第15話 一夜限リノ約束
「ま、待ってくれ緩坂! 違うんだ、これは……!」
上から要らない温もりを感じながらも、俺の顔は真っ青になっていた。
そうだ、すっかり忘れていた。
雷夢に「待っている」と言われた時点で気づくべきだった。
今日、あれがあったことに。
しかし時すでに遅し。
実際この様に悲惨な状況になってしまった。
まだ死にたくない……。まだやるべき事が山のようにあるんだ。
それに、このまま浮気(そもそも俺は緩坂と付き合っているなんて一言も言っていないのだが……)の誤解が解けないまま死ねば必ず「現実の《リアル》伊○誠」とか何とか言われて、死後も悪い意味で後世に語り継がれるに違いない。
それだけは絶対に嫌だ!ネットのおもちゃにされるなんて見ている側からしたら面白いだけだが、されている側はたまったもんじゃないだろう。精神が病むどころじゃ済まないに決まっている。まあ死んだら病気にもならないけど。
くだらない後悔を並べ立てて「死」に刻々と近づく現実から逃れようとするも、眞秀葉の恐怖レベルは限界値を超え、遂に壊れてしまう。
俺の意識は、いつの間にか遠のいていった。
※※※※
-どれ程の時が流れたのだろうか。
俺、「眞秀葉 風露」は何かふかふかの白いモノに挟まれて目を覚ました。
これは雲?
……ということは。
「ここは天国か……?」
何気にそう呟くと、
「フフッ。天国だなんて、僕と居てそんなに楽しいのかい? 嬉しいねぇ♡」
耳元でそう優しく囁かれ、俺は挟まれた白いモノから飛び出した。
「うわっ、誰だ!?……って雷夢か……」
「なんだいその嫌そうな反応は……。流石の僕でも傷つくよ。それともなんだい、耳元で囁かれるのは美少女が良かったのかな?」
「いや、そういう問題じゃないんだけど……後なんかお前ハッカ臭いぞ?」
それにしても、何故雷夢が此処に居るのだろうか。
もしかしたら雷夢も緩坂の犠牲になって!?
……って、そんな訳無いか。
俺がそう思った
まず俺が目を覚ましたのは雲の上でも
つまり俺は死んだのではなく、気絶してから誰かに俺の部屋まで運ばれただけなのだ。
それでも、最大の疑問が俺の頭で消化しきれずに残っている。
あの絶望的状況で俺はどうやって助かったのだろうか?
すると雷夢は俺の心を読んだかのように、「やれやれ……」と何故か嬉しそうに呟きながら、俺の記憶には無い、これまでに起こった出来事を説明し始めた。
※※※※
君は本当に何も分かって無いんだね……。
まあ良い。
これまでに起こった出来事、話してあげるよ。
僕は君と緩坂くんが君の家に入って来た時から、ずっとドアの隙間から君達を覗いていたんだ。緩坂くんにリードされないようにね。
そう、僕は真剣に目の前の光景に集中していたんだ。
……だからこそ、アイツ《・・・》がこっちに突っ込んで来た事に気づけなかったんだ。
その結果がこの湿布まみれの体さ……イタタタタ……。
僕に当たった後でも感情を激しくしている君を止められるほどの威力を持っていたんだから、僕にどれだけダメージが入ったか分かるだろう?
その後アイツ《・・・》は、そのまま君に体当たり。
君が気絶した時はほんと、どうしようか焦ったよ。
なにしろ風露きゅんは、完全に緩坂くんの攻撃から逃れられない状況になってしまったんだからね。
僕は覚悟した。
「風露きゅんの為なら、僕は命も捨てられる!!」
そう叫んで飛び出していったんだ。
緩坂くんを止めるのには骨が折れたね。
流石に女の子なワケだし、相手の体を傷つける訳にもいかなかった。
出来るだけ軽く足を刈り上げて、ふわっと受け止める様に善処したよ……。
本当は褒めて欲しいぐらいだけど、君が嫌なら仕方が無いか。
僕が押さえ込んでいると、緩坂くんも君と同じく死んだように眠ってしまってね。
僕が殺してしまったかと思って一瞬びっくりしたけど、全くタフな姫君だよ。
今は彼女も、違う部屋で寝かせている。
君に危害を加える可能性があったから、同じ部屋で二人にするのは良く無いと思ってね。監視係も一人ずつ付き添っているよ。
つまり、僕が君の監視係だ。どちらかと言えばボディーガードに近いけどね。
アイツ《・・・》には自分が起こした誤解が発端なんだから責任は取らせたよ。
緩坂くんの監視係として、ね。
……ん?
緩坂くんにはアイツ《・・・》は目の敵なのに、一緒に居させていいのかって?
……君はつくづく甘い男だねぇ。
自分が誤解を生んだんだから、自分でその誤解を解くことで初めて「責任をとった」って言えるのさ。
そんなんだから舐められるんじゃ無いのか?
……そうそう、本当は今日会議をするつもりだったんだけど、それ以上に大きなお願いがあったんだ。
最初にこの話をしようと思っていたんだが、なにしろこの有様。
もし嫌なら別に断ってくれても良いんだが……。
――――。
――――?
――――。
えっ、良いのかい!?
君の事だからてっきり断ると思っていたんだが、ダメ元でぶつかっていくのも案外成功する確率は高いのかも知れないね。
……いや、済まない。これから世話になるのに、この言い方は失礼だったね。
この「ゲーム」は、君の「希望」みたいなものだろうから。
……フフッ、ますます嫉妬してしまうよ。
君の周りに転がっている、いや、全て君が導いて来たのかも知れない、
君を虜にしてしまう「才能」たちに、ね。
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