第12.5話 犯人は狼…?②

 喫茶店を出た俺たちは二手に分かれて盗人ウルフの情報を得るためにひたすら聞き回っていた。

 俺は何でも屋の仕事があるので、依頼をこなしながら話を聞いていたが、成果はゼロ。盗みがあった屋敷の周辺で聞き込みを行ったが、皆「知らねぇな」と首を横に振るだけだった。

 そして1日が終わり、次の日またアリエッタと一緒に聞き込みをする……その日も成果を上げられないまま1日が終わり、またアリエッタと一緒にウルフの情報を探す――。


『兄貴~全然見つからないね。ウルフのことを知っている人』

「そうだなー」

『もういっそうウルフが空から降ってこればいいのに』

「そうだな……」


 ――進捗があったのは聞き込みを始めて10日の月日が経過した頃。

 有益な情報を得ることができず、戦意を喪失していた俺にアリエッタが走りながら朗報を伝えてきた。


「ウルフが出してきたよ!予告状!」

「うおおおおおおお!本当か?」


 それは10日間延々と聞き込みをしていた俺にとってかなり嬉しい知らせだった。そりゃもう、目の前の暴力女とノリノリでハイタッチするぐらい。

 こうしてウルフから予告状が届いたことによって聞き込みを中断。俺たちはウルフを捕まえるため準備を行う。

 結局聞き込みをしていた10日は何も収穫を得ることができず無駄に終わってしまった。

 いや無駄じゃない。この10日間でアリエッタとは仲良くなった。

 ……決して無駄な時間じゃない……と思いたい。

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