10. もうかる話、ありませんか? Part2

 話をお金に戻す。

 本を作ってイベントに出る為の費用については既に書いたので、次は収入部分についてだ。

 入ってくるお金。本の売り上げ。それだけ。

 支出があれだけこまごま多種多様多額だったのに、落差がひどい。

 価格の話をすると、私の本は大体一冊三百~五百円。イベントでよく見かける価格帯は四百~六百くらいなので、まあ高くは無い。

 一度のイベントで売れるのは、平均一〇冊程度。(買って読んでくださる皆様、本当にありがとう。とても嬉しいです)

 平均とは言っても、イベントによって結構差はある。売れない時は本当に売れず、優しい知人が一冊買ってくれるだけで終わるし、逆に最も売れた時は二〇冊くらい売れて、私自身が一番驚いた。(一冊だろうと何冊だろうと、読んでくださる方がいる事自体が本当にありがたいです!)

 一冊の利益が百~百五十円程度なので、イベント一回でもうかるのは千円程度である。そんなわずかな利益も参加代の約四千円によって塵も残さず吹っ飛ぶ。

そんなわけで毎回結構な赤字である。

 と、いう話をうちの母にしたところ、「安過ぎよ、せっかく書いたんだからもっと高く売ったら?」と言われた。ちなみに母は昔から私の創作を応援してくれており、どんどん小説書きなさい締切近いでしょと尻を叩く編集長ぶりを見せている。自身も娘に触発されたのか最近童話を書き始めていて、還暦間近だが期待の新人である。

 それで、確かに、価格は自由に高く設定出来るといいのだが、自分が客として同人誌を買う場合を考えると、正直、四百円でも高いと感じる。六百円を超えたらもう、よほど好みでないと買わない。

 なので、むやみに利益目的で価格を上げる気にはなれないのである。

 一冊のもうけが少ないなら頒布数を上げればいいじゃないか。といっても、簡単には実現出来ないのが世の定めである。参加者の顔見知りが増えると買ってくださる事も多くなるのだが、一般客のお買上はおそらく駆け出しの頃からそんなに変わっていない。

 多くの人に興味を持ってもらう為、告知・宣伝は重要である。本当に重要である。

 本気で告知する時は、取れる手段を全て使う。自分のサイトやツイッターは(ついサボりがちになってしまうのだが出来るだけ)呼吸の如く告知する。カタログの紹介文も手抜かずしっかり情報を盛り込む。イベント自体が企画する宣伝イベントにも申し込む。

 二〇一七年夏の「尼崎文学だらけ」にて、事前に運営の方が本を読んで感想文を公開してくれるサービスがあった。つい宣伝を面倒がってしまう私には珍しく申し込んだところ、素晴らしいご感想を頂けた上、当日も非常に売れ行きが良かった。

 それがあって、宣伝は本当に重要なのだと改めて実感した。出来るだけ多くの人に、どんな内容の本なのか、一押しのポイントはどこか、どんな人に読んでほしいかを伝える。それに時間と手間を惜しんではならない。

 さて、色々書いてきたが、結局、イベントで確実にもうかるメソッドは見つかっていない。

 そんなもの幻なんじゃないか? けど、心のどこかで、きっとメソッドをまだ学んでいないだけだ、出来ればもうかるに越したことはないし、とささやく声も聞こえる。

 テーマは少し違うが、私は手芸が好きで、よく手づくり市に行く。するとハンドメイド作品で立派に稼げている人がたくさんいる。アクセサリー等の手づくり作品を通販アプリで売ったり、技術をまとめた本を出したり、ワークショップを開いたりする等。

 なら、オリジナル小説本でも同じ事が出来るのでは、とつい思うのである。

 二次創作だと、それだけで食っていける人気大手サークルもあるが、オリジナル文章系でそんなサークルはそういえば聞いた事が無い。私が知らないだけかもしれないが。

 とにかく、この世界はまずもうからない。だけどまあ、陳腐な話ではあるが、お金では測りきれない価値がイベントにはあると思う。


――※以下、Web公開にあたり追記※―――

 2024年になって当時と金銭面を比較すると、販売される同人誌の単価が平均的に上がっている気がします。製本クオリティの高くて綺麗な本が増えて、1000円越えの本も珍しくないようになりましたね。時代の変化を感じます。

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