第43話 異世界人


 海王族と言うのは知らないがまぁ、水魔法が使えるんだからそっち系統の種族なんだろうな。

「名前は?俺はヒロトだ」

「アクア」


 一応防具と武器も買って与えるがやはりまだ小さい様だな。

 バックを買ってやりマジックバックにするとそこに入れておく。

 宿に戻りご飯を食べさせるが結構こぼす。まぁ、最初は食べたいように食べさせるか。


 次の日は冒険者ギルドで低ランク依頼をこなしてレベル酔いで寝てしまったアクアをおぶって宿に帰る。


 晩飯まで寝かしてやる。

 晩飯は昨日よりガッツリ食べて満腹で寝る。本当に子供だな。

 次の日も翌る日も、低ランク依頼をこなしていくとレベル酔いにもなれて来たみたいで楽しそうにキラーラビットを追いかけている。少しくらいの怪我では泣かない、とても強い子だ。

 公国というのもあるが肥沃な大地には強い魔物が多い。だから帝国も手放したんだろう。だがそれが逆にアクアを強くしていく。

 俺がいるからどんどん強くなっていくアクアだがまだ子供なんだよなぁ。


「ヒロト様ぁー」

「どうした?」

「剣が小さいです」

 今持たせてるのは短剣だ。

「持てるかな?」

「はい」

 武器屋で長剣を持つアクアだがアンバランスすぎるので脇差程度の子供用の長剣を作ってもらうことにした。

「これでどうじゃ?」

「はい!これでいいです」

 背中につけれるようにしてもらい嬉しそうなアクア。

「あれ行きます」

「レッサードラゴンだぞ!」

「せいやー!」

 首を一刀両断する破壊力だ。

「倒しました!」

 とこっちを見てるアクアに襲いかかる別のレッサードラゴンを斬り伏せる。

「あぶない!ったく油断するなと言ってあるだろ?」

「はーい、すいません」

「ったく!」

 俺がまだいる間はいいが居なくなってからが大変だな。

「街の移動も大変だな」

「なんでですか?」

「アクアじゃまだ夜は危険だからだよ」

「はい」

「まぁいい、ここに一、二年いるかな」

「はい!」


 


 二年経つとずいぶん背も伸びてきて、まだ子供だが大人顔負けの冒険者へと変わって来た。

「アクア!」

「はい」

 2人でレッサードラゴンの群れを倒していく。

「グッ」

 レッサードラゴンの爪攻撃を受けるが左腕だけで止めて右で斬る。

「ヒール」

「ありがとうございます」

 レッサードラゴンの群れを倒してしまうと

マジックバックに詰めていくアクア。

「終わりました」

 ふぅ、と息を吐きながら言ってくるので、

「もうちょっとだな」

「はい!」

 そろそろお別れの時期だな。

「もう大金貨なんて簡単に稼げるな」

「はい!」

「なら解呪してやるからじっとしてろ」

「いやー!」

 逃げていくアクア。

「なぜだ?冒険者としての素質はあるぞ」

「嫌です!だって解呪したらまた旅に出るんでしょ?一緒に行っていいならいいですけど」

 なんてワガママな娘に育ったんだろうか!

「そりゃそうだろう、俺は根無草だ。お前はこの街に残って暮らせば安心だろ?」

「私だってもう子供じゃないんですからそれくらいわかります!でもヒロト様と一緒がいいです」

「他の子はちゃんと残っていったぞ?」

「他の子と一緒にしないでください!私は私ですから!」

「ワガママだなぁ」

 本当誰に似たんだか?

「ワガママで結構です!奴隷を辞める気はありませんからね」

「それはダメだ。ちゃんと借金も返してるんだ。法律上問題だぞ!」

「金貨一枚返していません!私の分は私の分でとってますから!」

「あ」

 そういえば最初のうちは金の計算を教えるために俺がやってたけどそのうち任せるようになったんだっけ。

「じゃあ、今返せ。俺はもうそろそろ次の街に行く」

「じゃあついていきますから返しません!」

 そんなバカなことあってたまるか!

「本気で行くぞ?」

「や、やめて!」

「なら返すんだ」

「えーん、やだ!」

「ワガママ娘が!」

「やだやだやだ」

 そんなに奴隷がいいのか?いや、俺と一緒というところか。

「俺は歳をとるんだ、爺さんなる前に全国を回ってみたい」

「それ本気ですか?全国なんて途方もないですよ?」 

「それでもいい、途中でくたばろうがいろんな景色を目に焼き付けときたいんだ」

 四人の嫁に話をしてあげないとな。

「そんなに大事な人たちだったんですね」

「あぁ。俺にとってかけがえのない人たちだ」

「なら尚更返せません!私がその意思を引き継ぎますから」

「馬鹿!自分の夢をもて!それに対して足掻け」

「だから足掻いてるでしょ!ヒロト様と一緒にいきたいんです!」

 わからずやだな!もういい勝手に解呪してやる!

「あ。あーーーんふぇーーーん」

「勝手に解呪させてもらったぞ?」

「いーやーだー」

「娘みたいな奴が自分の奴隷だとストレスだ」

「娘?えへへ、いやぁ」

 泣きながら照れてる器用な奴だな。

「だからここに残れ」

「それはいやです!」

「どうにかならんのか?」

「無理です!一生ついてまわります」

「俺は人と違うぞ?」

「何が違うんですか」

 扉を出す。

「これが見えるか?」

「見えません」

「だろうな…もう四十年くらい生きている」

「は?うそでしょ?」

「本当だ。この世界の人間でもない」

 誰にも言ってないことを今言っている。

「嘘だ、現にここにいるじゃないですか」

「違う場所違う次元から来ている」

「俺は扉の中に入り服を着替えて出ていく」

「え、えぇ!凄い」

「なんだその反応は?」

「え、だって異世界人なんでしょ?絵本にも書いてあった」

「絵本?なんのことだ?」

「異世界人は不思議な力を使い、この世界を変える存在だって」

「そんな絵本があるのか?」

「ある。小さい時に見たことがあって異世界人さんが来て私を変えてくれないかなぁって思ってたもの」

 アクアの瞳はますます輝いている。

「だからその」

「絶対ついていくから!」

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