打ち上げ~参加して楽しむか、横から見るか~
「お疲れ様!ドッジボールと卓球で優勝おめでとう!2種で優勝なんて私も鼻が高いわ。ドッジボールみんな強かったし、卓球もみんなかっこよかったわよ」
「先生……良いんです。もしかしたら誰か見てくれてるかもと……そう期待して頑張ったさ。はは、でも誰も見ていないし、それどころか覚えてもいないんだ」
「卓球は見ても面白くないよね、分かるよ」
「個人種目って応援しにくいよな」
うぜぇこいつら。ごめんね?忘れてて。お前らはすげぇよ、頑張った。だからさ、教室に戻ってからずっとネガティブオーラ出すのやめよう?
「そうだ、さっき1組のやつらとすれ違ったときに打ち上げ一緒にやらないって誘われたんだけど、どうだ?」
「よっしゃ、打ち上げ行くぞー!」
「直行しようぜ」
「どこでやんの?」
変わり身早すぎだろ。
「場所は……高校の近くにコンビニあるじゃん?その近くの焼肉屋」
「うん、1組の人の実家みたいだから貸し切りにしてやるってね」
「焼肉か!いいね。運動した後は焼肉に限る!」
分かる。エネルギー消費した分はやっぱ肉で補充しないとな。味の濃さも重要だし、食べた感がないと駄目だ。焼肉奉行行くか……
「それじゃあ焼き肉屋へー?」
「「「「行くぞ」」」」
バーーーーーン
~~~~~
「えーお疲れ!カンパーイ!」
「「「「「「「「カンパーイ」」」」」」」」
なんでか俺が音頭を取ることになった。まぁ?高宮さんとも八重さんとも仲いいしね。
「ぷはぁ、三矢くんさ実際のところどうなの、え?」
1組男子が聞いてくる。
男子は男子、女子は女子でまとまってるとはいえあまりにもダイレクトすぎるだろ、酒飲んでないだろうな。
「俺はお前の名前すら知らんのだが?」
「そんなことは重要じゃない、モブAとでもしといてくれ。で?どうなんだ?みんなも気になるよな?……ほらぁ!」
「うぐ、ってもな。ただの友達だよ。友達」
「でも、三矢君の前じゃあからさまに態度違うし、それに……普段は聞けないけどさ、お弁当ももらってるんだろ?」
「態度が違うのは高宮さんとか椎名さんにもだろ?弁当は俺の栄養バランスが悪いからってな?しょうがないだろ?」
「本音は?」
「めっちゃうまい」
「こいつ!」
おいおい、暴力はよくないなぁ!
「ちょ、こいつら鬱憤晴らそうとしてない?!楓ヘルプ!」
「はいはい、そこまでね」
「月城!お前は三矢の肩を持つのか?」
「そうだよ?僕はいつだって三矢の見方さ」
楓……。
「てか、え?肉ウマ!」
「っふ、美味いか?」
「マジ美味い」
「そうか、ならよかった。うちの店お勧めの一品だからな。気に入ったなら今後も来てくれると嬉しい、サービスもする」
まじかよ。通う通う全然通う。
改めてみるとすごいことだな。この焼肉屋に2クラス分揃って皆が笑顔で肉をつまんでいる。これがスポーツの力か。
「さ・い・だくん?何の話してるの?」
「いや、この肉がうまいから今後も通おうかと」
「そうなの?私の名前が聞こえたから、つい」
「ついって、ちゃんと食ってるか?」
「あまり食べれてないの……それ食べたいな」
「おお、いいぞ。マジ美味いからこれ」
「……本当、美味しい!」
なんか周り静かじゃね?何?どしたの?
「何っていうか、なぁ?」
「なぁ?友達とか言ってたけどなぁ?」
「なぁ?」
おう、なんだよ。いいたいことがあるなら言えよ。
「いやなんて言うかさ?噂を目の前で実際に見るのは全然違うなと」
禿田がフラフラと寄ってきた。
「噂ってのはな……ヒェッ。なんでも、ないです。よし、お前ら。俺たちはあっちで一杯やって親交を深めようじゃないか、はっはっは!」
なんか寒気がする。
てか、なんだ禿田のやつ?酒飲んでないよな?あいつチンピラ歩きだから見ようによっては千鳥足なんよ。未成年はお酒飲んじゃだめだぞ?お酒は二十歳になってから。
「彩雫くんは焼肉何が好きなの?」
「牛タン美味いよな。とはいえ、ハラミも捨てがたいし、油の乗ったホルモンも背徳的なうまさがある」
「なるほど……じゃあ、はい牛タン焼きましょうか」
「お、ありがと。だが、まぁ待て待て。八重さんここは俺に任せてほしい」
今こそ焼肉奉行になるとき。
「牛タンはな、上に乗ってるネギがあってこそだろ?なのにひっくりかえしたらネギが落ちる」
「でもそういうものじゃないの?」
「じゃないんだなこれが。片面を網の端の方で焼くのが最適解。それじゃ焼ききれないんじゃない?って思ってるだろ?そもそも牛タンは焼きすぎると特徴のいい食感が失われるから焼きすぎないほうがいいんだよ。だから、じわじわと端の方でネギが落ちないように焼いて……ほれ、どうよ?」
「うん!弾力があって美味しい!」
「だろ?」
焼肉奉行はうざいだけじゃないってことよ。うざいのは分かってる、自己分析はばっちりだし。でもよ?譲れないものがある。だから焼肉奉行になる、それだけだ。
「彩雫くんも」
「いや、とりあえず焼くから後ででいいよ?」
「じゃあ、はいあーん?」
「ん?ありがと。くぅーうめえ。やっぱり牛タンだな」
さぁどんどん焼くぞ。
「さいだっちばかりゆりっち独占してずるいー!ちょ、男子の方行ってきなし?あんま話してないっしょ?」
「むー鳳花!」
「いやー独占はよくないっしょ。独占禁止法に引っかかるし?」
ふむ確かに。せっかく1組とかかわるチャンスだからな。
「三矢くんこっちこっち」
「ん?お前は……」
「え、噓だよね?!1年の時同じクラスだった只野だよ?」
「冗談だって、特に特徴もなかったから逆に好感度高かったしよく覚えてるぞ」
「……ぐす」
「悲しむふりやめろ、懐かしいなお前唯一の得意技だもんな」
「なんだ、ちゃんと覚えてくれてるんだね」
だってよ?この変わったやつしかいないような学校で特徴が無いのはむしろ特長だろ。
「んで何?」
「三矢くん、僕たちでさっき話し合ってたんだけど……僕たちはいつでも君たちの味方だよ」
「おう、それはどうも?」
「だがよぉ?それはそれ、これはこれだろぉ?よってぇぇ!今ここに1組2組合同裁判を開催するっ!」
「「「「「うぉおおおおおお!」」」」」
またかよ、3回目の裁判だぞ。さっきの味方だよってセリフ何だったんだよ。
「えっと、彩雫くんこれは?」
「さぁ?禿田のやつ場酔いでもしてるんじゃね?」
「まぁまぁ、騒がしいの嫌いじゃないっしょ?」
「それが、三矢くん。面白いことに、目がない」
「よくご存じで」
「そう、それが原因なんですねぇ、三矢くぅん」
「どれだよ」
「まだわからないんですねぇ?八重さんと仲がいいのは認めようじゃないかぁ?でもですねぇ、他の女子とも仲良すぎだろ!」
「そうだそうだ!」
「高宮さんの独占禁止だ!」
「兄貴は皆の兄貴だ!」
「みな、静粛にぃ!……すまねぇなこれが俺らの嫉妬ってのは分かってる、だがよぉ?男にはやるしかないこともあるんですねぇ!」
わかるぞ、負けるとわかっていても進む気持ち。
「それならしょうがないな」
「ん、わかる」
「ねぇ、鳳花、全然わからないんだけど……」
「わかりみー、男の子ならではのやつだし?うちらには理解できないよねー」
「え、あ、その」
「椎名さんはそこがいい所でしょ?」
八重さんの言う通りだ。
「そうだぜぇ兄貴!変える必要なんかねぇ」
「う、うん、ありがとう」
さっきも聞こえてた兄貴って椎名さんのことだったのね。
「え、何で兄貴って呼ばれてるの?」
「私達がみんなに囲まれて困ってるところを椎名さんがロールプレイで助けてくれて」
「ねーまじ、しいなっちかっこよすぎてまじ兄貴って感じだったし?囲んでた人もー兄貴オーラに当てられたって感じ?」
な、なるほど。
「椎名さん俺は感動したぜ。兄貴こそが真の男だ!兄貴弟子にしてくだせぇ」
「ふ、ふふん、そう?いいよ」
「ありがとうごぜぇやす!」
【てれてれってれー椎名はハゲ+その他多数を弟子にした】
良かったな椎名さん。友達だけじゃなくて弟子もできて、しっかりと椎名さんを見てくれる人が増えた。
「なんか、モヤモヤする」
「さ、彩雫くん?!ま、まさか!」
これは……嫉妬か。椎名さんの最初の弟子は俺なんだ!俺だけが椎名さんの魅力を知っていた。もちろん今は八重さんや高宮さんも知ってるだろう。でも、モブどもの場合は話が変わってくる。今まで椎名さんの漢気に気が付かなかったくせにちょっといいところに気がついたからって簡単に弟子になって!
「でもまぁ、何時もはオドオドしてるのに慕われてちょっと偉そうにしてる椎名さんも面白いからいっか」
「ねー、これでちょっとは自信つくといんだけどねー」
「うーん、なんか良くない方向に向かってる気もするけど」
「おだてたら調子に乗るのも椎名さんだから、問題ねぇだろ」
「椎名さん!俺たちに本当の漢気を教えてくだせぇ」
「ん、分かった」
「えー男子だけずるーい」
「でも、全員は、この場所じゃ」
「はいはーい、じゃあ?ゆりっちによる?女子力講座やっちゃう?」
「ちょ、ちょっと鳳花?!私は彩雫くんと」
「彩雫くんは洗脳済みだしいいっしょ?」
「でも……」
「はーいじゃあ女子しゅうごー」
なんか、楓と2人取り残されてしまった。まぁ、何はともあれ漢気講座と女子力講座で有耶無耶になって裁判が無くなったのは良かったな。人が居なくなったからか寒気がする、焼肉してたら熱くなるからな。冷房が強めなんだろう。どんどん焼こう。
「じゃあ、肉食うか、楓」
「そうだね、彩雫」
この後2人でめちゃくちゃ肉食った。
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