28話:大虐殺

 見る人がみれば──俺は最低最悪のウサギキラーだろう。


「ふぅ」


 ウサギの言葉が分かるなら⋯⋯俺は謝らなければならない。


「殺しすぎて申し訳ありませんでしたってなぁ!!」


 槍を振るう音が徐々に進化しては、嵐が過ぎ去ったような風切り音を生み、大量のキラーラビットは霧散する。


「はぁ⋯⋯結構疲れたな」


 あれから約2日。 

 俺はかなり順調なペースでキラーラビットを殺す鬼となった。

 あ、ちなみに現在も討伐中だぞ?

 

 そんで、2日経過した今でも──レベルが一つたりとも上がらない。魔石は死ぬほど手に入れているし、しっかりと槍で殺している。

 ⋯⋯なのに、だ。

 

 しかし不思議な事に、熟練度だけはガンガン増えていく。使用している時間が長いのか⋯⋯全く検討もつかない。

 俺が馬鹿すぎるのか? まぁ一旦おいておこう。


「あー、もう夕方か」


 俺は槍を肩に乗せて、両腕を槍に引っ掛けてお食事スペースへと帰る。

 

 やることはここ2日一緒だ。

 飯食ったら全開で疲れるまで蹂躙し尽くし、終わったらまた飯を食って戦う。

 俺が夢見た引きこもり生活とは、中々遠くなってしまったな。

 

 さて、ここからが本題。

 俺はただ殺すだけではなく、この先にある別の墓場の探索をしている。


 万が一ここから離れる時に備えてしっかりと、な。

 一応確認したが、ここの墓場の先も同じく墓場で、先には前対峙したライオンや他の動物であろう骨が動いている。


 こんな時に備えて気配を完全に消せるスキルや装備があればよかったんだが⋯⋯生憎そっちはあの二人が持っていたんだ。俺じゃ使いこなせないのが目に見えているから。

 ⋯⋯こんな事なら初心者なんでって言って貰えば良かった。


「今日も飯が美味い」


 飯を食い終わったらさすがに次の墓場まで行くしかねぇな。


「さて、行きますか」


 不安が取れるなんてことはないが、俺は次の墓場まで向かう。


「⋯⋯っ」


 次の墓場をよく見ると、アトラクションのようになっていて、一体倒すと次への扉が開く⋯⋯まぁ言ってしまえばタイマン式となっていた。

 

「前回は⋯⋯門番であるライオンを倒したからこんな景色が見えるのか」


 これは前回俺が見えなかった景色だ。

 前はただそこに骨の動物たちがうろちょろしているだけだったから気付かなかったが、よくよく見ると──しっかりと動物たちを閉じ込めれるような堅牢な扉が用意されている。

 つまりこの扉を通らない限り、このダンジョンはクリアできないというわけか。


「さて──」


 目の前に見えるのは前回戦ったばかりのライオンの骨。

 1回戦ってしまえばもうなんとなく対処はできる。


「ヴヴ⋯⋯」

「精一杯イキらせてもらうぜ」



***



「倒したか」

 

 さすがに経験していれば問題なかったな。

 倒すのにそこまで時間は掛からなかった。


 魔石を拾い終え、墓場でうろちょろしている動物たちも全て倒し、俺は奥の方に見える鉄扉に向かって歩き出す。


「さて次の墓場はどうなる」


 覚悟を決めて次の扉を開ける。


 ⋯⋯ギィィ。

 少し錆びている鉄扉がゆっくりと開いていく。


「⋯⋯ん?」


 見えるのは予想外の光景。


「なんだ⋯⋯? 神殿?」


 無数の石柱に支えられた高い天井。

 肌を通る石の冷たいあの微風のあの感じ。

 そして⋯⋯。


「異様なまでの静寂さ」


 さっきから背筋だけじゃなくて、本能的にビビって心臓がバクバク言って仕方ない。

 

「スキルは使えそうだ、確かめてみるか」


 気配探知で周囲を探る。

 

「⋯⋯!」


 奥に一つ気配がある。なんだ? 他にはいないのか?

 

 石畳の一本道を進む。

 道中敵がいることもなく、難なくスイスイ進めた。

 ただ、同時に不安も大きくなっていく。


 ⋯⋯奥に何がいるのか。 

 奥にいるナニカが──俺を呼んでいる。


「ここか」


 また、扉。

 しかし今回は、どうやらただの扉ではない。


「これは、手の跡?」


 一旦触れてみるか。

 どうやら掌紋で開くっぽいし。


 ジジ⋯⋯。 

 俺の掌が触れると扉の手の跡が反応し、謎の光が扉を自動で開かせた。


「すげぇ⋯⋯未来の力みたいだ」


 ぽんと触れただけで扉があくなんてな。


「なんて言ってる場合でもないか」


 自分でも不思議なくらいだ。

 まるで歴戦の戦士みたいな目を向けることになるとは。


 開いた先に続く先には、一つの部屋。

 一言で言うなら古代の王族のために作られたような部屋だ。

 少し進むと玉座とそれに上がる階段が見え、その横に──問題の気配がいた。


「騎士⋯⋯か?」


 玉座の横に膝をついてこちらを見下ろす一人の騎士。

 その姿は全身純白の鎧を着ている。


「⋯⋯お前か? 挑発気味に俺を呼んだのは」


 ユニークダンジョンのラスボス⋯⋯いや、そもそも短いダンジョンだ。何かワケがあるのだろう。


「⋯⋯⋯⋯」

「おい、なんとか言ったらどうなんだ?」


 こちらの呼びかけには反応せず。

 困ったな。これじゃ俺はどうすればいいんだよ。


「どうやらここが最後の場所みたいだし、アンタと戦う事になると思っていたんだが?」


 こっちが何を聞いても無視⋯⋯か。

 見渡す限りここにあるのはあの玉座と隣にいる純白の騎士のみ。

 他は特に何も置かれている事すらなく、ただ玉座に続く道にはレッドカーペットが敷かれていたので、なんとなく偉い身分の人が使う部屋かと思ったんだが。


「もしかしてあの玉座に座る事が攻略への鍵──」

 

 なんとなく俺がそうこぼすと、隣にいた騎士が突如爆炎と共にその身を焼いた。


「ちょちょ! なんだ!?」

 

 爆炎は色を変え、白い炎に変わる。

 変わった炎はライオンのような鬣の形で、その白炎はやがて──真白い大剣を形作った。


 刀の横幅はおよそ10cm以上はあり、その剣は爆炎が消えても尚──刀身は白炎が上る。


「ははは、聞いてないぞこりゃ」


 やべぇ。今回はマジで死ぬかも。

 あの剣が現れてから⋯⋯急に威圧感がやべえ。


「槍術は確かにあるけど、武器が貧弱だ。どうする」

 

 たまたま俺がこぼした言葉。

 すると騎士はその白く燃え上がる大剣を地面に刺したのだ。


 刺さった大剣の白い炎はこの部屋全てを白く燃え上げ、戦いの盛り上がりとしては最高なほど仕事をし始める。


「まじっすか⋯⋯俺の言葉わかるの?」

「⋯⋯⋯⋯」


 まぁ無視は相変わらずか。

 騎士はこちらに向かっており、騎士は剣を刺したまま戦おうとしている。


「素手で戦おうってか? ハンデも良いところじゃない」


 さて、まさか──ここで俺のスキルが活かされる事になろうとは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る