第27話 悪魔


 旅は順調、王都の東に向けて進んでいる。

「ウチ行ってくる!」

「私がやる」

 チャムが走り出そうとするとヤジリが弓で魔物を射る。

「だー。死体取りに行っただけじゃんか」

「遠くの敵なら私だ」

 チャムがマジックバックに入れて運んでくるのを笑ってみているヤジリ。

 レベルで言うと、

シャルロッテ レベル54

クオン    レベル51

チャム    レベル49

ヤジリ    レベル51

 となっている。

 まだまだ魔物との戦闘でレベルが上がるだろう。

 のんびりとした旅が続く。

 次の街に着いてようやくベットで寝ることができる。結構大きな街だ。

 彼女らも疲れただろうと思ったが元気いっぱいだった。

「買い物いこうよ」

「いいねー!」

「行こう行こう!」

「あたしゃ、金稼ぎに行ってくるさね」

 ルーはまた博打をやりにいくそうだ。

「俺は少し疲れたから部屋にいるよ」

「そう、それがいいかもね」

「ウチがお土産買ってくるからね」

「わかったよ、いってらっしゃい」

「みんなとキスをして見送ると、部屋に入って日本に帰る。

「ふぅ、こっちではなにもないから退屈だなぁ」 

 と思ったら伊藤から電話があって水苔の一種から同じ成分が取れるとのことだった。これでとりあえず万能薬擬きを作ってみるそうだ。

 いいニュースだった。

 万能薬がこちらでもできれば死亡率もグンと下がるからな。

 あとは樽にシャンプーとコンディショナーを詰めてもらいに行き、甘いものが好きな奥様方へのお土産としてお菓子をたくさん買っといた。それからルーへの土産に高級な酒を買った。


 異世界へと戻った俺は疲れからドップリと寝てしまっていたらしい。

 起きたらシャルロッテが横に寝ていた。あぁ、俺のことを心配して起こしに来なかったのか。

 俺はそーっと抜け出して日本に帰ると顔を洗い少しボーっとする。

 なぜ神は俺にこんなことをさせたのだろうか?まぁ神のイタズラかもしれないが。

 俺はもうこっちの人間ではないからな。


 パソコンを立ち上げインターネットで検索するがクローゼットから異世界に行ったやつなんかいない。だからブログにでも残しておこう。俺が体験した不思議な出来事を。


「ほれ、酒だよ」

 俺たちは今、宿の朝飯を食っている。

「うひょー!高そうな酒じゃないか」

「今は飲むなよ?」

「わかっとるわい」

 と自分のマジックバックにしまうルー。

「私達には?」

「今じゃないってだけでちゃんとあるよ」

「やったー」

「それより昨日は寝てしまってごめんね」

「ううん、私達こそこんなに疲れさせてたんだなぁって反省したの」

「やり過ぎかい?」

「ルー、下世話だよ」

「あいよ」

 と朝のうちにやることを決めた。

 ルーはいつもの博打をやるそうだ、俺は商業ギルドにいって、シャルロッテ達は冒険者ギルドに行くみたいだ。


「気を付けてね!」

「皆んなこそ気をつけろよ?」

「はーい!」


 俺は商業ギルドに行って卸してから冒険者ギルドに行く。みんなはもういなかったが一人でもできるので問題は無い。

 地龍の討伐があったのでそれを受けると草原を走る。

 すると、誰かが戦っている声が聞こえて、シャルロッテだだと気がつくとそっちに向かってスピードを上げる。

「エリアヒール」

 そこには倒れてる四人がいただが時すでに遅く、四人は動かない!

「エリアヒール」

「あ?お前何やってんだ?」

「おい!お前こそわかってやってんのか!」

 髪が逆立つ、気持ちが昂り怒りが込み上げてくる。

 よくみると男は服が破れているから戦った証拠だろうが余裕で立っている。

「あぁ。それのつがいか?悪いな殺してしまった」

「殺したじゃねえんだよ」

 鑑定極で見てみると悪魔と出ていた。

「へぇ、鑑定できるんだな」

「悪魔だからなんなんだよ?」

「あはは。俺はかかってきたから殺しただけだぜ?」

「それでもだ」

「まぁ手応えがなかったんで不完全燃焼だけどなぁ」

「相手してやるよ」

 男は剣を握っているので剣を抜き飛びかかる。

「遅いぜ」

“キンッ”

「お前こそどこ見てやがるんだよ」

「アクセル」

「グハッ!」

「こんなんじゃ済まさねえ」

「なんだ今のは…」

「もう一度行くぞ」

「チッ!この人間風情が」

“キン”

「ガハァッ」

「俺の方が力は上のようだな」

 剣同士がぶつかり合うが推し勝ち剣で胴を切り裂く。

「グハッ…こんな強い人間がいたとはな」

「俺の嫁さんを返せこの馬鹿野郎」

「グハァッ!くそっ!」

「オラオラオラ」

「クッ!そがぁー」

 悪魔は人間の間脱いで歪な悪魔になっている。

「人間如きに俺様が負けるわけないんだよ!」

「うるせぇよ!」

「グッ!」

 俺の剣圧で悪魔野郎の翼を切り裂く。

「アァァァァァァァァ」

「うらああぁぁあ!」

 飛び込んできた悪魔を斬り裂くと悪魔は真っ二つになって灰に変わる。

「ぐぞぉぉお」

「あぁ…シャルロッテ、チャム、クオン、ヤジリ…」

 みんな心臓を一突きで殺されていた。


 何故なんだ。今から幸せにしてやる所だわったのに。

 俺は泣いた、涙で前が見えないほど泣いて嗚咽を繰り返す。

「なぜこんな」



 みんなの遺体をアイテムボックスに入れて宿に戻る。

「…なんかあったね?」

「みんなが…みんなが死んだ」

 俺はルーにしがみついてまた泣き出してしまう。

「仇は打ったんだろうね」

「うっだ、けどみんなは帰ってこない」

「相手は?」

「アグマだ」

「悪魔…下手なものにあたっちまったもんだよ」

「とりあえず弔ってやろう」

「…」

「あいつらは幸せだったんだ、お前に会えて」

「うん…」

「天国へ行かせてやらなきゃね」

「…うん」

 外に出てみんなの遺体を見るとまた涙が溢れる。

「さあ、みんな天国へお行き、ファイヤーストーム」

「ア、アァアアアア」

「悲しいね。師匠よりも先に行くもんじゃないよ」

 ルーの目にも涙が溢れていた。

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