第2話 「月の沙漠」の歌のような運命を生きる王子と王女②
いろいろな事情から、ルナとウソンはこの見合いを受け入れ、組織がお膳立てした結婚相手としてふたりは出会った。しかしそれでもなお、二人は悩んでいた。
ふたりとも相手を傷つけたくなかったのだ。
ふたりともその心には、すでに愛する人がいた。
そしてその相手とは、ふたりとも結ばれない運命であることを十分すぎるほど知っていた。
二人きりになったとき、ついにルナは意を決してウソンに言った。
「あなたほど素敵な男性とは、たぶんもう出会えないと思います。
でも出来れば、この話は無かったことにしてほしいのです」
ウソンは意外な展開に驚きはしたが、渡りに船でもあった。
「私、忘れられない人がいるのです」
と、ルナは思い詰めた表情でウソンに言った。
ウソンはルナの思いがけない告白に驚きながらも、その素直さに心惹かれるものを感じていた。
「分かりました」
と、ウソンは静かに答えた。
「ところであなたの想い人であるその幸せな男は、どのような人なのですか?」
と、ウソンはルナの哀しげな表情が気になり、たずねた。
「もしあなたを不幸にするような男ならば、あなたの提案を私は断固拒否しますが、あなたを幸せにしてくれる人ならば、どんな身分の相手であろうと私は応援します」
と言った。そしてやさしい微笑みをルナに返した。
「でも当分は、このまま組織が望むように、時々会いましょう」
とも言った。
しかし実際は、それから状況が突然変わり、ふたりが再び会うことは二度と無かった。組織がウソンに、別の少女との接触を命じたからだ。
新しく命じられた恋の相手は、気が重くなる相手だった。
しかし実の父へと続く相手でもあった。
実の父に、それほど愛情があったわけではない。
しかし血のつながりは、決して消せるものではない。
それゆえ命が救われたし、地獄からの脱出が可能になり、新しい世界が開けた。
生きる理由となったウソンの希望であり天使、そして命の恩人ヨハンとは、
ソロ・シンガーとして成功し、人気スターの仲間入りを果たしても、いまだに再会できずにいた。
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