スタンドトークとモンハル肉祭り1日目

「どうイベントの調子は?」


 ざわざわ


「今んところいい感じかな。ちょっとミスったとこもあるけど、廃課金ユーザーの2人が強いし、皆なんだかんだ廃人だからね。このままなら上位入賞狙えそう」


 ざわざわ


「彩雫はあまり課金しないよね?」


 ざわざわ


「まぁな。ソシャゲとかでかわいいキャラ欲しいとかならわかるんだけどさ、モンハルで課金するのはなんか違うなって……というかなんかめっちゃ視線感じない?」


 ざわざわ


「……いまさら?ほら、今も」


 あぁなんか「あれが八重さんを……」とか言ってドアから覗いてくる奴はいるけどさそうじゃなくて


「いや、なんか種類が違う視線を感じるんだよね」


「え?もしかして高2にもなって中二病……」


「いやいや、違うよ?なんか追われるとか力に目覚めたとかそういうのじゃないよ?俺の持ってる中二病はあれだから傘を持って振り回したくなるとかちょっとカッコイイモンスターの設定考えたりとかそっち系のだから」


「うん、知ってたよ」


 いや、知ってたよもどうなんだ?厨二心を見透かされるのは人によっては恥ずかしいかもしれないがかっこいいことに憧れるのは普通のことなんだ。誰しもが胸の中に抱く過大な夢。叶わないと知りつつも諦めきれない夢のかけらが厨二心となって現れる。だから、中二病であることは恥ずかしいことじゃないんだ。というか俺は乗り越えた。よって問題ない、きゅーいーでぃー。


「ま、いっか」


「よくはないと思うけどね。もう慣れたの?」


「慣れたというか、うちのクラスのやつらは普通に接してくれてるしな。ほら、例えばサッカー部の三馬鹿……あれ?目そらした。例えば、禿田……あれ?突っ込まれない。例えば、ほら!椎名さんとか!」


「え、なんかものすごく挙動不審になったけど……」


 おかしい。全然かかわってこなかった椎名さんまでもがここまで変わるなんて……あ、椎名さん教室でてっちゃた。ちょっと申し訳ないことしたかな?ごめん、だが三馬鹿てめぇらは駄目だ。


「はい、三馬鹿集合!」


「ほーい!」


「ほーいじゃねぇ、おい目あった瞬間顔そらしたよな?」


「いやだってなぁ?」


「「なぁ」」


「昨日何があったん?噂じゃお前が八重さんの告白断ったとか、八重さんを泣かせたとか色々言われてるぞ?」


「あぁ、俺らだけじゃなくてみんなも気になってるはずっしょ?」


「ほら皆うなずいてるじゃん?」


 おい、クラスメイトだけじゃなくて、ドアの前にいるやつらもうなずくな、怖えよ。というかいつの間にか来てる先生もうなづいてるんじゃないよ。ちょっとした騒ぎだよ?沈静させようよ?


「ほうらぁ言っちゃえよ、ユー」


「いやいや、言わねぇって八重さんもいないのに勝手に言えるわけないだろ?」


「……まぁ見ているんだろうけど」


 ん?見ている?


「そう、私は見ていた!」


「お、お前は!」


「貝田よ!」


「出たな八重さんの追っかけ!」


 皆さんお忘れかもしれないし、何なら俺も半分忘れていたが、こいつは例の裁判が開廷された時に専門委員として俺に色々と聞いてきた挙句自身が八重さんのオタクということが判明してしまったかわいそうな子だ。こいつはなかなか厄介……


「というか見てたのか?」


「えぇ、申し訳ないとは思ってるわ。でもこれも八重様のためッ!」


 えぇ、怖い。これが所謂ストー


「みなまでいわなくていいわよ。私はただ八重様の身の安全を守る護衛みたいなものよ」


 だからそれがストー


「ともかく!私は三矢くん……いいえ、同士。認めたくはない、認めたくはないけど、あなたを認めることにするわ」


「え、いきなりなんで?」


 正直、好かれてないよね?今もちょっとにらまれてるし。


 こいつが八重さんを尊敬以上の気持ちで見ていることはその熱意からも伝わってくる。なんと言ってもゲームに向ける俺の情熱と似ているところがあるからな。だからこそこいつと俺が交わることはないと思っていたんだが……


「今までの八重様への態度やさっきの言動からもあなたが八重様をしっかりと考えていることがわかったわ。元から私が持ってたあなたへの好感度も高かったこともあるしひとまずは認めることにしたわ、このぽっと出のぽっと野郎をね」


「そりゃどうも?いやいや、別にお前に認められてもなぁ」


「僕は結構意味あると思うけどな?ね?」


 さすが楓だ、略してさえで。この状況でも俺の知らない何かを知っているらしい。意味ありげな視線を貝田さんに向けている。いったい何があるというんだ?


「はぁ、しょうがないわね。あまり表に立ちたくはないのだけど」


 何々?周りを見回して……みんな帰っていった?


「お、お前もしかしてスタンドをッ」


 そうとしか考えられない!超能力とかそんなちゃちなもんじゃあいっさいなかった……


「うん、流石だね」


「自分達で何とかしなさいよ」


 え、もしかして楓もスタンドを?俺の知らない間に学校を舞台に戦ってる?スタンド使いは惹かれ合うというしもしかしたら気が付かないうちに俺も使えるようになった?はっ!そう考えると辻褄が合う。今日感じた視線。それは能力に目覚めたから感知しやすくなり、その事がほかのスタンド使いにバレたからこそ余計に感じているのか?


「ごめん彩雫。色々考えてるとこ悪いけど違うよ?」


「矢で刺された覚えないでしょ?」


 うん、知ってた。


「というか、貝田さんもジォジォ見てるんだ。誰好き?」


「うーんハンドかな?空間削り取るのずるいわよね」


「分かる!最強スタンド説もあるしね」


 あれは千泰がバカだから強さ抑えられてるけど雑に使ってもあの強さだからね。持っと上手く使えれば単騎でディアブロとかカースにも勝てるかもしれない。というか無限に空間削り取り続けて無理やりゼロ距離に近づけないのかな?何かしらの制限ありそう。というか叙述回戦の四条悟に似てない?やっぱり最強説あるな。


「僕はスター白金かな」


「王道だけど王道になるのが分かる良さがあるからな」


「そうなんだよね、ジォジォにしては珍しくえ?これ負けないんじゃないの感ある頼もしさは後にも先にもスター白金だけだと思うんだ」


 なんだろうねあれ。でも、ずるいからなスタンドパワーも結構あるってのに、丈太郎自体が頭良いわ運動神経いいわ、肝座ってるわで頭のおかしいスペックしてるからね。アメリカなら大統領にでもなってるんじゃない?


「はぁ、月城くんも大変ね。こんな奴の話し相手になってるの」


「なんか倒れそうなのに倒れない人形を見てる感じで何か面白いんだよね」


「あーちょっと分かるかも勝手に倒れては起き上がる感じね」


 おい、誰が起き上がり小法師だ。




 ~~~~~~




 家に帰って今日もゲーム三昧、イベントはまだ続くからな。


「っと、これでとりあえず2000位ボーダー乗ったんじゃない?」


「おーっほっほ!さすが私達ですわね!」


 今日も今日とてイベント参加。と言ってもただひたすらモンスターを倒すだけの作業みたいなものだけどな。


「でも油断しちゃダメよぉ?後半戦は順位の入れ替わりが激しくなるしぃ敵も強くなるんだ・か・ら?」


「ってもよぉ、どうせこれまでのイベントと強さ変わんねぇだろ?」


「……ん」


「なら、やるこたァ同じよ」


「とか言って来ないだ落ちてたのは誰かなぁ、アプリコット?」


「うっ、いや、あれはだなぁ、ちょっと衝撃の事実というか……なんと言うかだなぁ、あれでこれよ」


「いや、あれでこれよで伝わるのはアニメの中だけだから」


「そうですわ、フィクションはフィクションですわ!」


「……でも今私たちがいるのはフィクション」


「ぐぬぬ、確かにですわ。もしかしたらあれでこれよで伝わるかもしれませんわ!」


 いや、無いだろ。


「お嬢様はいつも高いわねぇテンション」


「……でもだから取りやすいコミュニケーション」


「それが俺らのオーガニゼーション」


「「「イェーイ!」」」


 ハイタッーチ。


「素晴らしいですわ!」


「やっぱハイテンションだなァ、おい」


 うんうん、やっぱりゲームは楽しいな。ゲームは一日1時間?いやいや、こういう関わりだってあるんだから1時間じゃ足りないだろ?


「ふわあぁ、っとぉすまんもう寝るわ」


「お?早いな?どうした?」


「あれらこれや……体育祭に備えてちと運動をしたりで疲労がな?」


「俺も来週体育祭だけど全然運動してないな」


「良いわねぇ、青春」


「……体育祭」


「あらぁ?サトウちゃんはいい思い出ないのかしらぁ?」


「大縄跳び……犯人探し……1500m……みんなが見て……応援」


 どうやら軽いトラウマがあるようで……


「おーっほっほ、参加できるだけいいじゃないですの!わたくしは何かあったら責任取れないからと競技参加できませんでしたわよ!」


 うん、この話はよくないね。


「うふふ、でも以外ねぇ。お嬢様は何があっても参加しようとすると思ったわぁ」


「確かに。やりたいことはいまやるすぐやる必ずやるセントレアさんだろ?」


「理由があったのですわ。そもそもわたくしはただ参加したいのではなくてみなと仲良く球技祭を楽しみたかったのですわ。でもわたくしがいることで変な気を使わせてしまうこともまた事実。だからわたくしは椅子に座っておとなしくしていましたの」


 そりゃそうか。一人ではしゃいでも何も楽しくはないむしろそれは唯々空虚を感じるだけだ。皆で作り上げるのが学校行事だし立場を考えるとしょうがないのかもな。


「……大丈夫私たちは仲間ここで楽しめばいい」


「そうですわね!」


 それもまたネトゲの楽しみ方だね!ギスギスオンラインじゃなくてよかったよかった。


「そういやアプリコット大丈夫か?」


「おぅ、寝るわ」


「そうねぇもう寝ましょうか。明日にしね」


 サトウさんがこの時間に落ちるのは珍しいな。まだイベント時間少し残ってはいるけど、疲れてる状態だと逆に効率落ちそうだし明日に備える方が良さそうだ。


「そうですわね……もう今日のイベント時間も終わるしここまでにしときましょうか!」


 まぁ、リアル優先だな。俺たちは別に廃人ギルドじゃない。いや、廃人はいるけど、基本方針はまったりだ。


 とりまもう少しやるか。

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