ベルニーの森の魔物
昔々、アーブローディの南部、ベルニーの森に近い村々で、だいたい1週間に1、2人という
ベルニーの森には
ですが、森に入ってもいない子供たちとなると、話は別です。
「
領内の魔獣
魔物の
それに対して、魔獣はどこにでも現れるため、人々は日常的にその対処を強いられていました。
魔獣となった生き物は、食べることも
ですが、体が大きくなり、体力も強くなるので、暴れている間は手が付けられません。
村の畑を取り囲む
ですが、魔獣が侵入した
続いて、村の用水路を調べさせました。
ですが、魔獣が
「サルの魔獣が
報告を受けた領主様の
「そうかもしれませぬが、それよりも、村の内部の者が、何らかの理由で子供を
「やはり、そうなるか」
領主様はひどく苦しい顔で
外国人系住民、獣人、エルフ、飲んだくれ、
昔はそういう表面的な事柄だけで、犯罪者のように思われたのです。
もちろん、独断と偏見で無実の人間を
領主様は
ですが、村人たちはそんな
特に、子供を持つ親たちは、いつどこで我が子が行方不明になるかと思うと、生きた
仕事に
幸い、領主様の調査が始まってからは、行方不明者は出ていませんでしたが、根も葉もない
ついに、貧しい同性愛者が十数人の村人たちに殺される事件が発生しました。
領主様と参謀は事態がこれ以上悪化しないように、軍隊をベルニーの森に差し向けることを決めました。
普通の動物は人間の気配を感じると逃げるものですが、魔獣はむしろ人間を
軍隊を森に入れるようなことをすれば、森中の魔獣が押し寄せてくるに違いありません。
普通の兵士では数人がかりでも魔獣を倒すことは難しいので、普通は後方からの
要するに、ただ危険なだけでなく、何かとお金が
入念な準備をし、
いつ魔獣が
やがて、その足音と
死者は30人余り、負傷者は120人近くに
とはいえ、兵士たちが勇敢に戦ったおかげで、実に11体もの魔獣が退治されました。
森には今後も魔獣が出るでしょうが、しばらくは大丈夫でしょう。
ということで、任務を終えた兵士たちは、村で
しかし、兵士たちが村を出た翌日、また1人、村の子供が行方不明になりました。
村の人々は激しく失望しました。
村で比較的
数日後、各地のギルドで
そんな冒険者の1人に、シンディという女性がいました。
シンディと3人の仲間たちは、この村に来た中では唯一の、Aランクの冒険者パーティでした。
冒険者は能力ごとにFからSまでのランクがありますが、Sランクになるほどの実力者はその前にどこかの組織に引き抜かれます。
上から2番目のAランクは、「高度に危険な戦闘系クエストでも仲間と
つまり、シンディたちは今回のような得体の知れない「クエスト」でも、仲間と助け合えば達成できると期待される冒険者なのでした。
「どう思う?」
パーティメンバーであるルーゴの質問に、シンディは
「まずは森へ」
「村は
「魔獣がもう
シンディが言っているのは人間、つまり、盗賊のことです。
今回の場合、魔獣が巣くう森を根城に、誰にも知られず子供をさらい、冒険者たちを
ルーゴだけでなく他の仲間たちも、苦い顔をしました。
シンディたちは朝から森に入りましたが、しばらくは1匹の魔獣とさえ
昼過ぎになって、シンディたちの耳に、少女とも少年ともつかない、甲高い悲鳴が聞こえてきました。
「助けて! 誰か! 助けて!」
「シンディ!」
「うん、行こう!」
そう言いながら、シンディたちは既に走り出していました。
その間も、悲鳴は続いています。
「助けて! 誰か! 助けて!」
「なんか、単調な悲鳴だな」
先頭を走っていたルーゴがぼそりと言った直後、
「シンディ!」
という声が、森に
呼ばれたシンディは、とっさに仲間たちを
「止まって! みんな、止まって!」
みんな
「ヴォッフ!」
野太い声を出しながら、シンディがルーゴの
森の地面は元々、平坦ではなく
崖の高さは10mほど。
ケガを
そのとき、
「助けて! 誰か! 助けて!」
という声を響かせながら、大きな怪鳥がルーゴに襲いかかりました。
シンディたち4人は
「何だ、あれ!?」
「知るか、ボケ!」
ルーゴの疑問に、シンディが乱暴に返しました。
シンディは冒険者として経験を
「とにかく、やることは1つ!」
その怪鳥は
どうやらありふれた魔獣ではなく、もっと強い魔物のようです。
「シンディ! シンディ!」
怪鳥はシンディたちの目線より少し高い、太い木の
シンディは弓矢を
変な声で鳴いていますが、ひとまず普通の鳥と同じように
弓矢自体は少し高品質な程度ですが、シンディは特殊な魔法で、
ですが、シンディは構わず矢を放ち、
「よっしゃ!」
パーティメンバーたちが
怪鳥はぴたりと
シンディたちは回り込んで崖の下に行き、怪鳥の死体を回収しました。
付近には、他の冒険者の遺体と、何人かの子供たちの遺体もありました。
シンディたちは息を
そして、その後もしばらく付近の調査をしてから、村に戻りました。
「人の声を
後日、報告を聞いた領主様が言いました。
横で参謀が
「領主様の軍隊が入ったとき見つからなかったのは、魔獣よりも警戒心が強かったからか」
「そうだと思います。
私たちを
森に魔獣が
シンディが言いました。
「予想とは違いましたが、結局、最も恐ろしいのは我々人間だったと言えるでしょう」
この一件があってからというもの、ベルニーの森
<ベルニーの森の魔物、完>
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