第4話 マイマイナンバ歩きカード

 時は、平静14年8月5日。所は異世界の架空の日本。「住民票コード」なる、11桁の番号が、国内に住民登録された住民に付番された。

 「カード自体が住民票コードである」というワケのわからん理屈で、住民基本台帳カードそのものには、11桁は明記されて居ない。

 このカードの、ICチップ剥き出し、公的個人認証(マイマイナンバカードでは「署名用電子証明書」)の有効期限が、カードの期限と異なる、一人一枚しか持てません、というところが、後のマイマイナンバカードにも残る。


 ただし、利用できる場面や団体は、かなり限られており、実用に足りていたのかどうか。また、使う方も、はたして有効に便利に活用できていたのか、疑問は残るところであった。しかし、そうした検証も不十分なまま、マイマイナンバ制度の導入に繋がっていった、異世界の架空の日本であった。


 途中で、政権の交代が2回在ったが、野党政権になったときも、引き続きマイマイナンバ制度の実現に向けて研究(?)は進んでいた。もちろん、マイマイナンバ制度についてのパブリックコメントは行われたし、民間でも、制度ができる前に、勉強会や講演会が開催された。とはいえ、市民会館などでの、批判的な小規模の集会には、あきらかに、あなた公安でしょ、っていうヒトが、張り込みに付いていたりした。(あくまでも架空の日本の話だ。)


 時は流れて、平静27年10月5日。住民票コード11桁を基に、なにやら複雑な計算式で、マイマイナンバー12桁が付番された。途中の計算式のお陰で、”11桁に末尾ナントカを足した” ワケじゃない! という点で、一部にさらなる混乱を引き起こした。


 そして、まずは「通知カード」という通知を送ってしまった。

 これがまた中途半端なもので、住民基本コード11桁のように、通知を行うだけで良かったはずなのに。

 短期的ではあったが、住所や氏名の変更を役所で裏書きする、という、真に中途半端なものを送付してしまったのだ。


 また、送付の要件が非常に厳しく、住民票にある住所に、「転送不要」の郵便で送る、となっていた。例えば、病院や高齢者施設にいるため、医療・介護保険証は親族の住所に送付先を設定する、などの個人には、前もって別に送付先の設定が、親族の申し出により必要であった。

 その結果、どうなったかというと。まず、通知カードを受け取れない件が相次いだ。私事、世帯主の親父が、半年くらい実家に戻って、郵便物に転送をかけていたため、世帯員全員が受け取れなかった。


 ICチップのついたマイマイナンバカードの発行が始まると、「通知カードの裏書きはしません」「通知カードの再発行はしません」となった。さらに、「通知カードは、ICチップ付きカードを発行するためのQRコード入りの通知に変えます」という運用の変更が続いた。


 やはり、住民票コードの時のように、まずは通知として送るべきであった。また、国民総カードにするならば、住民基本台帳カードの時の、氏名のみ明記したICチップ付きカードをいったん全員に宛てて送付し、希望する者に対してのみ、住所や写真を載せたカードにも変更可能、とするべきだった。


 また、野党政権から与党が「取り戻した」(?)約10年の間に、公務員の指揮命令系統は、大きく崩れてしまっていた。

 まず、「命令」(仕様)が末端まで行き渡らず、「復命」も、おそらく、正しく命令権者まで戻っていないという可能性がある。

 「もしも、次年度でコレやっとかないと、後で致命的な不具合が出ますよ」という現場からの申し送りが、途中で「今年度ぶん、完了!」シャンシャン決裁、忖度官僚の完了報告になっていった。(あくまでも架空の日本の話ですので、念のため。)


 冷倭5年、次々に明らかになった不具合に、ついに、政府は、9月までに総点検を行う、としたが、10月半ばになっても、新聞報道などで具体的に目にすることも無く、「完了報告」を持って「ヨシ!(現場猫案件)」(←それ良く無いヤツや)としてしまったのではないだろうか。「どうして(泣く猫)」(架空の日本の話ですよ。)そうこうしているうちに、10月も下旬と成って、漸く所信表明演説で総点検を11月まで点検を延長しているらしい事が伝わってきた。


 また、従来の官僚制では無く、プロジェクトチーム制を執ったため、全体を把握した「管理職」が、居なかった可能性もある。右手のやっていることと、左手のやっていることが、チグハグなのである。

 戸籍のほうで、広域交付を目指すために、氏名のフリガナの確認を行っているわけで、それを先に済ませてから、保険情報の紐付けを行えば、誤った紐付けの一部でも防げたのではないか。

 

 住民基本台帳カードから、引き続きの、剥き出しのICチップ、壊れやすい。

「壊れ物です」と説明すると

「ああ、オレ、毎年、キャッシュカード一枚壊してるんで。」

と、おおざっぱな性格か不器用さんか、自覚してる方は良いのですが、

「コレまで何度も電話しているんですよ! 普通の使い方してるのに壊れるなんて!」

 という自覚の無いお客さまは「困ります、お客様!お客様!」ってなる。気の使い方、エネルギーの使い方が偏った不器用さんなのだろう。


 外部のサービスの、エラーメッセージが不正確なのも困る。

 「カードを読取り部から外せ」のメッセージの表示が、速過ぎるのも、考えもの。表示されて、一拍おいてから、離す方が良い。

 サーバタイムアウトでも「自治体の窓口へ」というエラーメッセージとか、

 15歳未満のナンバカードには、原則、署名用電子証明書は、付けておらず、また、利用設定が「否」になっている。そのカードを読み取らせると「暗証番号にロックがかかっています」というメッセージを表示する仕様など、いたずらに利用者に混乱を強いているんだ。「いたずら大成功」かよ。ってなる。

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