第39話 コタロー


『我を出すとはようやるのう!』

『主人の体わから出たんだ!もう負けはせん』

『次はそいつの体をもらおう』

「俺か?けっ!やなこった!」

『ならこれを喰らうといい』

 呪いをかけてくるが、

「解呪」

『なに!』

「呪いの類は効かないんだよ」

『がうぅ!』

 喉元に食らいつくコタロー!

『ぐおおぉぉぉぉ!』

「お前らは人間がいなけりゃ生きていけないんだろ」

 胴を一閃すると下半身が灰になって行く。

『ばなせ!ごの犬!』

「離すなよコタロー!」

 俺は体を切り裂き右半分が灰になる。

「いけ!コタロー」

『がうぅ』

 ブツンと言う音と共に悪魔王とやらは灰になった。

『主、仇は取ったぞ』

「ヒール」

『すまんな』

 コタローにヒールはもう効かない。

「あぁ、あんだけ強かったんだ、そりゃ主人と一緒がいいだろう」

 最初のセイクリッドソードで致命傷を負っていたコタローはヒールが効かなかった。

『お前もなかなかだったぞ』

「けっ!おべっか使うなよ!あっちでよろしくやれよ」

『あぁ、もう疲れたからな』

「あと俺の嫁に手を出すなよ」

『フフッ!言っておく』

 コタローは光になって消えていった。

 さすが神獣様だな。

 

 二日は外に出て行く元気もなく、日本に帰ってビールを飲んで過ごした。やはり気の合う仲間がいなくなるのはどうしてもやるせないな。

「みんな自由すぎるんだよ!勝手に死ぬな!」

 俺は大声で叫ぶと涙が溢れ出す。

「俺を置いて行かないでくれよ」

 俺を監視している奴もビックリしただろうな。

「あははは、笑えるぜ!俺と関わる奴が死んでいくのがよ!やっぱひとりがいいな」

 俺と関わると死んでいく仲間達。俺は死神か?

 

 ニュースでは物価の高騰をやっている。

 そんなもんクソ喰らえだ!総理が何とかしろよ!…あぁ、そうか、前総理は俺が殺したんだっけ?

 さて俺の世界へ帰るか?

 異世界でしか年取らないから人生ってのが長くてな。

 次は悪魔城にでもいくか。


 俺は南西へ走って行く、気の抜けてる連中の隙をついた作戦だ!なんてな、ただの憂さ晴らしだ!

 悪魔城まで走って三日もかかったがそのまま突っ込んで悪魔どもを斬りまくる。

 お前たちが俺の人生を狂わせてんだよ!

 傷を負うがそのまま、呪いは解呪して戦い続ける。

ある程度おさまってきたがまだまだいるだろう。

 城の奥へと行くと門がありそこから悪魔がこっちに出てきているようだったので閉じて錠をかける。

「あははは。これでこっちに悪魔はやってこれないわけだ!」

『その錠を外せ!』

「やだね!誰が外すかよ!」

 悪魔はこの手で斬る。

 俺の嫁にコタローに、悪魔に殺された奴が俺の大事な人たちだったのが悪い!


 俺は城にいる全ての悪魔を斬り殺すと門がアイテムボックスに入ることに気がつく。

 これも何処かと繋がってるんだもんな。

 だがこれで出てくる悪魔はいなくなったな。

 それとアイテムボックスに悪魔達が溜め込んでいた大金貨などを入れて行く。そこら中にあった死体は焼いてやる。あっちでは楽しくやれよ。


 次の街まではゆっくりしながら行った。

野営をしてもここら辺はモンスターがいない。次の街に着いたのは五日後だった。

 奴隷で有名な街らしい。

 冒険者ギルドで地龍の残りを卸して現金に変える。

 地龍の防具で結構使ったからな。

 悪魔城での収入がなかったら狩りにでかけるとこだ。


 宿に着くと奴隷が売り込んでくる。

「何でもしますんで私を買いませんか?」

「いや。間に合ってるからいい」

 宿の女将に一泊すると伝えて部屋へ入る。

 と日本に帰る。


「はぁ、まさかあんな小さい子まで奴隷なんてな」

 帝国は自国民を強くしたくて奴隷制を取り入れているらしいがそんなもんクソ喰らえだな。

 こっちが平和でいいやな。

 ビールが切れていたので買いに行く。

 近所のコンビニだ。

 私服警官もついて来ているがそんなのは気にしない。

 コンビニの店員がさっきのこと重なる。

 こっちで生まれたら普通に暮らせたのにな。

 現金で払うとお釣りを渡され帰る。

 こっちでも奴隷商なんかがいるんだろうな。

 そう言うやつをこいつらもマークすればいいのに。


 家に帰り着くと鍵を閉めてニュースを見ると伊藤のやったことが認められていた。

 遅いんだよ。

 いなくなってからじゃ遅いんだ。

 ビールを飲んで愚痴を言う。

 いつからこんなに寂しい生活だったっけ?

 あぁ、最初はこんなもんだったな。

 ワンルームから始まってここまでくるのにもう十数年は生きてるがいまだに慣れないのは歳を取ってないからか。

 スマホで社長に連絡してみる。

 孫ができたみたいで嬉しそうに話す。

 社長には幸せでいてもらいたいもんな。

 こっちでたった一人の年の離れた友人だ。


 電話を切った後まだ俺には友人がいたことを実感する。

 そうするとようやく活力が湧いて来て異世界に行こうと言う気になる。

 酔い覚ましに顔を洗って、異世界に帰ると、

“コンコン”とノックの音がする。

「どうぞ」

「あの、私を買ってもらえませんか?」

「いくら借金があっていくらで買えばいいんだ?」

「大金貨二枚の借金で大金貨四枚で買っていただけると嬉しいです」

 貫頭衣を着た薄汚れた二十歳にもなっていないだろう女の子が可哀想で買ってしまった。

 奴隷商に行き代金を払うと、ニタニタとするその顔をぶん殴りたくなったが、大金貨四枚でその子を買ったことに変わりはないからな。

「クリーン」

「えっ!」

「薄汚れたままじゃ嫌だろう。服を買いに行くぞ」

「は、はい」


 そのまま服屋に連れていってパンツルックに身を包んだ少女は裸足だったので今度は靴を買いに行く。ショートブーツにしてこれでいいだろう。

「俺は冒険者だから冒険についてこれるように防具と短剣を買いに行くぞ」

「はい!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る