13話:冒険者の一日と見せかけたダラダラとした一日
「んー⋯⋯」
朝の11時。いや、昼前である。
寝ぼけ気味の俺はアラームを止めて、スマホの画面を覗く。
「昼前か」
俺はそう眠気混じりのあくびをしながら体を伸ばす。
カーテンを開け、差し込む太陽の光を一身に受ける。
「今日から冒険者生活の始まりか」
──と、カッコよくそう息巻くのは秒だった。
「とりあえず⋯⋯冒フルの生産職の人たちのプロフィールを片っ端から見ていくことにするか」
俺は冒険が目的ではなく、金を稼いで悠々自適な生活をしつつ、
したがって──朝から晩までダンジョンに潜るような真似はしない。
⋯⋯命懸けなんてバカげてる。
俺はシンプルに稼げる手段があるんだから。
今やってる事は、冒フルにある生産者たちの傾向を1人ずつ見ていっている最中だ。
というのも、冒フルを作ったのが⋯⋯昔にあったAm〇〇on創設者の息子で、そのシステムにあった欲しいものリストや、普段から売っている品物をチェックしていれば、金を欲しがる人たちがいると判断したからだ。
それに、金貨単体でも欲しい奴らはいくらでもいるわけだし、フリマで金専門で売っていくというのも悪くないだろう。
「しっかしなぁー、素材だけならまだしも、刻印がないんじゃ、結構キツイよな。本物の証明なんて色々加工しちゃえば出来ちゃう訳だし」
⋯⋯ネックはそこだ。
「あっ、」
俺はそこで、三神さんの言葉を思い出した。
──ギルドの方もご活用してください。
「ギルドも金を必要としているな、というより、かなり必要だろう」
昔は、金は資産という考えが根付いていたが、今は少し違う。
「金も素材としてかなり使われる。金によってモンスターたちのオーラや様々な有害物質から身を守ってくれる効果が乗っているエンチャントを見た事があるな」
ギルドならどうだろう。
この得体のしれない金を売れるかもしれない⋯⋯いや、売れるか。
「だが、相場を知らずに無闇やたらに行けば⋯⋯馬鹿を見るのは明白、か」
俺はその場でジャンルを絞って金を使っている防具をまず調べた。
「うわっ」
まぁ俺の反応で理解してくれ。
一つ一つの値段がVIP過ぎる値段がほとんどだ。
最低ラインが2000万以上⋯⋯素材コストを抑えていても500万くらいからだ。
「駄目だ、予想通りだったがこんなんじゃ意味ないな」
次は素材コーナーだけに目を通した。
「おぉ、」
金の他にもダンジョンで採れた鉱石が幾つも張りだされてる。
「普通の鉄も、かなり値上がってるな」
こういうところはギルドの方が安い。
多くを取り扱うところにおいてはたかがフリマサイトでは勝ち目は無いな。
「金は⋯⋯っと」
金に絞ってみると、予想外の世界だった。
「純度とどれくらいの量を売るかでかなり幅がある」
俺はこの間の言葉を思い出す。
「あ、確か⋯⋯純度は24って言ってたな」
だとすると⋯⋯。
フィルターを掛けていき、結果を目にする。
もう驚く事はないと思っていたが、俺は口をあんぐりと開け、息を呑む。
「こりゃまたすげぇな」
やはり24k? とやらは凄いな。
⋯⋯かなりの需要があるみたいだ。
ジュエリーやアクセサリー。
ここで言うアクセサリーとは冒険用のブレスレットやその他に渡る意味での言葉だ。
現在の世界ではそれを加工できる奴らが一気に増えている訳だから当然っちゃ当然だが。
「しかも、滅茶苦茶高い」
俺が生成した小さい奴でも、かなり高く買い取ってくれる。あの時は確か25万前後だったが、こっちでは50万近く跳ね上がっている。
この原因はよく分からないが、とにかくこっちで売った方が儲かりそうだし、他のアカウントを見るに、顧客が付くこともありそうだ。
「んー」
その後も色んなやり方で覗いてみたが、一つ疑問があった。
「やっぱりダンジョン以外での出品や依頼もかなり多い」
まぁそうかと俺も納得する。
金は直接的にダンジョンに関わるケースが比較的少ない。
従来のジュエリーのように合わせたり、防具や武器に使うこともしばしば。
まぁ凄い消費かと言われればそうでもない。
「これも生成量が上がればまた変わる⋯⋯というか、3gでも生成回数に制限が今の所ない訳だから──やっぱりこの能力バケモンだろ」
さて、どこから手を付ければいいか⋯⋯。
スクロールしながら、俺はゆっくり悩む。
「んー⋯⋯」
暫く悩んだ後、とりあえず俺は一人の依頼を見つけた。
【急募!金を求む!】
「お、良さそうじゃん」
そのままタップして内容を確認していく。
___
小さい物から大きい物までの金を買い取ります!
─条件─
・純度が高めなら嬉しい
・キレイな状態である事
この二点と、プラスして一度に多くの金を売ってくださる方がいればその方を優先して買い取ります
___
「ほほう、これはこれは⋯⋯」
3gマン舐めるなぜよ!
「ほれほれほれほれほれ!!!」
俺は袋の中に大量の3gコインを生成する。
⋯⋯まるでチートを使ったみたいに連続で。
「ふぅ、これなら喜んで買ってくれるだろう」
そんで当分の活動資金と、生活費になること間違い無しだ。
「応募フォームはここか」
必要事項を入力していき、俺はすぐに指定の住所へと送った。セキュリティ面が心配だが、基本冒険者ライセンスとこのアカウント作成に必要なのは個人番号。
そう簡単に偽装はできないはず。
こちらが先に送らなければならないが⋯⋯それ致し方ない。特に俺の場合は刻印が無いから、直に確かめてもらう必要があるからなおのことだ。
「それに評価や活動履歴もガッツリ残っている人だ⋯⋯問題ないだろう」
さてと、そしたら他のも見つつ、買い取り屋にも行ってみるか。あれから日も過ぎているし、ここぞとばかりに売っぱらうか!
俺は郵送手続きついでに買い取り屋にも向かってストックとして生成しておいた金貨を売っぱらった。
⋯⋯金額は恐ろしい。
60万近くになっていた。
gが上がれば値段も変わるらしく、1枚あたりの値段が跳ね上がったのだ。
まぁ、俺はウハウハだから問題ないが、帰り際「まだ無いのか」と催促を何回もされたくらい品質が良かったらしい。
そりゃそうだ⋯⋯生成した奴はどうやら純度100の純金なんだから。
そうして俺は郵送した金が売れるのを待ちながら残りの一日をゲームとソシャゲに費やして就寝した。
勿論、買い取った連絡は見ずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます