第30話 悪魔街


 悪魔の館の話を聞いて俺は昼過ぎにその館に向かっている。

「ここが悪魔の館か?」

「そうよ!死になさい」

「アクセル」

 後ろには骸骨のようなババアが鎌を持って殺しに来ていたので斬ったら。

「ギャアァァァァァァ」

「こんなもんか」

 灰となって消えて行く。

 門を開いて入って行くと何人もの死体が転がっていた。

「あら、どなたかしら?」

「いや、悪魔に嫌な思い出があるもんでね。人を殺してるなら退治しようかと思ってな」

「あらそう、なら遊んで行くがいいわ」

 何匹もの悪魔が一斉に飛びかかって来るが、斬り伏せていくと灰になって消えて行く。

「なっ!何て化け物なの!」

「悪魔に言われたくないね」

「あなた本当に人間?」

「正真正銘人間さ」

 その間も飛びかかって来る悪魔達を灰に変える。

「クソッ!こうなったら出てこい!」

「は!でかい悪魔だな!」

 館に入りきらなくて館が崩れ出した。

「っと、デカすぎるだろ」

「でかいだけじゃなくってよ!」

“ブォン”

 と素早い音が聞こえたと思うと俺が横に跳ね飛ばされる。

「ヒール」

「あら意外とタフなのね」

「こりゃ本気で行かないとな」

 俺は剣先に魔力を流すとそれを振るう。

「ギャアァァァァァァ」

 右腕が肩から灰になって行く。

「よっと、おらっ!」

 今度は左肩から灰になると、首を斬って全てを灰にする。

「よ、よくも私の館を!」

「館はお前が自分で壊しただろ?」

「お前は絶対殺す」

 何かがまとわりついたような気がして自分を鑑定すると呪いがかけられていた。

「解呪」

「なに!私の呪いが効かないなんて!」

「悪いな!」

「キエェェェェエ!」

「ほい、終わりっと!」

「ウギャアァァァァァ」

 立て真っ二つになった悪魔は灰になって消えていった。

 悪魔の館か、あの女の子も可哀想に。


 で帰る途中で匂いを嗅ぐデニムと出会う。

「悪魔にはなってないみたいだな」

「当たり前だ」

「どうだった?」

「あんなもん楽な方だろ」

「そうか!よかったな!」

「あぁ、それよかいいのか?キャロットの方が我慢できないみたいだが?」

「クソッ!バレてたか!」

「バレバレなんだよ」

 デニムとキャロットも悪魔だった。

「私があの体に入るわ!」

「いやいや、俺だろう」

 獣人特有のスピードで迫って来る二人を一閃すると、

「「ギャアァァァァァァ」」

「お前らは臭すぎるぞ」

 デニムとキャロットは灰になって消えていった。

 まさかこの街全部じゃないだろうが、これだけの悪魔がいたんだ、注意しないとな。

 冒険者ギルドに行くと悪魔の館討伐が貼ってあったのでこれを完了したと言ったら何体か反応していたので、

「弱すぎてつまらなかったよ」

 と煽ると飛んで来る!

「バカが!」

 と剣で一閃すると灰になって行く冒険者達。

 唖然とする受付嬢は人間みたいだな。

 だが別の受付嬢はそうではなかったらしく俺の後ろに立つと素早い動きで短剣を胸に刺そうとするが、それを交わして頭に剣を刺すと灰になって消えて行く。

「キャァァァァ」

 とあまりのことでついていけなかったのか受付嬢が叫ぶと街頭にたかるように飛んで来る悪魔達。全部切り伏せると残ったのは数名の冒険者と、受付嬢だけだった。


 一人の冒険者の前に立って、

「お前は何で来ないんだ?」

「なぜバレた?」

「そこまで敵意が見えてるとな」

「クソが!」

 と逃げ出してしまったがこれで炙り出せるだろう。

 外はもう悪魔だらけだった。

「こりゃ骨が折れるな」

「クハハハ!こんだけの人数を一人で倒せるものか!」

「アクセル」

 時間魔法で自分の時間だけ早く動かす魔法だ。

 連続で斬って行くと宿屋の女将や昨日来た娼婦も悪魔だった。

「半分ってとこか」

「えーい!やれい!」

 スピードは速いがこれと言って技がないから斬るのは難しくない。

 ただこれだけ多いと難儀なだけだ。

 全て終わったらここは廃村になるのかな?

「くっくそ!なぜもう少しだったのに!」

「この街を全部悪魔に変えるつもりだったのか?」

「そうだよ!ここまで来るのに何年かかったと思ってるんだ」

「知らねえよ!」

「ウギャアァァァァァ」

 最後の一人を殺すと街は閑散としていた。

 あと残ってるのは悪魔の魔法屋がいるが敵意を見せていないのでそれはそれでいいのかもしれないな。

 悪魔じゃない住人が出てきて泣き叫んでいたが気付かずによく暮らせていたと思うよ。


 宿に戻ると一人の男が立っていた。

「お前はやりすぎだ!」

 蹴りが早すぎて見えなかった。俺は蹴られて道端に転がる。

「ヒール」

「何でお前みたいな強い奴が?」

「悪魔なのかって?こいつはAランク冒険者だったのさ」

「その力を受け継いでるってことか」

「そういうことだ!」

 剣が振り下ろされるので剣で鍔迫り合いになるが力は俺の方が上らしい。

「クッ!オラぁ!」

 蹴りが飛んで来るがそれを後退して避ける。

「足癖の悪いことだな」

「クソ!何でこんな強い奴が」

「お前らは人間を何だと思ってるんだよ?」

「は?ただの餌だろ?弱肉強食だよ」

「なら俺の勝ちだな、アクセル」

 その男の首を刎ねると灰になって行く。

「ふぅ、これでようやく落ち着いたか?」

 悪魔の街での戦いはこれで終了らしかった。

 ギルドに戻ると受付嬢が逃げようとするので、悪魔を退治しただけだというと、

「わ、私は家に帰らせてもらいます」

 と帰って行った。

 家族が無事ならいいが。

 俺は今度こそ宿屋に行って自分の部屋に入り、日本に帰ってシャワーを浴びる。


 あんなに悪魔が集まるんだなぁと思いながらシャワーから上がって一杯やる。

 ビールを飲みながらテレビをつけると伊藤が死んだと初めて知った。

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