再会した幼馴染に「ほんとは女でした」とカミングアウトされたけど、断固として認めなかったらどうなるのか検証してみた 〜エスカレートしていく幼馴染の過激な女の子アピール〜

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第1章

第1話

「なんで女装してんの? お前」

「……ふぇ?」


 それが、俺——時田ときた零斗れいとが、再会した幼馴染——ひがし朝日あさひと10年ぶりに交わした会話だった。


「人の趣味嗜好にとやかく言いたくはないけどさあ、さすがに学校ではどうかと思うぞ……」

「そっちこそ何言ってるの、女装じゃないよ。これがボクの正装だよ」

「いや、女装だろ」

「……」


 ——高校の入学式、いったい誰が予想しただろうか。


 まさか、10年前に近所から引越して疎遠になってしまった幼馴染と再会できるなんて。


 まさかまさか、その幼馴染が女装趣味の変態になっているなんて。


「……あの頃から薄々思ってたけど、れーくん、やっぱりボクのこと男の子だと思ってたんだね」

「いや、男の子だろ」


 俺が即座にそう返すと、朝日は「も〜っ!」と頬を膨らませた。


 すると、朝日は机の横にかけたカバンから先ほど配られたばかりの生徒手帳を取り出す。


「ほら、これ見てよ!」


 そう言って、生徒手帳の最後のページを開き、添付された学生証に指をさす。朝日の細くて白い指の先端は、性別欄の方に向いていた。

 ふむ、『女』と書いてあるな。


「お前、学校に嘘の戸籍を提出したのか? それってバレたらやばいんじゃ……」

「ほんとの戸籍だよ! なんで信じてくれないの!?」


 さて、もうそろそろ白状してもいいか。



 ——ぶっちゃけ、全部わかってます。



 10年前に2人で遊び回っていた頃から、市民プールで着替えのときにいつも姿をくらますし、立ちションに誘っても絶対断るし、ポ〇モンで女主人公選んでたし、なんかこいつ妙に女々しいなと思っていたのだ。


 だから今日再会し、本当は女であると確信できて、10年間ずっと頭の片隅に残っていたモヤが晴れたことですっきりしているくらいだ。


 朝日は正真正銘、女だ。認めよう。



 ——だがしかァしッ!!



「ほら、れーくん! これ! これ見てよ!! 男の子でこんなのありえないでしょっ!?」


 自らのたわわに膨らんだ胸部を、買ったばかりのブラウスのボタンがはち切れそうなほどに張ってアピールする朝日。


「おっ、お前も筋トレやってんのか! なかなかパンプアップされてんじゃねえか!」


 すっとぼける俺。


「だからちがうんだって〜!」


 俺が頑なに認めないばかりに、朝日はこんな大胆なことまでやりはじめる始末だ。

 そこで、魔が差してしまった。



 ……これ、ずっと認めなかったらどこまでエスカレートしていってしまうんだ?



 この教室内を見渡してみた事実として、朝日はクラスの女子の中でも割と2、3番目に食い込むくらいにはかわいい。


 そんな奴が俺にここまで大胆な行動を取ってみせているのだ、なんという役得だろうか。


「ねえれーくんってば、聞いてる? ボク、ほんとに女の子なんだよ?」


 ふわっとしたいい香りが鼻に届いて、ハッと我に返る。

 朝日が下からぐいんと俺の顔を覗き込んでいた。近い。あの頃より30センチ以上は長い髪が、重力ではらりと垂れている。


 思わず、「キレイになったな」とかそんな柄にもない言葉が頭に浮かんでしまった。俺はなんとかそれを飲み込んで言う。


「……いやいや、お前は自分を女の子だと思い込んでる一般独身男性だろ」

「ち、ちがうよ〜っ!」


 俺は胸に固く誓うのだった。

 絶対に、何があろうと朝日を女だと認めまい、と。




 ☆☆☆あとがき☆☆☆

 お読みいただきありがとうございました。完全新作となります。毎日投稿がんばるぞ!

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