第24話 弟子


 異世界にいる俺は冒険者ギルドに来ていた。何かいいのはないかなぁ?

「あ。ヒロト?」

「ん?おお。シャルロッテ」

「ヒロトだー」

 抱きついてくるチャム。

「本当だ、おひさー」

「久しぶりだな」

「髪の毛とかどうしたの?」

「あぁ。ちょっとやらかしちゃってな」

「まぁ、問題ないなら似合ってるからいいけどさ」

「おう、ありがとう。紅蓮隊もようやくあのお嬢様の依頼が終わったのか?」

「そうよ、やっとね」

「長かったー」

「あーしらも疲れちまったよ」

「でも、報酬は良かったよ」

「ドーナッツでも食うか?」

「「「「食べる」」」」

 俺たちはカフェに入って飲み物だけ頼むとドーナッツを広げる。

「あーしは今度はこれ食べよっと!」

「ウチはこれ!」

「これでいい」

「わたしはー」

 勢いよくドーナッツを頬張るみんなはやっと肩の荷が降りたんだなぁ。

「ヒロトは今どこに?」

「ルーと一緒の宿屋だよ」

「げっ!師匠と?」

「おう。ばったり会ってな」

 本当に偶然は怖いもんだぜ。

「よし、ウチらもそこに泊まろう!」

「あーしが絶対チーム名を変えてやる」

「いまこそ復讐の時」

「絶対勝つ」

「もう紅蓮隊でいいんじゃないの?」

「「「「よくない」」」」

「さいですか」

 もう俺の中じゃ紅蓮隊なんだけどなぁ。


「ようやく解放されたんだから、チーム名も変えたいしね」

「もぐだねもぐ」

「食ってから喋れよ」

「これもらう」

「あー!」

 姦しいことでなによりだ。


「で?やらかしたって何やったの?」

「悪魔の魔法屋に行ったみたいでさ」

「よ、よく何もなかったわね!髪色だけで良かったよ」

「まあね、ルーにも言われた」

「へぇ。悪魔の魔法屋にいってそれならさぞいい魔法を貰ったんだろう?」

「まあね、鑑定極だよ」

「ヒ、ヒロト、そういうのは言っちゃダメだからね」

「そうだよー、ウチらだからいいかもだけど」

「あーしらも他人に言うつもりはないけど」

「黙っとくのが一番」

「分かったよ、言わない言わない」

「もー。ヒロトはそこら辺抜けてるんだから」

「あはは、しょうがないね」

 これが俺の性分だしな。

「よし、それじゃ、ドーナッツも食べたし宿に向かおうか」

「「「おう」」」

「空いてるかな?」


 宿に入るともう一杯やってるルーがいた。

「おやアンタたち、見ない間に少しは強くなったみたいだね」

「師匠もお元気そうで何よりです!」

「ウチらも強くなったことだし」

「あーしたちのチーム名を変えてもらいたい!」

「勝負」

 四人はそれぞれ言うと、

「あはは、あんたらが普通って言われたのがわかるよ。いいよ。外に行こうか」


「せやぁ!」

「まだまだだね」

 とシャルロッテは転がされる。

 ルーの動きについて行けてないからな。

「シッ」

「おっと!属性弓かい!アンタいいの持ってるね」

「あーしだって!」

「おぉ!こっちも属性槍かい?あんたらヒロトに甘えたね?」

「ウチらも鍛錬はかかさなかったんだからね」

 チャムが盾を置いて短剣で攻撃する。

「おぉっ!こりゃ凄い」

「な、なんであたらないんだよ!」

「もう!一度くらい受けろっての」

「あんたら雷属性がついてる剣なんかに当たるわけがないだろ?」

 バレバレだなぁ。

「くっそ!まだまだぁ!」

「おりやぁ!」


 こってり絞られた紅蓮隊は結局は一回も触れなく疲れてしまったらしい。

「こりゃビックリしたがまぁまだ強くなってるのは嬉しい限りだよ」

「じゃ、じゃあ」

「ん?紅蓮隊のまんまに決まっとるさ」

「そんなぁ」

 しょうがないなぁ。

「俺も稽古つけてもらっていいかい」

「は?アンタにゃ勝てないよ!」

「そんなばかな」

「自分の力を知りなよ!それがまた成長させてくれるんだからね」

 そんなこと言われてもなぁ。


「軽くでいいんだ」

「仕方ないねぇ」

“ヒュッ”

“ヒュッヒュッ”

「これで軽くかい?これじゃ本気になったら」

「まだ軽くだよ?もうちょいあげてもいい?」

「降参だ」

「えー。今からがいいところなのに」

 途中で杖を下ろすルーに俺は剣を下ろす。

「アンタに付き合ってたら命が幾つあったって足りないよ!それにその剣は反則だろ?竜の鱗かい?」

「あ、バレた?」

「バレバレさね」


 俺とルーが戦っているところを見ていた四人はポカンとしている?

「凄いよヒロト」

「あーしらにあの次元を求めるのかよ」

「ウチら全然じゃん」

「悔しいなぁ」

 この後は宿に空きがあったんで紅蓮隊のみんなも泊まるそうだ。

「あー。まだだめだったかー!」

「なんだい!まだ拗ねてんのかい?」

「いや次元が違った」

 ヤジリが言うとみんなが頷く。

「あたしゃヒロトの化け物具合に驚いたよ」

 ルーが言うとみんなが頷き、

「なんでそんなに強いんだよー」

「ウチらも十分だと思ったのに」

「まだまだだったね」

「まぁそれがわかりゃ十分だろ?」

 俺が言うことじゃないけどな。

「まだまだなんだよあんたらわ」

「くっ!師匠に言われるとムカつくわ」

「そうかい?何度だって言ってやるよ」

「あー喧嘩しないの!」

 シャルロッテがチャムを止めている。

「あたしゃこのグラスで酒が飲めるだけでしあわせだよ」

「あっ!ヒロトにもらったな!」

「ずるいそんな高級なグラスなんて」

「あーい、みんなの分もあるからね」

 なんで喧嘩の仲裁までしなきゃダメなんだよ。

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