奪い屋さんはもうおしまい



「奪い屋は……サキュバスだったのか?!」

「すげぇ……」「おぉ……」

「こっち向いて!」「写真撮っていいのかな」



(……どうしてこうなった?!)


 なぜだ!

 なぜ俺はこんな公開処刑を受けている!!

 殺してくれぇ!!


 俺は恥ずかしさのあまりに身をよじる。

 すると、ヤクザの親分たちから「おぉ……」なんて歓声が上がる。

 あーもう!「おぉ」じゃねーよ! 


「あまり、じろじろ見ないでください!」


 俺はドスを効かせようと腹に力を込めてそう言った。

 しかし逆に俺のほうがびっくりした。

 俺の喉から出てきた声はとても可愛らしくなっていたからだ。


「カワイイ……」「イイ……!」


 どうしてこんな事になったのだろう。


 俺は相棒と共に天笠アマガサ製薬の車両を襲った。

 依頼の血清を奪うためだ。


 しかし俺は、車両の運転手と護衛を同時にしていたライカンに襲われた。

 ライカンは倒したものの、俺は瀕死の重傷を受けた。


 そこで相棒のギルマンが俺に『契約血清』を打った。

 モンスターの血清は、人間の体をモンスターに近いものに作り変える。


 瀕死の重傷を受けたとしても、助かる可能性があるのだ。


 だが、ギルマンが俺に打ち込んだ血清は「サキュバス」のものだった。

 体を作り変えられた俺はサキュバスの体になっていた。


 サキュバスとは女夢魔や淫魔とも呼ばれるモンスターだ。


 このモンスターは魅惑的な女性の姿を持ち、男を誘惑する。

 そして男の生気とかアレな感じなモノを快楽と引き換えに吸いまくる。


 男は悲しい生き物だ。そうした性の喜びを与えられると死ぬまでそれを求める。


 さて、ここで重要なのは……。

 サキュバスは魅惑的な女性の姿を持つという部分だ。


 つまり俺は――完全な「女」になっていたのだ!


「その、依頼は終わりました……これが依頼の品です!」


 とにかくこの場をさっさと後にしたい。

 奪い屋がサキュバスなんて、奪うものの意味が変わってしまう。


 俺は依頼の品を渡して、さっさとこの場を後にすることにした。


「スルタンさん、早く確認してください!」


「お、おう」


 俺のことをチラチラ見ながら、スルタンは品物を確認する。

 あーもう早く!!

 俺もうお家に帰りたいの!!


「……ルイちゃん。アンプルがひとつ足りないようだが」


(ちゃん付けして呼ぶな!!!)


「えーとその、最初から無かったんじゃないかなー?」


「天笠製薬がそんなヘマをするとでも?」

「まさかスルタン!!」

「あぁ。 ルイちゃん……血清を使ったな?」


 部屋の中に不穏な空気が流れる。


「いや、その……」


「みなまで言うな。わかってる」


 お、意外と物わかりがいいタイプ?

 

「……ルイちゃんは――女の子になりたかったのだな!!!」


(まったく斜め上の解釈をされたァァァァァ?!!!!)





※作者コメント※

楽しくなってきたので

勢いをつけて更新していきます。

キャッキャ

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