第42話 喧嘩上等


「表に出ようか」

「ヒロトさん、すいませんサリ!やめないか」

「いいや、気に入らないね!」

 立ち上がるサリ。

「死んでも知らんからな」

 俺は少しばかり腹が立っていた、奴隷上がりの冒険者がなんだ?レイナもリリーも奴隷から上がって頑張ってるんだ。

 それを誇りに思ってるなら間違ってる。

「ヒロトさん!やめて下さい」

「いやこれは俺とサリの問題だ」

「なら俺はサリの方につきます」

「いいぞ、二人でこいよ」


 勝負は一瞬でついた。

「どうした?奴隷根性でどうにかするんじゃないのか?」

「いや。すいませんでした」

「グックソッ!ウチらはこんなもんなのか!」

 俺はサリの髪を掴むと頭を上げさせる。

「奴隷にこだわってるうちは俺には勝てん!俺は二人奴隷から解放して鍛えたが二人ともお前よりよっぽど強くなれる」

 手を離すと項垂れているサリを支えるようにランガが手を貸している。


 次の日には二人は謝って来て鍛えて下さいと来たもんだ、俺は嫌だと言ってギルドの依頼でもこなしてこいと言った。

 訓練するよりそっちの方がはるかに楽に強くなれる。


 外に出るとホテルとアリィが商売のことで話し合っていたので隣で朝飯を食う。

「そこは8割もらわないと」

「いや7割だ、これからの付き合いもあるからな」

「それじゃ7割で」

 教えてもらってるだけか。

「昨日はランガとサリをコテンパンにしたらしいじゃないですか?」

「あの日は気が立っててな、悪いことをしたよ」

「いいんじゃないですか?私達にも謝って来ましたし」

「ん?お前たちも何かされたのか?」

「いや。態度のことですね」

「あぁ、そりゃしょうがないよな」

「で二人はギルドで依頼受けてるんだろ?」

「らしいですね!」

「少しはお灸になるといいが」

「なってるんじゃないですかね」

 夕方になるとボロボロになって帰って来たランガとサリ、何を相手にしたんだと聞いたら地龍だった。馬鹿げてる。

「自分を見誤るなよ?今のお前らに地龍に勝てるわけないだろ「ヒール」」

「ありがとうございます。そうですね」

「いけると思ってた私らがバカだった」

「もっと経験を積んでからやる相手だ」

「はい」

 防具と武器を新調しないといけないから明日もこの街だな。


 二人とも剣士だから鋼鉄の武器当たりだろう。空きがあるのがあるな。

「ほら、これでも持っとけ、護衛が剣なしじゃカッコつかないだろ」

「はい。ありがとうございます」

 二人には雷属性を付与した剣を渡してやる。

「あ、コレ属性剣だ」

「ほんとだ、初めて見たな」

「明日一緒に剣を見にいってやるからつける属性を選んどけよ」

「「はい」」

 これをお人好しと言うんだろうな。

 次の日は盗賊の報奨金などが入るはずなので取りに行くと大金貨800枚だった。思ってたより少ないな。

 まぁ。こんなもんだと思い受け取るランガとサリだがニヤけた顔の兵士長を見て、

「出すものは出した方が身のためだぞ?」

 とプラプラAランク冒険者証をちらつかせると急いで大金貨200枚上乗せで持って来た。

「「ありがとうございます」」

「いいや、あの顔が気に食わなかっただけだ」

 武器屋に行くとやはり鋼鉄の剣を選んでいるのでこれとこれだと指示をして買わせる。

ランガが風属性でサリは雷が気に入ったみたいなので付与してやる。

 後の防具は勝手に選べと言って別れた。


 カフェでお茶をしてるとホテル達と合流する。明日には出発みたいだから俺もそれに合わせて出発することにした。帝国の中の公国という場所に行こうと思う。

 ホテル達はこのままぐるっと帝国を回った後王国にまた行くそうだ。


 次の日には揃って宿を出て途中まで一緒に行く。途中で分かれ道になったので公国に向かう俺とは逆方向のホテル達とはここで別れだ。

「またどこかで会いましょう」

「あぁ。元気でな」

「私達もまたあった時はよろしくお願いします」

 サリがちゃんと頭を下げたことにびっくりしたがちゃんと挨拶して別れる。


 走って公国に入るとまた違った雰囲気だなぁ。

 荒野が多かった帝国に比べると草原で牧歌的な雰囲気だ。走っていくと街じゃなくて村が見えたので一泊する。どちらかと言うと奴隷から解放された人たちがつくった公国らしく帝国の帝王が頂点だが公国として独自のスタイルらしい。


 公国では農作物が豊富で帝国に卸しているとのことだった。


 まぁ女将の話だけどな。

 街の中をブラブラとしているとやはりここでも奴隷を扱ってるんだな。元奴隷が奴隷を買うなんてなんだか凄いな。

「冒険者の人!見ていかないかい?」

「いや俺はいいや」

「そう言わずにさ、良い子もいるから」

「いや、冒険者だから要らないだろ?」

「ここじゃあ売れねえんだよ、ちょっと見るだけでも」

「わかったよ、見るだけな」


 中に入ると貫頭衣の奴隷が檻の中に入っている。

 1人毛色の違う女の子?がいた。

「お。その子が気になるかい?その子は海王族の末裔さ、青い髪に青い瞳が特徴で水魔法も使えるぜ?」

「違法奴隷じゃないのか?」

「と、とんでもない!こちとら安心安全ニコニコ奴隷屋なんだぜ?違法奴隷がいてたまるかってんだ」

 じゃあなんで?

「覚醒遺伝ってやつみたいだな。自分の親に気持ち悪いからって売られた可哀想な子なんだわ」

「本当か?」

 頷くその子は悲しい瞳をしていた。

「じゃあその子を買うよ」

「へ、あ、あぁ、よかったな!」

「はい」

「いくらだ」

「借金が大金貨1枚で売値が金貨50枚だから」

「ほら、大金貨2枚だ釣りはいい」

「へ、ま、まいど」

「ほら、早くしろ」

「へい」

 ちょっと苦しい顔をしながらも耐えると俺の奴隷となった。

 まだチミっ子だから冒険者は無理だろうな。でもレベルを上げていけば二、三年でイージ達には追いつくだろう。

 まずは服屋と靴屋だな。

 靴屋の店主も服屋の店主も奴隷と知っていいものを選んでくれた。「クリーン」をかけて綺麗にしてやるとそれなりに可愛い子供だ。

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