父ちゃんは、ドッペルゲンガー!

ゆきお たがしら

第1話父ちゃんは、ドッペルゲンガー! 

父親

「おーい与太郎、ちょっとこっちに来てみな。」

部屋の端でゲームをしている与太郎、顔も上げずに

「今、忙しいんだよ。いったいどうしたっていうんだい?」

父親

「つべこべ言わずに、こっちに来てみな。」

与太郎

「うるさいったらありゃしない。まあなんだな、パパイヤはパパいや! パンダのパンだ! イクラはいくら? なぁ~んてな。」

そしてシブシブ父親のそばに

「いったいどうしたんだい?」

「ここを、読んでみろ。」

「××新聞。」

「うん? お前バカか!」

「バ、バカ? 人を呼んどいてバカはないじゃないか、××新聞だろう。」

「誰が社名を読んでみろと言ったんだ。普通、読んでみろとは記事のことだろう。」

与太郎、面倒くさそうに

「うるさいな、いったい記事・・・、生地がどうしたんだい? ウフフ。」

「なに笑ってんだ、それにうるせい? こいつ親にむかって!」

父親、新聞を丸め思わず・・・、だが我慢すると

「とにかくアメリカじゃあな、学校なんかで銃の発砲が相次いでいるらしいぞ。」

「はっぽう・・・、八方・・・、月亭八方! へー、八方・・・、ね。」

「へー、じゃねえぞ、銃だ! 銃といったら大変なことじゃねぇか、お前も読んどいたほうがいいぞ。」

「じゅう、十・・・、百点の十分の一、俺みたいだな・・・。とにかくいやだね、俺、新聞なんか読んだことないもん。」

父親

「はぁ?」

それからキョトン

「お前・・・、新聞読んだことねぇのか?」

与太郎

「ああ、自慢じゃねぇけど読んだことなんかないね。」

父親、盗み見るように

「読んだことない・・・、もしかして教科書もか?」

「ああ、そうだよ。父ちゃん知らねぇのか、今はタブレット! タブレットは読み上げ機能がついているからよ、いちいち読む必要なんかないんだ。」

「タ、タブレット・・・、なんだそりゃ?」

「新聞読んでいるわりに、父ちゃん知らねぇな。」

「・・・知らねぇ? ば、ばか言え、新聞読んでいても目にとまらねぇこともあるんだよ。」

与太郎、ニコニコしながら

「そんなこと言って、委員会? まあ、そういう事もあるよな。俺だって宿題、しょっちゅう忘れるからよ。じゃあ教えてやるよ、父ちゃん、よく聞け。タブレットつぅのはよ、教科書の代わりだ。」

えらそうに言う与太郎、父親

「教科書のかわり? そんなもん、あるもんかい!」

与太郎『ダジャレ? 下手くそだな』

「父ちゃん遅れてるぞ、地球二周半ほど遅れてるぞ。」

二人のやり取りを耳にした母親

「与太郎、父ちゃんをからかうんじゃないよ。父ちゃんだってお前と同じで、知らないことたくさんあるんだから。とにかくよくお聞き、勉強ってものは、読んで書く、これが基本だよ。でないと、覚えるもんも覚えられないよ。」

与太郎

「そうなんか、桂南光・・・、ウフフフ。だから俺、バカなんか。」

そして与太郎、手で耳穴を指し右から左へ

「馬耳東風。」

母親

「分かってんじゃないか。」

与太郎

「あっ、言ったな!」

ウンザリする父親

「おいおい、二人ともいいかげんにしろ。とにかくアメリカじゃ発砲事件が相次いで大勢の・・・、生徒さんや先生が亡くなっているそうだ。」

与太郎、目を彷徨わせると

「父ちゃん、それ、どんなじゅうなんだ? ウフフ、十点? それとも百点? まっ、どっちでもいいけど、銃はコルトガバメントM1911なのか? それともIMIデザート・イーグルなのか? それかワルサーP38、もしかしてべレッタM92か?」

父親『?』、与太郎

「父ちゃん知らねぇな、拳銃だよ、拳銃!」

「う、うん? もしかして銃の名前か?」

「そうだよ、他に何があるというんだい。」

「お前、父親を馬鹿にしやがって! しかし・・・、やけに詳しいな。」

「マンガ読んでたら詳しくなるんだ。父ちゃんも新聞ばっか読んでたらいけねぇぞ、たまにはマンガも読めよ。」

「そうなのか?」

「そうなんか、桂南光・・・、ウフフ。それに撃たれたら普通崩れおちるじゃないか、それがコルトガバメントだったら転倒だぞ。それにデザート・イーグルはターミネーターで使われていたし、ワルサーはルパン三世、ベレットはダイハードと超有名なんだぞ。」

父親、呆れると

「お前・・・、それっくらい勉強ができたら・・・。」

そして指をアゴに添え

「俺は大谷や羽生、将棋の藤井さんが好きなんだが、お前もそんなに詳しいんだったらなにか一つ・・・。」

与太郎、最後まで聞かず

「残念でした! おれっ、勉強には興味ねぇ。」

「興味ねぇ? じゃあ運動はどうなんだ?」

「どうなんだ、桂南光・・・、ウフフ。とにかく運動はダメだな、逆上がりもできねぇ。」

「じゃあ、将棋とか碁はどうなんだ?」

「道南・・・、おれ北海道いったことないぞ。とにかくダメだな、あんな何手も先・・・。何十? ウフフ、何百? 何千? とにかく俺の頭が爆発しちまうぞ。父ちゃん、俺を殺す気か。」

「殺す? うん、たしかにな、お前の頭の容量は一メガもねぇからな。」

与太郎『?』

「父ちゃん分かってるんじゃねぇか、タブレットも知ってたんだろう。」

「まあな、とにかくお前バカ一筋だもんな。」

「そう言えばそうなんだけど、なんか面白くねぇな。ぼろくそに言いやがって、ロッカーに入ろうか・・・、加藤の葛藤・・・。まっ、それはともかく、拳銃でねぇんだったら、ライフルか? それともバズーカか?」

「はぁ? やっぱお前は本物のバカだな。バズーカなんて持っていってみろ、怪しまれてすぐに逮捕されるか、射殺されるぞ。」

「射殺? 撃ち殺されるのか?」

「あたりめぇだ、問答無用よ。」

「おっかねえな。それじゃあ不意打ちか、闇討ちじゃねぇか。不意打ち・・・、闇討ち・・・、吉良上野介公!」

父親『?』

「意味不明なことばかり言いやがって。よく考えて見ろ、どっちが悪いんだ、押し入った方が悪いんだろう。」

「そりゃそうだ。でもよ、どうやって発砲するんだ?」

「どうやって? そりゃあ引き金を引いて、ズドン!」

父親、撃つマネ、与太郎、倒れるマネ

「ひぇー、おっかねぇな、あぶねえじゃねぇか!」

「そうだろ。あぶねぇし、おっかねぇんだ。」

与太郎、腕組みすると

「でも、なんでそんなことするんだ?」

「考えられるのは差別・・・、それかイジメだな。」

「差別?」

「ああ、アメリカでは差別が激しいらしいぞ。人種差別・・・、肌の色が違えば忌み嫌うとか、中南米の国からやって来た人を見下すとか、とにかく複雑らしい。日本人にはなかなか分からねぇことだが、そうは言っても日本にも差別はあるからな。」

「へー、そうなのか・・・、ウフフ、亀はかめません・・・。じゃあ、イジメはどうなんだ?」

「イジメ? 日本でもなんかこう・・・、気にくわないとか、自分の方が上だなぁんて思い上がったヤツが、数を頼りに一人をいじめる・・・。そういうヤツだな。」

「亀の甲羅は食えません・・・、ウフフ。そりゃ酷い、弱いもんイジメじゃねぇか。」

「そうよ、だからイジメって言うんだ。」

「でもよ、俺なんか頭弱いけど、いじめられたことねぇぞ。」

庭の洗濯物を取り込んできた母親

「それはお前が気がつかないだけだよ。」

「えっ! そうなのか?」

与太郎、驚く、父親、

「そう言う事だ。いじめられる人は繊細な人が多いんだが、お前はタフ、いじめられても気がつかないだけだ。」

与太郎『?』、が、

「黙って聞いてたら父ちゃん、俺は大馬鹿か、化けもんか。」

「ウーンなんだな、それがお前の長所でもあり、短所でも・・・。」

しかし与太郎、もう気持ちはほかに

「それはそうと、ライフルと言ったらゴルゴサーティンだな。」

「ゴルゴサーティン?」

「父ちゃん知らないのか? ビッグコミックのマンガだよ。劇画なん・・・、桂南光・・・、ウフフ。だけどゴルゴは頭がよくってニヒルでカッコいいんだぜ、こうやって狙って、ズドン!」

「おいおい、与太郎。お前、撃たれたら痛いし、死ぬんだぞ。そこんとこわかってないと、ろくな人間・・・、それに弾丸はこう・・・。」

父親、胸に指を当て

「あたったときはこれっくらいだが、抜けたときは・・・。」背中に拳をあて

「これっくらいになるんだぞ。」

「ひぇー、おっそろしい!」

「そうよ、酷いもんだ。」

「そんなに酷いのか? 俺なんか紙で手切っても痛くてたまらねぇんだが、どれっくらい痛いんだ?」

「そりゃあ俺にも分からねえが、おめぇが言うように紙で切ってもとんでもねぇ痛さだから、どんだけ痛いんだか・・・。」

「えっ、父ちゃんでも紙で手を切ることあんのか?」

「ああ、あるぞ。」

「あんまり似合ってねぇな、父ちゃんが紙で・・・。」

「それ、どういう意味だ?」

「深く考えないほうが身のためだぞ。それはともかく、父ちゃんもわからねぇのか。そっか、そっか、まぁなっ、殺されたことねぇし、殺したことねぇんだからな。しかし、殺されたことを本人が分かったら、どうなんだろう? これは・・・。でもよ父ちゃん、最近、見も知らぬ人を刺したり殺したりと、物騒な世の中みたいだぜ。」

「ああ、ほんとだ。そういう人間は自分が刺されたことがないから、どれだけ痛いかわかんねぇんだ。お前、マンガ、マンガと言うが、マンガのなかじゃ簡単に人を切ったり殴ったりするが、殴られても切られても、そりゃあ痛いんだぞ。」

「たしかに世の中・・・、ゲーム感覚だな! 俺なんか、父ちゃんに頭叩かれても、ダチの肘があたっても、痛いことこの上ないもんな。」

「そうよ、人の痛み・・・、体もそうだが心の痛みがわかっちゃいねぇ人間が多すぎるんだ。マンガやゲームのせいとは言わないが、刺したり殺したりすればどうなることか・・・、これは政治・・・、ひいては教育の劣化だな、想像力の貧困だ。それと車、あれは走る凶器だぞ。不注意なのか思い込みなのか・・・、とにかく生身の人間に鉄のかたまり・・・、大けがするか死んであたりまえだ。まあ便利なことには違いないが、一歩間違えば犯罪だ。」

「う、うん? 父ちゃん、熱でもあんのか? 母ちゃん、父ちゃんが変なこと言いだしたぞ。」

与太郎の大きな声に再び母親やって来ると

「何だよ、うるさいね。」

「だってよ、心の痛みとか教育の劣化とか、父ちゃん、わけの分かんねぇこと言いだしたぞ。」

「そりゃあ父ちゃん、新聞読んでいるからだよ。お前みたいにマンガばかり読んでたら、そんなこと言えないよ。お前も父ちゃん見習って、新聞くらい読んだほうがいいよ。」

「そうかな? じゃあ父ちゃん、新聞かしてみな。」

「かしてみな?」

父親

「ほらよ。だが与太郎、漢字読めるのか?」

「父ちゃん、知らねぇな。おれ、千二十六の漢字、全部知ってんだぜ。」

「せ、千二十六! ほんとか?」

「ああ、ほんとだ。だから新聞、かしてみな。」

驚く父親、新聞わたしながら

「千二十六・・・、スゲぇな。もしかして・・・、天才?」

与太郎、新聞読みながら

「父ちゃん、六十才を過ぎたら一人を愉しむって書いてあるぞ。」

「俺は、まだ四十だ、六十なんて、まだまだ先だ。」

「ばか言ってんじゃないよ、ウフフ、お前と俺はケンカもしたけど一つ屋根の下暮らしてきたんだぜ・・・。」

父親

「お前、さっきからなにをブツブツ言ってんだ?」

与太郎

「えへへへ。それはともかくも、そんなのすぐだぞ。睾丸・・・、ヘッヘッヘ、光陰矢の如しって言うくらいだからよ、父ちゃんみたいにボォーと生きてたら、あっという間に七十だ。クワバラ、クワバラ・・・。」

「なんだ、そのクワバラ、クワバラてのは。」

「父ちゃんがすぐに七十にならないよう、まじないだよ。」

与太郎『ウフフ、あっという間に八十才。浦島太郎、麻生・・・、太郎』

「てめぇ、なにをブツブツ言いやがって。」

与太郎、無視、そして

「おい、父ちゃん。仲良し別居と書いてあるぞ。」

「仲良し別居? なんだ、そりゃ?」

与太郎

「旦那が面倒くさくなった奥さんが、別れるのも面倒くさいんで、家に住んだまま別居状態になることらしいぞ。父ちゃんも面倒くさいんで、気をつけたほうがいいな。」

「俺の・・・、どこが面倒くさいんだ!」

「なにも鴨だよ・・・、ウフフ。」

父親、渋い顔、かまわず与太郎

「父ちゃん! これは父ちゃんに当てはまるぞ。」

父親

「なにが?」

「年寄りは病院に近づかないようにするって書いてあるぞ。」

「それがどうした?」

「父ちゃんのドッペルゲンガーだ。」

「ドッペルゲンガー?」

「ドイツ語だよ、分身ということだ。」

「ドイツ語? 分身? なにが分身なんだ?」

「父ちゃんの病院嫌い知ってるぞ、だから病気して病院に行くときなんて、こう・・・。」

与太郎、紙の人形よろしくフラフラペラペラ

「そりゃなんだ?」

「そりゃなんだ・・・、桂南光、ウフフ。これは父ちゃんが病院にいくときの恰好だよ、こわいよ、こわいよ、注射がこわいよ・・・。」

「こいつ・・・、言わしとけば! それはおめぇだ。俺はあん時、熱があったんだ。」

「いいや違うね、病院がこわくて魂が抜けてしまうんだ。だから・・・、ドッペルゲンガー!」

「なにをわけの分からねぇこと言ってやがる。」

「おっ、父ちゃん、きみまろのことも書いてあるぞ。ええと、ええと・・・、こい・・・、恋がおぼれるのは心の池、酒飲みの父ちゃんがおぼれるのはため池だ。」

父親『?』

「お、お前・・・、話作ってないか。かしてみろ。」

そして父親

「恋におぼれるのが十八才、風呂で溺れるのが八十一才。与太郎、はなし勝手につくるな! だがよ、きみまろはスゲぇよな・・・、天才か? どれどれ、中高年、夢はある、暇もある、けど気力がない、たしかにな。それと・・・、自分探しをしている十八才、皆が自分を探している八十一才。そりゃそうだ、アッハッハッ。」

「父ちゃん、ひとの新聞、勝手に読むなよ、俺がみているんだから。」

「わりぃ、わりぃ・・・。なんで俺が、おめぇに謝らねぇといけねぇんだ!」

「おい父ちゃん、挨拶とスカートは短いほうがいいって書いてあるぞ。」

父親『?』

「なんだ・・・。」

そして新聞をのぞき込み

「セクハラじゃねぇのか?」

与太郎

「ほんとだ、言った人、謝ってらぁ。でもよ、挨拶が短いのは俺も賛成だな、あのぐだぐだダラダラ・・・、たまんねぇよな、できればテストも問題少なくしてくれたら、俺、大賛成するけどよ。」

「なにバカなこと言ってんだ。もういいだろう、新聞かせ。」

与太郎、はなさず

「おいおい父ちゃん、子供放置禁止条例だってよ。これなんだ?」

「子供放置禁止条例? なんだそりゃ?」

与太郎、読み上げる

「ええと、虐待禁止条例改正案・・・、トンデモ条例だってよ。公園で一人では遊ばさない、一人で留守番させない・・・。」

「はぁ? なんだそれ。共稼ぎの家はどうするんだ? ほんとにそれこそトンデモ条例だな。」

「まだ続きがあるぞ。言葉足らずでごめんなさいだってよ。」

読みながら与太郎、天井を睨み

「これは言葉足らずじゃなくて、頭足らずだな。」

父親

「頭足らず? それを言うなら発想が貧困と言うんだ。それに法治国家も行き過ぎたらこわいもんが・・・、松下幸之助さんも言ってたが、法治国家は先進国にあらず、良識国家が目指すところ・・・、そう言ってたな。」

「はぁ? 父ちゃん学あるんだな、見直したぜ! でもよ、法治国家・・・、先進国・・・、松下幸之助さん・・・、それみんな父ちゃんの友達か?」

「えっ・・・、なにバカなこと言ってんだ。幸之助さんが友だちなら、俺はここにはいねぇ。」

「ここにいねぇ? 父ちゃんどういうことなんだ? それこそドッペルゲンガーだぞ。母ちゃん、母ちゃん、父ちゃんは松下幸之助さんと友だちならここにはいないんだってよ。」

母親、やって来ると

「さっきからうるさいね、なにをわめいているんだい。」

「父ちゃん、松下幸之助さんと友だちなんだってよ。」

「おいおい、だれがそんなこと言った?」

慌てる父親、母親

「松下幸之助・・・、ああ、あのえらい人。大会社の社長さんだったけど、ずっと前に亡くなっているよ。」

与太郎

「ええっ! もう亡くなっているのか?」

「そうだけど、それがどうしたんだい。」

「・・・、死んだ人と父ちゃんは友達・・・。こ、これは本当にドッペルゲンガーだ。」

母親、相手にせず台所に、父親、ウンザリしながらも

「とにかくおめぇは漢字読めるんだから、もっと勉強しろ。」

「それはムリだな。」

「なにがムリなんだ。」

「読めるには読めるんだけど、書けねぇぞ。」

「書けねぇ?」

「そうなんだ。読み方は知ってんだけど、書けと言われても書けねぇ。それに意味といわれてもな、なにせタブレットだろ、あいつ頭はいいんだ、俺ついていけねぇ。」

「じゃ、じゃあ、おめぇは読めるだけか?」

「ああ、そうだ。自慢じゃねぇけど、まったく書けねぇ。俺の頭は容量が少ないんで、早く忘れないと爆発しちまうんだ。爆発しちまったら、俺死んじゃうぞ。父ちゃん、それでいいんか?」

与太郎の迫力に父親

「お前・・・、俺を脅す気か?」

「父ちゃん。そんな気、サラサラ・・・。」

与太郎、カッパのマネして頭を撫でるが、

「父ちゃん、父ちゃん、AI活用で作業時間短縮と書いてあるぞ、しかも、空いた時間で創造的仕事だってよ。創造的仕事ってなんだ?」

「創造的仕事? まあ、なんだな・・・、オメェとは真逆だ。」

与太郎、父親を窺いながら

「真逆・・・。えへへ、父ちゃんにもあまり関係ないみたいだな。俺だったら空いた時間には鼻くそほじって、屁こいて、スケベ雑誌みるな。」

「スケベ雑誌? 小学生のくせして、おめぇそんなもの見たことあんのか?」

「えヘッヘ、父ちゃんが隠しているのを知ってんだぜ。」

「こ、こいつ、い、いつの間に!」

父親の大声に再び母親やって来て

「なにを二人でグダグダ言ってんだい! もうすぐ夕ご飯だよ、与太郎、宿題は済ませたのかい?」

「あっ、いけねえ。今日は山ほど宿題があったんだ、忘れていたぞ。父ちゃん頼む、手伝ってくれよ。」

父親、言われた途端に立ち上がり、フラフラペラペラ

「わりぃわりぃ、与太郎。父ちゃんはここにはいねぇんだ、俺は父ちゃんのドッペルゲンガーだから、これから父ちゃんを探しに行ってくる。だからおめぇは、その間、ちゃんと宿題しとけ。」

お後がよろしいようで、テケテンツクテンツク、テケテン・・・。

                       完







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