第18話 対宇宙生物戦2
あの時拠点から数百メートルの距離で身の丈3メートルはあろうハイオーガがよろよろと向かってきたが、ひざをついて口と鼻から血を吹いた。
斥候には接触しないように命令してあったため20メートル程手前を先導するような形になる。ハイオーガの分厚い胸が柘榴のように裂け中からヌメヌメしたそれでいてしっかりと骨格を持った何かが飛び出してきた。近くに走ったゲイルが、雷撃槍を放った。事前の命令があったためだ。ハイオーガは痙攣し倒れたが、うつ伏せから下から押し上げられるように仰向けになったかと思うと、長さ1メートル程の赤黒い物体が突進してくる。下部に脚があるのだろう、数メートルは跳躍する。
「重力魔法最大荷重だ!」コマンダーが叫ぶと、あらかじめ詠唱してストックしてあったものをかさねがけしていく。「氷魔法」「体液がかからないように殴れ」「凍った体液がついたら洗い流せ」……。
この個体は幼生だった。オーガの大きさを超える外骨格の黒い成体は異常にすばやく力強く、合計5体、鎌か尖った脚先で、複合材料の盾や防具を切り裂いてくる。こちらの武器は体液に触れると溶け始め、メタルバイオセラミック素材が焦げた匂いをあげた。
「アチチーっ!」タンクとなったゴブリンソルジャーが悲鳴を上げ防具をぬぐとメイジが水魔法で洗い流している。
「ミスリルβ武器を出せ!アーチャーは矢じりを交換せよ」予想を上回る事態に、後手に回り怪我人をだすことになった。
後方からの貫通爆裂矢じりの斉射は、一定の効果をあげた。宇宙生物は逃げることはないが、足がとまり後方からの氷魔法の的になった。「くそパラライズはきかねえぞ」魔力がない生物だからだろうか。
「極大魔法うちます。30秒後に11時方向から1時方向30度の円錐状にに打ちますので離れて伏せてください」メイジのエン子ちゃんがさけんだ。
魔力障壁が形成され、奴らのほとんどが照射角度に入ったのを気配察知で幾人かは知ることが出来た。遠くまで平原でその先には海があった。
『トリチウム収束、プラズマ圧力温度上昇、放射線熱戦隔壁形成、衝撃波反射隔壁完成、臨界突破まで15秒、10秒、9、8、7、6、5、4、3、2、1核融合波発射』
………………。
(なんだ音が聞こえん。このゆれは地震か?)
………………。
そのまま気を失ったものが多かった。
気づくと前方が文字通り消失していた。
(これはいかんよね。放射能は極少なくても一体どれくらいの質量がエネルギーに転換したのか、ちなみに広島型原爆では0.7グラム程度といわれているが)
部隊の一部を駐留させるつもりが、あまりの衝撃のために、全部隊が帰れなくなった。
宇宙生物の卵と寄生された魔物たちのぐちゃぐちゃは、やはりというかあった。火魔法で焼き払ったが、卵には火耐性は無いようだ。
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