第9話 破壊神の力
暗殺者が力強くロングソードを振り下ろすと物体は空中に舞った。そしてそのまま地面に落ちる。
暗殺者は首を刎ねたと思っただろう。変態野郎の俺と破壊神リムを討伐できたと思ったはずだ。
「……え?」
だから自分が持っているロングソードが折れて破片が地面に落ちていることを理解するのに時間がかかってしまった。
俺も首が繋がっていることに驚いていた。完全に斬られたと思った。
暗殺者の攻撃は確かに俺に当たっていた。しかしロングソードが俺の首に触れた瞬間、なぜか刃が砕けたのだ。
まさか俺の首がめちゃくちゃ固いから?
……ってそんなわけないか。
「ふふーん。どうだー私の力は!」
こいつのおかげだ。
頭の中からリムの威張り声が聞こえる。
「これは……お前のおかげなの?」
『そう、これが【破壊】だよ。「懐」と唱えて
これが破壊神の力? 俺は自分の両手を眺める。
体に異変を感じない。リムから無敵モードになったと言われても自覚がなかった。
「あああああああああああ!私の剣がぁあぁぁぁぁぁ」
突如、暗殺者は声を荒げた。
すると折れた剣とその破片を持って、俺のほうへ近づいてくる。
「ちょっとこれ?どうしてくれるのよ!これ私のお気に入りだったのよ!」
「知らねぇよ。お前が先に襲ってきたのが悪いんだろうが?」
「うるさい!それでもあなたが壊したのは変わりないわ!あうぅ……これすっごい高いのよぉ。まだ2年ローンが残っているし、弁償しなさいよっ!弁償!」
こいつまじか……言いがかりつけてきやがった。
『兄貴……謝ろっか』
「謝らねえよ」
なんで俺が悪いみたいになっているんだよ?俺は被害者だぞ?
「変態野郎……私の剣を壊した罪は大きいわよ。絶対に許さない!ちょっとそこで待ってなさい!すぐに武器を調達してあなたを地獄に送ってあげるから!」
「怯えながら待ってなさい!」と俺を指差した後、暗殺者はどこかに走っていった。おそらく武器屋に向かったのだろう。
小さくなった暗殺者の背中を見ながら俺は「何だったんだあいつは……?」と言葉を漏らした。
「よしっ帰るか」
『え!?行っちゃうの?あの人、待ってなさいって言っていたよ』
「いや、襲われるって分かっているのに素直に待つバカはいないだろ?さぁ、やつがいない隙に帰るぞ」
俺はその場から離れようと歩き出す。その時、腹から空腹を知らせる低い音が鳴った。
あぁ……腹減ったな。そういえば今日何も食べてなかった。
買ったチキンも駄目になったし、夕飯どうする?
「待ちなさいっ!何帰ろうとしているのよバカっ!」
「まぁ、米に卵を乗せて食べるか」と献立を決めながら帰宅しようとすると、後ろから怒鳴り声が聞こえる。
声が聞こえるほうを見ると、暗殺者が「ぜぇぜぇ」と息を切らしながら睨んでいた。
「もう帰ってきやがった!」
また戦闘が始まると思い、いつでも【破壊】を使えるように身構えていると、暗殺者の手には武器がないことに気づいた。
「あれ?武器はどうした?買いに行ったじゃないのか?」
俺が首を傾げると、暗殺者は口籠る。
「……み……か……った」
「え?」
「だから武器屋が見つからなかった!私ここら辺あまり詳しくないの!だからあなたは道案内しなさいよ!」
「はぁ?なんで俺が?」
「あなたが壊したんだから当然でしょ!?」
『兄貴、案内してあげようよ。困っているみたいだし……ここで助けなかったら何でも屋トモヒコの名が廃るよ』
「……」
あーもう、分かったよ
俺はため息を吐くと、ガミガミうるさい暗殺者を連れて武器屋に向かった。
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