ラブコメ<スポーツ
どうしよう……
「おい、おめぇら道を開けろ。盛り上がんのはいいけどよォ、人様に迷惑かけちゃァ行けねェな?いいか?道を開けろ」
こ、この声は!
「おぅ、出来んじゃねェか。迷惑かけたなら言うことがあるよなァ?」
「「「「「「「ごめんなさい」」」」」」」
「よォし、素直に謝れるのは良いこったな、はっはっは!」
「し、椎名さん?!」
「お、う……あ、えっと、ずっと、話せなかった、し、その、困ってそう、だったし、その、」
元の椎名さんにみるみる戻っていく。かわいい。
「しいなっち、めっちゃかわいい!てか、かっこいい?うっはーまじさいきょー」
「ううん。と、友達が困ってたら、助けるのは、当然」
そうね、今目の前にいる椎名さんからは想像できないけど、さっきの椎名さんには私たちにはない頼りたいと思わせるような魅力があった。人前に出るのは苦手なのに、それでも私たちを助けてくれた。椎名さんの中で助けるのは自分のことよりも優先度が上だというのもあるとは思うけど、それ以上に、自分の気持ちや軸を曲げない強い意志があるんだろう。それは私にはない物。そして彩雫くんに私が引かれた理由の一端でもあるのだろう。だから……椎名さんと彩雫くんは相棒なんだろう。
「しいなっち、応援あんがとねー?」
「う、うん、鳳花ちゃんも八重さんも、凄かった」
「まぁねー」
「でも、八重さん、あまり、楽しそうじゃなかった、心から楽しんでいない、そんな顔だった」
「……」
その通りで、何も言うことが出来ない。結局、彩雫くんがいろいろと関係を変えてくれたけどいまだに私は仮面を外すことが出来ていない……あぁ、なるほど。
「前に私が親近感を感じるといったとき、椎名さんが私とは正反対だといった意味がようやく分かった。椎名さんの仮面は素の自分を出すためのもの。自ら作り自ら外すことが出来る。でも、私の仮面は作られてしまったもの。少しづつ形成される仮面は私の素と混じり馴染んでしまう。だからこそ、実際の私は……空虚」
「うん。だから反対。でも、違う」
確信を持ち、まっすぐな目で言い切る。
「八重さんは周りの期待に応えてきた。その結果あるのが仮面。だから、八重さんの仮面は期待が重さを持ったもの。それはすごいこと。八重さんは自信がある。だから期待に応えられる。仮面は八重さんの行動にしたがってついてきたもの。だから八重さんはそのままの自分を誇っていい。自信を持って……でも、私の仮面は、自信を付けるために、作った。それこそ、空虚」
ありのままの自分を誇る……改めて言われると確かに私は私に自信があるかもしれない。だって私にできないことはないし。
「でも、椎名さんの仮面が空虚?そんなことない。自信をつけるために作ったのなら、椎名さんの仮面は自信であり、自分自身でもある。見ていたら分かるわ。幾ら仮面をつけたからと言って苦手なことをするなんてできないはず。だから、あの仮面での姿は元からあなたに備わっているもの。そうね、ウルトラマンのようなものかもしれない。エネルギーを多く使うから仮面をつけた3分間しか本気の姿になれない。けれど紛れもなくそれは元から持っている実力。さっきの椎名さんヒーロー見たいだった、ね?鳳花」
「んねー、てか?やっぱ2人とも似てんねー。この際だから?ぶっちゃけると?2人ともただ自分に自信ないだけじゃん?ゆりっちとかさいつもいってんじゃん?あんだけ慕われているゆりっちがいまさら性格がちょーっと残念だったとしても影響ないっしょ?むしろ萌える的な?」
「そうね、うん、やっぱり似ているのかも。椎名さんも期待に応えるため仮面使ってるみたいだし、ねぇ、椎名さん。同じ友達なのに、鳳花だけ下の名前なのおかしいと思うの。だから百合って読んで。私も杏華って呼ぶから。ほら、ここまで本心で話したんだしね?」
「えっと、うん、百合ちゃん」
「はー、これでようやくうちの肩の荷も軽くなったしー、全く、うちが何言っても意味ないし?いろいろ手まわしたけどだめだったし?さいだっちで変わるかなぁとも思ったけど時間かかりそうだったし?はーやっぱり人を変えるのはダチってことっしょ」
「もぅ、鳳花はいつも……」
「ちょっちょ、早くいかないとさいだっちの試合、前の方で見れないかもよー?」
「はっ!行くわよ鳳花、杏華!」
「うん、こっちの八重さ、百合ちゃんの方がいい」
さぁ早く見に行きましょう。
~~~~~
「っしゃ、楓。俺らのスカイラブツインシュート見せてやろうぜ」
「飛び上がって同時にシュートするやつだっけ?いやぁ、流石に厳しいんじゃないかな?」
「いや、俺らならできる」
次は因縁ある……らしい2年1組との戦いだ。つまり、俺らの出番ってこと。
「まー?俺らサッカー部に任せろって」
「そうそう。マジ俺らのコンビネーション見せつけるから」
「皇帝ペンギン2号の練習したしな?」
いや、それって足壊れる技じゃね?ダメじゃん。
「てか、田中は15番でもまぁ部長だからあれとして、君ら2人キーパーじゃん」
「しー!それは言わない約束じゃん!」
「まぁ?キーパーでもサッカー部な訳で?三矢よりは上手いし」
「言うじゃん、じゃあ活躍しろよ?」
「まぁ、任せろって」
とはいえ相手のやる気も凄い。
「2組絶対潰す!」
「クソっ!八重さんだけじゃなく高宮さんまで!」
「スライディング……いや、オーバーヘッドでそのままヘッドを……」
やる気じゃなくて殺気を感じる気もするがまぁ、なんとかなるでしょう!
「エンジン組みましょう」
そう言い出したのは委員長、メガネを外してコンタクトでの参加だ。メガネないと特徴ないから見分けつかないな。もしラノベだったら後ろにクイッ!がつかないから本当に誰かわからないだろう。
「それでは、いきます……1組ぶっ倒す!」
「「「「「「「ぶったおーす!」」」」」」」
え、これでいいの?良いみたいだ。それぞれがコートに散らばっていく。俺はサイドハーフ、足の速さを活かすには最高のポジション。サッカー部の三馬鹿は皇帝ペンギン2号を決めると言いながらも鈴木がキーパーであとはディフェンス。楓がフォワードだ。
キックオフは相手ボールからだ。体育で常に戦っている相手だが、その勝率は低い。なんせ最初の1回しか勝ってないからな。でもその敗因として11人だったこととか、楓が本気じゃなかったとか色々と理由がある。だから、今回勝てる可能性も大いにある。
1組は強い、今も2人抜かれる。あ、田中が止めた。さすがサッカー部部長。前線にボールを送る……その先には俺。
ボディーフェイントを入れつつ、シザース……そしてまた抜きをしてドリブル、からのシュート。ゴールにボールが突き刺さる。……イメージは完璧だ。
「あ」
ダメでした。まぁ、そう簡単には行かないよねうん。
「ちょっと彩雫、しっかりしてよ?」
「ごめんごめん」
その後もボールを取っては取られを繰り返す。圧倒的にボール支配率は負けているが、流石は部活でキーパーをしてるだけあって鈴木がシュートを全て防いでいるおかげで0対0だ。
「がんばれー!」
お?八重さんに、高宮さんと椎名さんもいる。応援に来てくれたのか。
ん?椎名さんはともかくとして……八重さんと高宮さんは1組だしどっち応援してるんだ?
「うおおおあおお!行くぞお前らっ!」
八重さんの応援バフにより1組の連中の士気が上がる。っく、まずい!
「うおおぉ!皇帝ペンギン3号!」
お前らもかっ!イナイレ好きすぎだろ!す、鈴木!お前なら止められる!
「ご、ゴッドハンド!ぐあああああ!」
き、決められた……。
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