モンハル


「……ということがありまして」


「あらぁ、面白いことになってるわねぇ」


「……ハニー」


「あら失礼」


「がっはっは、いやはや羨ましいじゃないか!俺も美少女に好かれてみたいもんだなァ!」


「あら?私じゃ不満ですの?」


 俺は最近会ったことを昔からのギルド仲間に相談していた。上から順に俺ことソーダ、おねぇキャラのハニーバニーさん、無口なイケメンのサトウさん、筋肉マッチョで俺とよくペア狩りに行く相棒であるアプリコット、そしてこのギルドのリーダーのお嬢様セントレアさんの5人がモンハルでギルドを組み遊んでいるメンバーである。


 MonsterHuntingAnotherLife 通称MHALモンハルタンク、DPS、支援職で協力しモンスターを倒してドロップ品で装備を強くしていき戦う本格オンラインアクションゲームである。だがその一番大きな特徴はボイスチャットにある。このゲームではボイスチャットを利用している人が多い。というのもリアルタイムで違和感のない通話を可能にするボイスチェンジャーが搭載されており異なった自分となり遊ぶことが出来るためである。


 っとこれくらいにしとくか、早口になるのはオタクの悪い癖だからな。え?楓に早口で喋ってるくせに?いやいや、あれは実質独り言みたいなところあるから。


 俺はFFがひと段落付いたこともあるがこのゲームで定期的に開催されるイベント、モンスターをより多く狩り肉を集める肉祭りが行われるため久しぶりに顔を出した。そしてこのイベント中は基本的に皆が集まる。

 すると当然ボイスチャットは盛り上がる。


「若いっていいわねぇ」


「……あぁ、正直うらやましい」


「いやいやそんないい物じゃないですよ。あ、捕獲します」


 いやまじで悪目立ちするだけだからな、っとこれで10匹目。


「ナイス!いい物に決まってんだろ?みんながみんな青春出来るわけじゃあねェからな」


「とは言っても拉致され椅子に縛られ裁判されるぞ?」


「お?ん?え、それって……」


 そんなことされたい奴なんかいないよな。アプリコットも戸惑ってかロールプレイ崩れてるし。


「おーほっほっ、それも青春ですわ!」


「えぇお嬢の言う通りよぉ。青春はね勉強や恋愛、スポーツみたいなイメージがあると思うけどぉ、私は青春の本質は未経験を楽しむことだと思うわぁ」


「……うん、何十年も生きたハニーも私も拉致経験はない」


「え?あ、……そうよねぇないわよねぇ」


 ハニーさんまさか?この人の課金額、雰囲気、会話から富裕層だとはわかってる。もしかすると


「あら?ハニーさんはいつも拉致されてるとお聞きしてますわよ?」


 いつも拉致されてるって何!?そんなことあるわけ……あぁハニーさんの動きが挙動不審に!あっ大技来る!


 ド派手なエフェクトを纏った広範囲爆破攻撃を何とか避ける。


「って2人やられてるじゃん。え、ハニーさんだけじゃなくアプリコットも?!小足見てから回避余裕とか言ってなかった?」


「裁判って……」


 駄目だ。まだロールプレイ崩れてる!全然話聞いてねぇ!


 ちょっ、タンクとヒーラーがいなかったら戦線維持……無理!


「たぁぁぁぁあ!俺も死んだ!」


【撤退します】


 ……


 ……


 ……



「おーほっほ、負けましたわね!アプリコット、ロールプレイ崩れていますわよ。シャキッとしなさいな」


「え、あぁ、ごめん……ごほんすまねぇ取り乱しちまった」


 珍しいなアプリコットがこんなに取り乱すなんて。いつも冷静な兄貴なのに……


「良いんですわぁ!そんなに青春が羨ましかったんですのねぇ!わかりますわぁ」


「ちがっ、いや、別に違くわねぇが」


「……アプリコットはたまに闇が溢れる」


 それは思ってた。こんなに頼りがいになるのにな。まぁゲーマーなんてほとんど部活とか入らないし学校じゃ目立たないよな。


「セントレアは俺と違って青春をしっかりと送ってそうだがな」


 そうだな。こんだけ明るくて活発なら慕われていそうなもんだけどな。


「おーっほっほ、過ぎたるは猶及ばざるが如しですわぁ……ですわぁ……」


「あーそれは……確かにあるかもな」


 そう何を隠そうこのお嬢様、正真正銘のお嬢様なのである。学生であることは判明しているが一緒に遊んでいると「いやいや嘘だろ?」と感じるレベルにお嬢様なのである!


 いやね?口調はロールプレイがうまい人で済ませられるよ?でもさ、課金装備常備にキャラスキンはもちろん、結構なお値段するブースト系を全種類常時使用している。もちろんたまにいるよ?何を隠そうハニーさんがその一人だからね。でもそれが学生となると話は変わってくるじゃん?しかも自分で稼いだお金らしいからこそ手に負えない。所謂殿上人ってやつだな。そりゃあ一般人からしたら近づきにくいのかもしれない。


「青春がしたいですわー!!」


「そうねぇ、それだけはお金がいくらあっても難しいわねぇ」


 むしろお金があるからこそ心からの友情は生まれないのかもな。


「……そんなことより時間が大事、さっき全滅した。イベント肉稼がないと」


「そうですわね!目指せ2000位ですわ!」


 そうだな、今はイベント中だ。この祭り楽しまないと。


「そうよ、ソーダちゃん。悩みなんてあなたらしくないでしょ?楽しめばいいのよ」


 ハニーさん……確かに楽しむ心を忘れていた。ありがとうございます!とりあえずはイベント頑張りましょう。




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ギルド名 歌を忘れたカナリア


傷ついた渡り鳥、歌を忘れたカナリア、拳を壊したボクサー、口説き方を忘れたホストの4択から色々考えて歌を忘れたカナリアを選びました。

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