案内されると一際大きな岩みたいなのがいた?岩があれ?

「こらアース!お前もアピールしろ」

「おらアースだ、言われたことはやるだよ」

「あはは。アースは何ができるんだ?」

「荷物運んだり…荷物運んだりできるだよ!」

「あはは、買うよ、いくらだい?」

「大金貨一枚です。金貨50枚が借金ですので」

「ぼったくりだな、まぁいいや」

「毎度!ほらアース」

「ありがとうございますだよ」

 奴属魔法も無事終わって服と靴を買いに出かける。特注しかなくて特注で作ってもらう。まぁ、こんだけでかい図体だからな。こりゃ鎧もそうだし、あとは武器だなぁ。

 防具屋に行き革鎧を特注で作ってもらうと今度は武器屋に行く。選んだのは盾だった。

「オラは怖がりだで盾で守るだよ」

 まぁ、面白いから盾でいいだろう。


 宿屋に帰ると宿を2人部屋にしてもらい飯を食わせると食う食う、二人前をぺろりと平らげた。

「こんだけ食ってまだ入るんだよな?」

「まだ食えるけど腹八分目っていうだよ」

「そうだな。じゃあ低ランクの依頼でも見に行くか」

 冒険者ギルドに行く。

 低ランクのキラーラビットなんかを選んで狩りにいく。

 面白いのが突っ込んできた魔物が全部盾に弾かれて死んでしまうことだ。

「あははは、鉄壁の守りだな」

「そ、そうだか?」

 途中レッサードラゴンを見つけて挑発すると向かってくる“ゴン”レッサードラゴンにも勝った。

 だがレベル酔いでダウンしたのでおぶって宿に帰る。ギシギシと階段が悲鳴を上げるがなんとか部屋についてベッドに転がす。

「また奴隷を買った?」

「面白い奴がいたんだよ」

「そいつの獲物は?」

「盾、鉄壁の盾だな」

「は?盾なんか武器にならないじゃない?」

「それが面白くてな!」

 今日あったことを話すとアクアも笑う。

「なに?そいつはいまレベル酔いしてるの?」

「そうだぞ」

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