7. メガネ

 メガネとは関係ない話を書く。

 イベントにおいて、お店のレイアウトは本の内容並みに重要だと思う。自分の好きな雰囲気のお店があると、照明に集まる虫みたいにふらふらっと引き寄せられてしまう。逆に、雰囲気がパッとしないせいで本に目が留まらない事もある。どんなに素敵な本が置かれていてもだ。

 イベントに参加し始めたばかりの頃、出来るだけお金をかけないようにしようと思い、私は最低限の準備で臨んでいた。布をかけただけのスペースで、飾り付けもほぼ無し。地味な値札で見本誌無し。

 結果、何だか気持ちが盛り上がらずに終わった。本を買ってくださる方はいたけれど、頒布数とは関係無しにちょっと悲しい気持ちになった。周りのブースはとても見事なレイアウトで、しかも、出店者が楽しそうにしていた。

 もしや、もう少しレイアウトに凝った方が楽しいのでは?

 という訳でどんなレイアウトにしたらいいか真剣に考えた結果、『作品世界を表現してみよう』と思った。作品世界にあう雰囲気のブースなら、とりあえず私は楽しくなれるだろう。そして、お店の雰囲気でびびっと来たお客さんはそのまま本もびびびっと買ってくれるだろうと。

 本の内容に関連する小物を机に置き、本文から抜粋した文章のパネルを展示した。荒れ地が舞台の小説を表現するために砂の入ったバケツとスコップのミニチュアを置いたり、作中に出てくるアイテムを配置した。猫とか瓶とかメガネとか。あ、メガネ出ましたね。

 結果、売上げは全く変わらなかった。レイアウト準備が猛烈に大変になっただけだった。

 足を止めて展示を見る人自体は明らかに増えていた。だが悲しいけど、売上げにはあんまりつながらないレイアウトだったらしい。

 センスの有無はさておき、本作りよりレイアウトを考える方が自分は好きな気がする。本作りはしんどさが強いけど、レイアウトは取り組んでいて楽しさが勝る。何度も言うが凄い本を楽しく作れる人は凄い。

 そんなこんなで最近は、ブースは少しお金がかかろうが、自分が楽しく店番が出来るくらいにはこだわって飾るようにしている。その方がテンションが上がって店番のしんどさが減る。作品の雰囲気も伝わったりするし、自分も安心して店番できるし、お客さんも安心感を持ってブースをのぞき込んでくれる。良い事づくし。安心感って大事。ただし、何度も言うが、売上にはあまり差は出ない。

 自分が楽しめて、しかも売上につながるレイアウト作りは未だ試行錯誤を続けている。イベント中、凝ったブースを見ては何かスマホでメモしてるメガネの女がいたら、それはレイアウト勉強中の私である。


――※以下、Web公開にあたり追記※―――

 なぜメガネと関係ない話なのに章タイトルがメガネかというと、この本を作るきっかけとなった人から「この章はメガネというタイトルで書いて」と指定されたのですが、メガネをテーマにした内容を思いつかなかったので、仕方なく全然関係ない話になっています。そういうこともあるんです。





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