告白

「俺、椎名杏華が実はアプリコットってわけよ」


「な、なんだってー!」


あまりに唐突なカミングアウト。いきなり過ぎてついていけない。どうしてこんなことになった?




〜〜〜〜




「おぅ、ソーダ。えと元気?」


「あぁ元気だが、どうし、、、た?」


ふむふむ。ふむふむふむ。いやおかしな会話はないなうん。いつも通りのアプリコットとの会話だな。でも……


「あれ?いつの間に椎名さんと仲良くなったの彩雫?」


ここ学校なんですよね。


「いや、え、は?えー椎名さん?」


どうして椎名さんが俺のゲーム名を?いや、というかその喋り方はアプリコット……


「いや、え、あ、その……………俺、椎名杏華が実はアプリコットってわけよ」


「な、なんだってー!」


あ、ダメだちょっと落ち着いて流れ確認してみたけどやっぱり唐突だったね。うん。


「ごめん、言うべきか、悩んだけど、やっぱり知って欲しくて……ごめん、アプリコットがこんなで」


「おいおい、何言ってんだ?確かに驚いたし、まだ半信半疑だけどさ、正直女性じゃね?とは思ったこともあったし?いや、やっぱりこんな偶然あるか?あったんだなここに……てか、よく気がついたね?何で?いや、あれか八重さん関連で話したところでか?」


「彩雫驚いてるのは分かるけど、それくらいに」


「ごめんごめん、喋りすぎたわ。いや、やっぱり雰囲気が同じだからか喋りやすいのかもな?」


「う、ううん。大丈夫。私も驚いた、ちょっと前にモンハルやってたら聞いたことある話が、出てきて」


「やっぱ?今考えるとあの時からちょっと様子変だったもんな。いやぁ、こんな嬉しいことある?同士が!しかも相棒が!まさかまさか同じクラスだったなんて。くそぉ、もっと早めに気がつければ」


「三矢くんは、受け入れるの早い、ね?私なんてどうしたらいいのかわからなくて、ハニーさんに、相談してもらってたのに……」


「いやだってねぇ?」


「彩雫はそういう生き物だからね。多分左脳がないんだよ。感情で動いてるから」


「おい、まぁ否定できないけどさ。色々考えても仕方ないだろ?生きてるのは今なんだからFG0だって別次元のことをいちいち気にするサーヴァントはあんまいないだろ?同じよ」


「なるほど」


「え、今ので分かったの?僕は全然何言ってるのかわからなかったけどね?」


「お前は親友だろ?アプリコットは相棒だからな」


「……相棒……おうよ、言葉を交わさずとも戦えるほどには通じ合ってるからなァ」


「ふーん?同じ学校にいてもう1年以上立ってる上に同じクラスなのに気が付かなかったのに?何年も一緒にいる僕の方が通じ合ってると思うけどな?」


「あァ?俺の方がこいつをわかってやれる。さっきみたいにな?」


「うん?そんな次元に僕達はいないんだよ。闇があれば光があるように、アムロが居ればシャアがいるように、アスカが居ればチャゲがいるように。当たり前なんだよ僕たちはね?」


「やめて!俺のために争わないで……ところでついついアプリコットって読んじゃったけどなんて呼べばいい?椎名さんの方がいいかな?」


ゲーム名を人前で使うのはちょっとな。俺はあまり気になんないけど嫌な人は嫌だし色々問題もある。とはいえあだ名として呼ばれてたりもするし、なにより呼びなれてるからな。リアルでも使われている所があるとかないとか、少なくとも妹にゲーム名で呼ばれている人が居るのは知ってる。今回の場合はいきなり俺がアプリコットとか呼んだら他の人が「え?」ってなるからな。実際に周りのやつらそんな表情してるし。


「えっと、その、大丈夫」


「いやぁそれにしても……ぷふっ、まさかいつも一人でいるから人と関わりたくない系の人だと思ってたのに、ただのコミュ障だったとか、しかもゲーム内で頼れる兄貴キャラでネナべロールプレイしてるとかとは、ぶふっ」


「でも僕たちとは喋れてたけどね?ロールプレイ入ってたけど」


「え、それは、あの、ロールプレイの方が、何話せばいいか分かりやすくて。普段は何話せばいいか分からないから」


「あー、確かになぁ。俺もアニメとかゲームの話以外できないし、俺はもう諦められてるけど。それ以外はまじ仲良くなってからじゃないと難しいよな」


「うんうん、彩雫がちゃんと自覚あるみたいでよかったよ。でもこれでもマシになったんだよ?昔はもっと一方的に話されてたし」


「それは、わかる。一度アクセル入ったら、止まらない」


え、俺の悪口大会始まってる?心が冷えたからか投稿した時よりも心なしか寒く感じる。


「はーい、ホームルーム始めるから席戻って」


いつの間にかチャイムが鳴っていたみたいだ。




「……むむぅ」




~~~~~




「第2回2年B組裁判を開廷する!」


ッチ、禿がなんかほざいてやがるが、目隠しされてちゃあ拝んでやることも出来ねぇ。てか……


「おい国際法違反だろ、捕虜には優しくしろやおら!せめて目隠しと椅子に縛り付けるのをやめろ」


「貴様には『八重様を振った!にも関わらず2日後に椎名さんと仲良くしていた!それがなんともうらやましい罪』の容疑がかけられている!」


ガン無視されたぞ?おい、てかなんで振ったと断定してんだよ。


「そうですね?裁判官殿!」


「はい、最後の一文は余分ですが……彩雫くんあなたには説明の義務がある。そして私はその説明を聞く権利があります」


「えぇ、八重さん?ちょ何してるの?」


「彩雫くん、私語は慎みなさい」


「ねぇ貝田さん的にはこの状況はいいわけ?見ようによっては八重さんが振られたことを公開告白しているようなもんだぞ?ほら、心なしか八重さんも色々限界に見えるぞ」


「今回の裁判は八重様直々に開廷されたものです」


八重さん本当に何やってるの?!


「三矢くぅん。年貢の納め時のようですねぇ」


リアルで年貢の納め時とか初めて聞いたわ。絶対俺の顔の近くでうざい顔して煽ってきてんだろ?目隠しされててもわかる。


「彩雫君それで?椎名さんとはどういう関係なんですか?一昨日私を振った時は言っていませんでしたが、もしかして椎名さんにこ、こ、こ……」


「もしかして椎名さんと付き合ってたりしないわよね?もしそうなら……それを八重様に伝えないのは不義よ」


「どうしてそうなった?お前ら何?恋愛に飢えてるの?まったく、何かあるたびに疑ってくるとか。別にそういうのはないって。でもまぁ関係はちょっと複雑だからなぁ俺の口からは言えないし椎名さんから……あれ?椎名さんいる?」


というか椎名さんこういうノリ苦手そうだけど大丈夫か?


「安心してもらっていいんですねぇ。彼女には今職員室に行ってもらっていますねぇ。いや流石に椎名さんは直接巻き込んだら申し訳ねぇ」


ただのいい奴かよ。キャラぶれっぶれじゃねえか。それなら安心か?


「いや、じゃあ俺の独断で言うわけにはいかないな。というか目隠しだけでも外してくれ話しにくいわ」


「チッ、まあいいだろう」


「言えないということは、やましいことでもあるのでしょうか?」


「八重さん。別にそういうわけじゃ……」


圧が凄い。ニコニコ微笑んでるけどなんかすごみがある。ありきたりな表現だけど後ろに般若が見える。


「おいおい、三矢早速尻に敷かれてるじゃん」

「そりゃそうだって、所詮三矢よ?」

「確かに!」


おい三馬鹿がよぉ、覚えとけよ?早速ってなんだよ。別に付き合ったりしてないって。


「何というかだな、友達というか、相棒なんだけど、うーん」


「じゃあこ、恋人とかじゃないのですよね?」


「まぁ」


「良かった」


「っく、三矢どぶに落ちろ」「禿げてしまえぇ」「……八重様、お美しい」


が、外野の闇が凄い。


「あれ?三矢くん目そらしてない?照れてる?」


照れるだろそりゃ。こんな美少女にド直球で来られたらよ。


「椎名さんのどこがいいんですか?」


「え、うーん……仲間思いで男らしい所?」


「椎名さんが?想像できなくね?」

「実は話したら見たいな?あるくね?」

「でも男らしいってどうなん?もしかしてあれじゃね?男が好きとか?」


「た、確かにね。三矢くんが男好きと仮定すると八重様に引かれないこととか色々と辻褄があう」


「そ、そうなの?!」


「いや、ねぇよ八重さん騙されないで?!」


「確かに月城くんと距離が近いような……彩雫くん女の子はダメですか?」


「ダメというかむしろ女の子が好きだけど?」


「じゃあ私のことは好き?」


「いや、まぁ、好きだけどさ」


……


……


……



「え、それって八重さんと付き合うってこと?こと?」

「ふぅーやるじゃん三矢、押し切られちゃったねぇ」

「萌えてんの?萌えてんの?」


「くそぅ、三矢お前やっぱり八重さんのこと好きじゃねぇかよ!」


「う、八重様が認めたならッ!でも!」


……揚げ足取りじゃん。でもじゃないんだよでもじゃ。当事者抜きで話し進めないでくれる?


「良かった、彩雫くんに嫌われていなくて」


八重さんはもっと当事者意識持って?ちょ、もうどうしたら!助けてかえでもん!


「ガラガララ」


ハッ!もしかして!

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