歌がへたくそでも楽しんでいいじゃない、だって青春だもの
「主役は遅れてやってくる!ですわ!」
「お、セントレア来たな?」
「おーっほっほ、カラオケ盛り上がっていきますわよ!マイクはどこですの?」
「せれあっち!それならーかえでっちの元気付けよろー」
「え?」
「僕にだって、出来ないことはあるし……」
「ネガティブオーラが凄いですわ……わ、わたくしのオーラが、歌で皆さんを魅了して、かわいいわたくしがすごくてかわいいわたくしと知ってもらうための作戦が」
いやどんな作戦だよ。てか何?かわいいは乗り越えたの?セントレアはほめられ慣れてる。もちろん、かわいいと呼ばれることにも慣れてる。でも、内面を指すかわいいはどうも耐えられないらしい、前に聞いた限りでは「人前で赤ちゃんプレイをしているかのような恥ずかしさがありますわ」とのこと。うむ、人前で赤ちゃんプレイなんてしたことないしわからん。
「どうしたので?」
「いやね?こいつ歌下手なんだよ。んでそれをからかったら拗ねちゃった」
「なるほどですわ……それなら解決は簡単ですわ!」
お?言うじゃねぇか、どんな手を使うんだ?
「わたくしの卓越した歌を聞けばどうでも良くなりますわ!杏華さんマイクを!」
そ、そんな方法で行けるのか?だが、セントレアなら有り得る。
「行きますわ!Der HolleRache kochtin meinem Herzen、
Tod und Verzweiflung flammet um mich her!
Fuhltnicht durch dich Sarastro
Todessch merzen、
So bist du meine Tochternimmermehr。
Verstossen sei auf ewig、
Verlassen sei auf ewig、
Zertrummertsei’nauf ewig
Alle Bande der Natur
Wenn nicht durch dich!
Sarastro wird erblassen!
Hort、Rachegotter、
HortderMutter Schwur!」
……はッ!な、何を歌っているかは分からない。が、気がついたら時間が経っていた。超能力とか催眠術とかそんなちゃちなもんじゃねぇ。もっと恐ろしい、セントレアの力を、美声を味わったぜ。
オペラのような大声量から生まれる大迫力さ、そして、自分でも言っていた美声。そこから繰り出されるおそらくはドイツ語だろうクラシックはまさに天使が歌っているような、ボヘミアンラプソディーだった。
「せれあっち、魔笛まで歌えるのまじぱない」
「魔笛?何、それ」
「あまり知名度は高くないけど、あのモーツァルトが生涯最後に完成させたオペラで、特に夜の女王アリアが有名ね」
「ほぉ、なんかすごいことはわかる」
「ちなみにー世界でも数名しか歌えないらしいし?それを歌えるせれあっちまじそんけー」
「おーっほっほですわ!」
いやそんな歌うたえるとかセントレアさすがだな……
「すごいね、あはは、僕には無理そうだ、はは、はぁ」
で、楓はどうするんだ?え、解決簡単とか言ってたよな。
「あら?わたくしの歌で励まされませんでした?」
「うーんとどめの一撃?」
楓、意外とプライド高いし、なまじ負けたことがないからメンタル弱いんよ。
「いや、もう大丈夫。セントレアさんの歌すごかったよ、神の前じゃ人は人。僕らはいつまでも神には届かない、所詮バベルの塔のように崩れ去るんだ」
あ、ダメだ闇落ちしてるわ。目が死んだ魚のような目してるし……というかそんなこと言ってると
「楓さん!努力もしていないのに他者を必要以上にあげやらない理由を作る……私が一番嫌いなやり方ですわ」
「あーセントレアこいつ一回ダウナー入るとどうしてもな」
「わかってますわ、わたくしとて思うところはありますが、それ以上に本当に楓さんがそれでいいのかと思いまして」
「閃いたし!せれあっちかえでっちを鍛えてあげるってのどーよ。流石うち、いいアイデア思いついちゃうなー」
「え」
「うん、いいと、思う。セントレアは、教えるの上手い、それに配慮も出来る」
「まぁ舞い上がってるといきなりダメな子になるんだけどな」
「それは言わない約束ですわ!で、どうですの?やりますの?」
「……ふぅ、いや、大丈夫。ちょっと僕らしくなかったね、僕としたことが恥ずかしい所を見せちゃった。わざわざセントレアさんの手を煩わせるまでもないよ?もしかしたら1か月後にはセントレアさんよりうまくなってるかもね?」
「おーっほっほ、その意気やよしですわ!」
ま、まさかセントレアここまで考えての行動だったのか?!テンションが上がってた故にとかじゃなくて!
まぁそんなわけないか。
「まー何はともあれ全員そろったことだしー?乾杯っしょ!しいなっち音頭よろー!」
「え?えっ!うん、じゃあ、鳳花ちゃん、百合ちゃん、勉強、付き合ってくれてありがとう、お疲れ!」
「「「「「「乾杯!」」」」」」
ぷはぁ!うめぇ!やっぱ三ツ矢サイダーが上手いんだよなぁ。
「そういえば、さ?まだ椎名さんの歌聞いて無くね?」
「うっ、ばれないと、思ってたのに」
「さぁさぁ、歌ってくれよ。あ、そういやさっきのセントレア歌めっちゃうまかったな」
「ぐ、ぐぬぬ、もっと早く歌っておくべき、だった。セントレアめ」
「あら、理不尽に恨まれてますわ」
椎名さんが逃げようとするから。
「じゃ、じゃあ、これで、ごほん……終着の地を焦がす 寡黙な炎」
「いーじゃーん、ジョジョ」
い、意外な所来たな。いや別に意外じゃないけど、意外なんだよ。見た目はきょどってる少女なのにかっこいい系の歌って。きらりんレボリューションとか歌ってそうなんだよ。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラー!ふぅ、疲れた」
「杏華上手いじゃない」
「そうだね、いつもより声も出ていたし」
若干アプリコット化してたけどな。しかもこの曲は大声量で歌えばうまく聞こえるし、いい曲のチョイスだ。
「でも、疲れた、もう、歌えないし、休憩」
な、何?!こやつ次の曲を歌わないじゃなく、歌えないにするための一手を打ってきた、だと?確かにジョジョの歌はめちゃくちゃ疲れる!
「じゃあー回復するまでおしゃべりしよー」
「そうですわね、カラオケ楽しいですが、話す余裕がないのが玉に傷ですわ」
椎名さんの作戦通じず。
「セントレアさん色々習ってるみたいだけど家庭教師とかに教えてもらってるの?」
「ものによりますわ。そういえば、百合さんのご実家はその手の名家でしたわね」
「ものによる?」
「ですわ、例えば百合さんのご実家で行われているような華道や先ほどのオペラ等ではお招きすることもありますわ。ですが、わたくし自分の道は自分で歩み作るものだと考えておりますので1、2を学んだらその後はあまり会わないのですわ」
なるほどな、確かにゲームでも1から10まで攻略サイトを見てプレイしていたらエンディングまで簡単にたどり着けるだろうけどやりごたえは減るし、そのゴールは皆がくぐるゴールだ。でも、攻略を見ないでやれば隠し宝箱とか特殊ルートを見つけられるかもしれない。そういうことだろう。
何にせよセントレアが一般的に見て優秀だからこそできることだろう。その点はやっぱり上流階級生まれ何だなと感じる。
「でも、私なら、ちょっと不安になる。実際に、上手い人から見ると、どうなんだろう、って」
「そうですわね、確かに自分の目から見た自分ほど不確実なものはありませんわ。ですがたまにですが、定期的に講師の方々が様子を見に来て下さるのでその際にちょっとしたアドバイスをもらっていますの」
すごいね、理想的な学習環境だ。自分でできるだけやることが出来る環境、そしてそれを修正も出来る。一条家は意外とスパルタというよりも自主性を重んじているんだな。確かに改めて考えると無理やりやらされてきた人生を歩んできた人が世界に名を馳せる一条家で活躍することが出来るかと言われたら……無理だよな。
「みなさんは習い事していないので?」
「俺はしてないかな」
「わたし、も」
「うちもしてないかなー」
「僕もしてないな」
誰もやってないのね。このご時世珍しいじゃん。いや、俺がいえることじゃないけどさ、小学生男子は元気にサッカーとか野球をして、小学生女子はピアノやその他もろもろをするのがテンプレだよな。
「でも、今思うとサッカーとか俺はやりたがったな」
「わかる、ブルロ、かっこいい、エゴイストになる」
いや、それで始めたがるのはどうなの?俺は普通に運動がしたかったよ?
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