第36話 宝物
俺とリリーはもう返済は終わったということで爺さんのやってる奴隷屋に来た。イージもいたので何やってるんだと聞くと情報収集らしい。
「リリーは解放だから奴隷を解放してやってくれ」
「えっ!昨日の今日で奴隷解放?」
「どんな手を使って」
「大金貨一枚くらいすぐ稼げるさ」
と言うと思い出したようにイージが、
「あぁ。Aランク冒険者だった」
「そうなんですか?」
「そうだぞ?」
「なら納得です。解放しましょう」
爺さんは解呪の呪文を唱えて解放する。
何だ。解呪魔法なら持ってたのに。
「良かったなリリー」
「はい!ありがとうございます」
「どれくらい儲かったんだ?」
「私は大金貨九枚もらいました」
「スッゲェな!」
「驚きですよ」
爺さんも驚いていた。
「あっ!昨日地龍倒したのって」
「俺だな」
「やっぱAランク冒険者は格が違うな」
とイージは言うと、リリーがなぜか誇らしげにしていた。
「次の奴隷をお買い上げになりますか?」
「いや、奴隷はもういいや」
「そうですか、それは残念」
さて、魔法屋にでも行くかなと思って歩いて行くとリリーとイージがついてくる。
「どうしたんだ?」
「いや。まだ、慣れてないんでもう少し一緒にいてもいいですか?」
「ん?まぁいいけどイージは?」
「兄ちゃんといると金の匂いがするからさ」
「そんなことだろうと思ったけど今日は買い物するくらいだぞ?」
「何を買うんだ?」
「魔法屋で掘り出しもんがないかなと思ってな」
「魔法まで使えるのかよ!すげぇな!」
「別にAランクなんだから普通だろ?」
「いや。魔法の使えるAランクなんて一握りだぜ?」
「そうなのか。てっきり多いと思ったが違ったみたいだな」
じゃあ。剣技だけで這い上がったりしてるわけだ?凄いな。
魔法屋に着くと何かないかと聞く、鑑定をしたのだろう。奴属魔法しかないと言ったのでそれを買っておく。金貨五十枚だ。
リリーも何か買えばいいのに買わずに貯めとくんだそうだ。
逆にイージが欲しがったのは鑑定魔法だった。
金貨30枚だがイージにとっては大金だ。
しかも覚えられるかわからないと来た。
諦めて情報屋を続けるらしい。
カフェでお茶をする。俺はコーヒーを頼み他の二人は果実水を頼んでいた。ドーナッツを出すと待ってましたとばかりにくらいつくイージにリリーも負けじと参戦していた。
やっぱり子供はお菓子が似合うよな。
「うまい!甘い!」
「美味しいです」
そうかといい、アイテムボックスには残り少なくなったドーナッツがまだある。
「それは何ですか?」
「は?ドーナッツだが?」
「うちのご主人様が食べたいと言っているので買うことはできますか?」
「無理だな、売るほど残ってない」
「わかりました」
トボトボと帰って行くが怒られたのかまた来て。
「大金貨を払うのでその残りを売ってください!お願いします」
「はぁ、いいよ持っていきな」
最後の一つを残して残りのドーナッツを渡すと大金貨一枚を置いて持って帰る奴隷は褒められていた。
「あれがジンのやり方だ。金にものを言わせてやりたい放題だ」
「まぁ。ちゃんと代金を貰えたからよしとしよう」
最後のドーナッツは誰にもあげない。天国で待ってるあいつらに残しておく。取り合いになるだろうな。
「あはははは。悪い思い出し笑いだ」
「?」「?」
クリームをつけたイージとリリーがハテナとなっているが、久しぶりにアイツらで笑った気がした。
俺の中のアイツらはもう思い出になってしまっているがそれでも大事なんだな。
さてと、次はどこに行こうか?
「どこかいいところはないか?」
「なら賭博場があるよ」
「ギャンブルか。それはいいや」
博打は勝てる要素がないとしないほうがいい。
「私服屋に行きたいです!あとバックも欲しい」
「なら俺が案内してやるよ」
「俺は宿で待ってるからな」
「「うん」」
リリーとイージが買い物に出かけたので俺は宿に戻って日本に帰る。
相変わらず見張りがついてるが敵意は感じられない。シャワーを浴びてビールを飲みながらテレビをつけると、伊藤と万能薬擬きのレシピのことについての口論が起きていて聞いてて笑ってしまった。
今日はよく笑える日だな。
伊藤よ、お前がしたことになってるぞ?
「あはははは!伊藤よ、そっちに行ったら飲もうな!」
死んで行った俺の嫁達と伊藤という友達はやはり最高だ。
俺は天に向けて乾杯をして、ビールを飲み干す。
気付くと寝ていたみたいだが。それもまたいいだろう。
あっちの世界に戻ると、下に降りてお上に一人部屋に移してもらった。ちょうど二人が帰って来たのでリリーも一人部屋に移してもらいテーブル席に座って買ったバックに魔法でマジックバックにしてあげると喜んでいた。俺もといいズタ袋を差し出してくるイージには、俺が使っていたバックを上げた。
「いいのか!こんないいバック」
「ああ、俺が冒険者なりたての頃に買ったバックだ。大切に使えよ」
「あぁ!大切に使うさ!俺の宝物だ」
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