第20話 マイケルのミニ・コンサートのあとルーカスはソンジェにそっと耳打ちした。
ルーカスは窓際に座り、黙ってマイケルの歌を聴いていた。
聴衆は病院関係者と比較的元気な患者たちだけだった。
本当に小さなコンサートだったのだが、みんなマイケルの歌に聴き入っていた。
ミニ・コンサートが終わってから、ルーカスはソンジェが来ていることに気づき、
ソンジェのもとへやって来た。
「やあ、ソンジェ。間に合って良かった。
お前に彼の歌を聴かせたかったんだ」
と、ルーカスはソンジェに言った。
「彼は俺の患者なんだけれど、ちょっと、訳ありでな」
無敵のルーカスにしては珍しく神妙な面持ちでそう言った。
「彼の歌、どう思った?」
いつも押しの強いルーカスにしては、慎重な様子がうかがえた。
だからソンジェは素直に、
「久しぶりに感動した」
と、言った。
「それは良かった。彼も喜ぶだろう」
とルーカスは、いつもの彼とは違う、医者らしい口調で言った。
「実はお前に、折り入って頼みたいことがあるんだ。でも特別な頼みなので、ここでは話せない」
そうルーカスはソンジェの耳元で囁くように言った。
「彼はちょっと特別な人間でな。外部に入院していることがバレルと、大変なことになるんだ。だから仕事が終わってから俺の家か、お前の家で会って、彼についてゆっくり話したいと思っている」
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