第11話 警護


 さて、眠くなったから寝に行こうとクローゼットを開けると別の部屋だ。硬いベッドに腰を下ろして、コーヒーを淹れる部屋の中はベッドと小さなテーブルと椅子が一つあり窓がある。

 星が綺麗だ。

 こんなこと仕事をしていたら気づくこともなかったのだろう。

 ここは何処なのだろう?地球とは別次元なのか?まぁ、いいだろう。今の生活を気に入っている俺がいるのだから。


 次の日は紅蓮隊のみんなと朝合わなかった、どうしたんだろうと思っていると、入って来たのはチャムとヤジリ、

「どうしたんだ二人とも」

「夜も警護しろと言われて今帰って来たところ」

「そ、そうなのか。ご苦労様です」

「ウチもう眠い」

「私も」

 と二人とも同じように階段を上がっていった。と言うことは朝早くにシャルロッテとクオンが警護にいったのか。大変だな。

 俺はいいのか?まぁ、呼ばれてないからいいだろう。

 女将の朝定食を食べながら外を見てるとシャルロッテがやって来た。

「おはようヒロト、昨日は夜も遅かったんで言いに行かなかったが、雇われたのだからヒロトにも警護をお願いしたい」

「こんな街中で警護なんて意味あるのか?」

「一応偉いさんだからな、外に出る時はついて回らなきゃならない」

「そうか。飯食い終わるから待っててな!」

「急がなくていいぞ」

「一応は金が出るんだろ?夜も寝てたら叩き起こしていいぞ」

「わかった。つぎからそうするよ」

 飯を食い終わりシャルロッテと二人で歩いていく。

「おはようクオン」

「おはー、眠いねー」

「だな。ここで警護してればいいのか?」

「そうだな、一応はこの街の領主の警護がいるから私達はお呼びじゃないんだがな」

「これは聞いていてほしいことなんだが、ゴンゾとガンゾは三人兄弟だ。しかも盗賊。ロンゾというのが何処からか出てくるかもしれない」

「そりゃやばいな。あの二人をやったのは俺だからな」

「あぁ、仇打ちにくると踏んでいて間違いないと思う」

 ロンゾかぁ、またデカい巨人族なんだろうなぁ。

「よし、無駄口はこれくらいにして警護を続けよう」

「「了解」」

 それにしても暇だな。

 警護っていってもこんだけ警護の人がいるのに俺たちだけ普通の装備だから浮いてる感じがするなぁ。

 中から執事のような人が来てシャルロッテに何か話をしていると、

「ヒロト、呼ばれてるぞ」

「え?俺?」

「あぁ。たぶんシャンプーとコンディショナーの事だろうな」

「あぁ、わかったよ」

 門を潜り執事についていくと剣を預ける。

 執事が部屋をノックし扉が開かれると大きな男達が警護している中でちんまりと座っている女の子とその対面には立派な髭にオールバックの男とその嫁さんらしき人がいた。

「お待たせして申し訳ありません。ヒロトと申します」

「そうか、商売もやっていたんだったな、礼儀を弁えているのもわかるな」

「いえ、私なぞ付け焼き刃にございます」

「わかった、そこに座られよ」

「はっ!隣を失礼します」

「よいぞ」

 やはりこの声は馬車の中から聞いた声と一緒だ。

「さて、商売人として何か面白いものはないか?」

「面白いものでございますか?ではコレなどいかがでしょう」

 俺は爪切りを出す。

「これはなんだ?」

「コレは爪切りというもので爪を切るものです」

「この形は面白いがどうやって使うのだ?」

「ここをこうしてこうやって、パチンと」

「おお!これはよいではないか!」

 どうやらお気に召したようだ。

「よし、この爪切りを百は欲しいな」

「まだ、この爪切りの、説明の途中でございまして」

「ほう、何か他にも機能があるのか?」

「ここがヤスリになっております。指を傷つける心配のないようにと」

「ほうコレは凄いアイデアだな!」

「あとはご婦人だとコレがよろしいかと」

「これはなんだ?」

「コレは爪を綺麗にするヤスリでございまして私の爪で申し訳ありませんが実演したいと思います」

 ヤスリで爪を擦るとツヤが出て来て綺麗になる。

「まぁ!すごいわ!貴方!コレは売れるわよ」

 これは真似する気満々だな。

「コレが持ち合わせの全部でございます」

 と五人分を残して全てを出すと。

「コレじゃ足りんじゃないか!」

「でもいまはコレしか用意しておりませんので」

「ムゥ。仕方ないのうコレを買い取るいくらじゃ?」

「爪切りは一個金貨5枚で爪やすりは金貨1枚が妥当だと思います」

「なに?まだこの世に出ておらぬのか?」

「はい、商業ギルドにも登録しておりませぬ」

「では大金貨100枚でコレら全てを買い取ろう」

「それは権利もということでございますね」

「そうだ」

「分かりました」

「後はシャンプーとコンディショナーとやらを都合つけてくれぬか?」

「はい、ここに」

 シャンプーとコンディショナーを5本ずつおくと奥様が嬉しそうにしている。

「よし!またなにかあれば持ってこい」

「分かりました」

「それではの」

「はい失礼いたしました」

 さてあれが真似できるかな?

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