第3話 もっと報道してくれよ

狂った目立ちたがり屋が通り魔をする?


だったらずっと目を瞑っていてもいいんじゃないかい、それこそマスコミは報道するのをやめるとかな。

表に出ていないだけで事件なんていくらでもある。適当な理由をつけて本当は判明されている事実を別にすり替えたり。


結局は何が真実で嘘なのかなんてよくわからないし、だいたいの情報はマスコミからしか入ってこない。詐欺師だったらやりたい放題だ。


ただ、そんな世の中は嫌だよな。だから今は新聞社の警備員を刺したところなんだよ。


この前も襲撃したからあんまりピンとこないが、いい方法を思いついてしまってね。

色々と疑問は止まない。エレベーターは止めたばかりだけどな、あらあら、監視カメラに映ってるぞその行為。


まぁいいか、サイレン鳴らして警察を呼んで「殺人鬼が社内に入ってきましたよ~」と。あと「今からここにいる人たちを皆殺しにしますよ~」ともね。


僕は殺しに効率を求めるタイプではないのだけどね、たまにはいいのかもしれないな。何せ一度に多くの命が消えていくのは刺激的だ。質がダメなら量で勝負ってことさ。

ほらほら緊急避難経路に人が溢れています。一人、二人、三人、刺して刺されて錆びついた階段は血に彩られてわかりはしないね。


いい叫び声だ。呻き声だ。

ほらほら早く逃げないと死んでしまうよ。っておいおい、銃なんか持ってきて違法じゃないのか?


まぁ俺が銃を使ったことにしてしまえばいいのか。さすがだな。

でもいいのか、銃を撃っている時間なんてそんなにないぜ? さっさと戻って記事を書かないと。


さてさて非常口からこんにちは。

凶器振りすぎてちょっと筋肉痛だ。あんな記事を書くのにこんなに人数がいるだなんてこまったもんだ。これじゃあ俺が今してることを書けないじゃないか。


いや、そうでもないか。

怯えながらパソコン打ってるのがいるな。でもたった一人だけ。

いい仕事ぶりだ。感謝感謝。殺すのは最後にしてやろう。いい記事書けよ。


書物が並ぶ、機密情報? も並ぶところについた。すでに煙と炎に燃え盛っているがそれは危なすぎるな。こんな風に燃やされちゃ、書類は堪ったものじゃないだろ。

残っているものだけでも涼しいところに出してあげよう。


空から舞い落ちる紙たちは鳥のようだ。

これが生の新聞ってことかな。加工前よりも愉快な内容だ。


さて、真実とは何だろうな。

結局お前たちは俺のことを見向きもしないだろう。面白くないからな。

ただ面白くないからこうやって狂気も犯したくなる。


狂わないと生きていけない人だっているということだよ。

だからほら、早く記事を書けよ。じゃないと今度はその人差し指を切り落としちゃうぞ?


おいおい、そんなに怯えるなよ。誤字脱字はダメだぞ。

あっ、そうだ。どうせなら写真を乗せよう。ほら笑って、ピースして、これが本当の出来事だってアピールしないと。


……ふぅ。じゃあ帰ろうか。


結局、報道はあんまりされなかったな。

まぁそうだよな。だって誰も俺の事を目撃してなんかないからな。

あったのは死体だけ。無残で狂おしいほど真っ赤な死体だけ。


さぁさぁ、これは隠蔽するのかな?


してもいいよ。

だけどそれは俺の自由にしたままになるって意味だけどな。


こっちとしては報道に震える家族の団らんに紅の噴水を与えてみたいともわくわくするけれど、まぁいいか。


バレなければ何をしてもいい。それは俺も同じってだけだからな。

ただ違うのは、俺はこの後もう一社に行ってこのパーティーのビデオを放送させる正直者だというくらいだ。


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