五月にありがちな話。
眠いし、怠いし、疲れたし動きたくない。
習慣とは恐ろしいもので、普段と変わらぬ時間に眠れば、休みの日だというのに朝も同じような時間に目が覚めた。
時間を確認するために手にしたスマートフォンの画面を暗くして、枕の横に乱雑に投げ置く。
「あー…………だる……」
意図もせず口から漏れた言葉はまごうことない真実で、布団を被り直して枕に顔を埋める。連休にやりたいことはたくさんあったはずだった。
日々に追われて溜まりに溜まった家事。買って積みっぱなしのゲーム。ここぞとばかりに迫り来るソシャゲの期間限定イベント。その他諸々エトセトラ。
あれもこれもと思い浮かぶ事は沢山あるのに、身体が全くついてこない。単純に眠たいからというわけではない。それが重たい気分をさらに憂鬱にさせる。動き出してしまえばどうにかなるというのに、肝心の最初が億劫すぎた。
「どー……しよ……」
ごろりと寝返りをうって、再びスマートフォンを手に取る。それならそれでソシャゲのイベントでもやればいいのに、開いたアプリは青い鳥がお馴染みだったあれ。雑にタイムラインを眺めて、出掛けているフォロワーの行動力すごいなーと思いつつ、リプライを送る。
今日は何をしたい……でもだるい……と現状を打ち込んでは、面倒くさくなって送信もせずに目を閉じた。
ああまた時間だけが過ぎていって後悔するパターンかな。
このまま過ごせば辿り着く結末は、手に取るより簡単に、火を見るより明らかだ。
時間が足りない、なんていうくせに無駄にしている時間はどれだけあることやら。考えれば考えるほど気分は滅入る一方で、そっと吐き出しただけののはずの息は、あまりにも大きかった。
五月病も程度を過ぎれば鬱である。
また無駄に眺め始めたニュース記事にその文言を見つけて、納得がいったと共に面倒くささが増した。
頭ではわかっているのだ。
このままいけば待っているのは後悔だけだと。
一度も目覚めずに夕方まで寝てしまっていたのなら、まだひどく疲れていたのだと割り切れる。だが現状から辿り着く未来は割り切れない。未着手でも、未完遂でもどちらの場合だったとしても私の性格が邪魔をする。
「がん、ばる、かぁ……」
行儀悪く掛け布団を蹴り飛ばしながら起き上がり、伸びをひとつ。幸いなのは今日はまだ連休の開始にほど近いというところだろうか。面倒くささが勝って布団に逆戻りしないために、早々にクローゼットを開けてワンピースを選びとる。
軽くお洒落して、街に繰り出せば家の中で過ごす怠惰よりはきっとマシ。ランチしながらソシャゲを回して、積みゲーを崩しながら食べるお菓子と飲み物を買って帰ろうそうしよう。
重だるい身体にさよならは出来ないけれど、まとわりつく五月病の気配には別れを告げて。明るい陽射しが降り注ぐ外へと一歩踏み出した。
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