第5話 命の軽い世界


 一週間かけて100本づつ計200本のシャンプーとコンディショナーを詰め替えた。もういやだ。ワンルームに詰め替え用のシャンプーとコンディショナーのごみがいっぱいだ。

 仕事から帰ってきたらこればっかりやってたよ。

 さて、異世界に行くと時間はたっていないんだから不思議だよな。これじゃ俺だけ年取って行くじゃん。

 まぁそれは後で考えよう。

 商業ギルドに着くとまた商談室へと招かれてシャンプーとコンディショナーを100本、計200本を卸すと歓喜の声がこだまする。

 どうやら職員全員が使ったみたいだった。

「こちらが約束のお金になります」

 大金貨150枚の大商いだ。

「確かに」

 と貰い受けると次はいつ卸してくれるのかと言ってくる。

 こりゃ俺だけじゃ無理だな。

「メルティの店に置いておくので瓶を持ってきてくださればいつでもいいですよ」

「わかりました」

「代金もメルティに言っておくので」

「わかりました、よろしくお願いします」

 よし!詰め替え作業はメルティに任せるぞ!

「メルティ!お願いがあるのだが!」

「はい!なんでしょうか?」


 これまでの経緯を伝えて詰め替え用パックを見せる。

「こ、これはどう言う素材で?」

「それは関係ないんだ、瓶を持ってきたギルドの人にこれを入れて渡して欲しい」

「わかりました」

「取り分はメルティが金貨25枚で俺が50枚だ。一本金貨75枚だから人を雇ってもいいぞ」

「そんなに貰えませんよ」

「いや、これは大事な仕事だからな!」

「わ、わかりました!」

 大量の詰め替えパックを置いて行く。

 よしこれで自動的に金が入るな。


 あとは日本で税理士に相談する。やはり確定申告しなければならないが、これはしょうがないね。


 シャンプーとコンディショナーの詰め替えは補充しとくとして、あとはこっちでの仕事を辞めるかだが辞めることにした。やはりこっちで仕事してあっちでも仕事してじゃ人生つまらないからな。とりあえずは冬のボーナスを貰ってからだな。


 それからは毎日異世界に行くと詰め替えが間に合いませんと言うメルティに人を雇ってくれと言うとはい!と元気よく答えてくれた。店も順調なようで大金貨5枚も返してくれた。もっと渡そうとするがそれはやめといて卸した分の半値をもらうことにしてあるから大丈夫。


 魔法屋にも何か掘り出し物を探しといてくれと言っておいた。


 そして冒険者ギルドでの俺はDランクに上がりワイバーンなどを相手にしている。ウイングブレードが風の刃を飛ばすのでとても使える。


 冬のボーナスを貰い退職願いも出したし、これで自由だ!

 ワンルームに住んでるのは異世界に繋がっているのがここだけなのかわからないからだ。だがそれでも仕事を辞めて優雅な暮らしをしている。

 

 異世界ではレベルが上がりゴールデンウルフやヴィグベアーなど、強力なモンスターを倒せるほどの力を身につけて前より筋肉がついたような感じだな。そろそろ旅に出ても良い頃合いかな?

 そのまえに、

「メルティ達には悪いが旅に出ることにした」

「え!ほんとうですか?」

「あぁ。まだ日にちは決めてないが早いうちに出て行くと思う。商業ギルドにもこのことは伝えてある」

「そうですよね。それは止められませんわ」

「店が繁盛してる時に悪いな」

「いえ。ずいぶん儲からせていただきました」

「そう言ってもらえるとありがたい」

「わ。…わたしもありがとうございました」

「メルティもありがとう」

 メルティの気持ちには気づいていたがそれは俺には受け止められないからな。


「さて、旅に出る準備はできたな」

 扉をマジックバックにいれると、気ままな旅に出ることにした。

 まずはいつも通り東に向かって歩く、キラーラビットはもうお手のもので、ウォーバッファローも剣のおかげで余裕で倒せる。

 マジックバックに入れながら歩いている。


 そうあるいているのだ、馬車の一つでも買えばよかった。

 まぁ。身体強化もあるし走ればすぐ着くだろうと走ってみると意外と快調に走れている。山に差し掛かろうとした時に遠くで馬車が襲われていた。そのままの勢いでタックルすると盗賊が二、三人弾け飛んだ。

「いつつ、大丈夫?」

「はい!旅のお方!」

「助けがいりそうだったからね」

「ありがとうございます」

 3メートルはある大男がこちらを睨むと、

「何してくれてんだよ!可愛い子分達に!」

「へぇ、巨人族かなんかか?」

「そうだが?」

「やっぱいんのか!へぇ初めて見たのが盗賊で残念だ」

「そりゃ可哀想にそして死ね」

 棍棒のようなもので攻撃してくるが素早さはそんなになさそうだな。

 普通に避けると首目掛けて剣を振るう。

“ザン”

 頭が落ちてくるのを見て自分が殺したことに罪悪感と吐き気を催す。だが敵は待っちゃくれない。剣を振るうと人がどんどん死んでいく。最後の一人は残して道の端で俺は吐いていた。

「あなた初めて人を?」

「あぁ。面目ない」

「ありがとう、私はこいつらのアジトに向かう!」

「俺もいくよ」

「でも」

「慣れないとな、これが命の軽い世界だから」

「そうだな、一緒に行こう、留守は頼んだ!」

「はい!」

 女騎士は走って行くので俺も走る。ついて行くことに集中する。

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