第5話 夕ご飯は骨付きチキン

 酒場から出た頃には、セリア王国の空は真っ赤になっていた。

 帰宅する前に夕飯を調達。行きつけの肉屋に向かった。

 今日は店主のおじさんの誕生日ということでチキンが半額。揚げたての骨付きチキンを購入した。

 もちろんお祝いも言葉も忘れずに。


「肉屋のおっさんお誕生おめでとう!」

『パッピーバースデー♪ 肉屋のおじさん♪』

「ありがとう。おまけに一つサービスするよ」


 骨付きチキンが入っている紙袋を受け取ると、俺は一直線に家へ向かった。

 帰り道を歩く間、『ふふーんっ♪』とリムの鼻歌を聞きながら、さっきの酒場のことを考えていた。


『ふーん♪……ん? どうしたの兄貴? 難しい顔なんかしちゃって?』

「ちょっと考え事をしてた」

『もしかしてアリエッタちゃんのこと?」

「まあな。あいつの出世のために何かできることはないかなと思ってな」


 ふざけた奴だったが、あいつも何でも屋トモヒコを頼ってきたお客だ。

 自分が罪人になる計画に協力できなくても。出世のための手助けはしておきたい。


『うーん……街中で噂を流すっていうのはどう?』

「噂? 例えばセリア王国で看板娘に殴りかかろうとした暴力女がいるとか?」

『違うよ!それじゃアリエッタちゃんの出世が遠くなっちゃうよ!』

「冗談だよ。でも噂を流すのは良い案だな。明日も依頼があるし、世間話ついでにアリエッタのことを話してみるか。参考になったよ」

『えっへん、お安い御用だよ』

「たまには役に立つんだな」

『何それ~普段私が役立たずって言っているの?』


 帰り道、憑りついているリムと話していた。

 手に持っているチキンが冷めないように歩くスピードを速くしながら、家に向かっていた。そして左に曲がって路地裏に入った時、さっきまで人気のスイーツ店のことを話していたリムが『あー!』と何かを思い出した。


『兄貴! 今日私たちが出会って3ヶ月記念日だよ! せっかくの記念日なのに何もしてないじゃん!』

「お前まだ言っているのかよ。俺らはカップルじゃないって言っているだろ?」

『ねぇねぇー!何か記念になるもの買いに行こ? 今からでも間に合うよ!』

「記念になる物? さっき買った骨付きチキンの骨でいいか?」

『嫌だよ!せっかく最高の日なのに!』


どこが最高の日なんだよ。

「罪人になってほしい」って変な依頼が来るし、アリエッタのせいで看板娘に怒られるし……

どっちかと言うと今日は不運な日だった。

もうこんな日は次の不運が来る前に早く寝たほうが良い。

『プレゼント!』と連呼するリムを無視して、俺は家に向かった。


「……見つけたわ。破壊神リム」


――しかし次の不運はすぐにやってくる。

今度は突然後ろから俺の首を狙って、


『兄貴危ないぃぃぃぃ!!!避けてぇぇぇぇぇぇぇぇ!』

「え?」

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