第4話
なんでそんな動画を霞ちゃんが持っているんだ。あの時は誰もいないときに告白したはずなのに…もしかして霞ちゃんが隠れて撮影していたのか?
「これ、お姉ちゃんが知ったらお兄さんは嫌われてしまうでしょうね」
「それはだめだ」
「ふふ、分かってますよ。お兄さんにとってお姉ちゃんは全てですもんね」
霞ちゃんのいう通りだ。涼花は俺にとって自分の人生よりも大切で失ってしまったら俺は生きていく自信はない。
物心ついたころには涼花と一緒にいて、ずっと共に人生を歩んできた相手だ。失うことなんて出来るはずがない。
「ですが…これを見られたらお兄さんは二度とお姉ちゃんと関わることなんて出来なくなるでしょう。本当にかわいそうです」
「なんでもするからそれだけは消してくれないか?」
「言いましたね?言質はとりましたよ」
霞ちゃんのスマホから俺の音声が流れる。
「嘘はつかないよ」
俺よりも長い間涼花と過ごしてきたのが妹である霞ちゃんだ。言うまでもなく俺よりも涼花のことを知っていて絆も深いだろう。
霞ちゃんが言うことにほぼ間違いはない。
「私ならば問題はありません」
「ん?」
「私ならばお兄さんのそんな重い愛にも応えることが出来ます。どうですか、私に浮気しませんか?」
霞ちゃんは俺を諭すように耳元でそう囁いた。
だが俺は靡かない。涼花の妹である霞ちゃんに、俺はそういう気持ちを抱いたことなんて一度もない。
そもそも霞ちゃんが何を言っているのか分からなかった。
「ショックでしたよ。昨日お兄さん、いや碧人がド変態に告白しているのを見て。思わず手が録画ボタンを押していました」
「ド変態?」
「私の姉、涼花のことです。あいつは毎日…いや、いいです」
霞ちゃんからそんな言葉が出てきたことにショックを受けつつ、俺はいまいち状況を飲み込めないでいた。
霞ちゃんの瞳には光が反射しておらず、どこを見ているのか分からない。
「とりあえず碧人は私の言うことを聞いてくださいね?さもないと…どうなるかはわかっていますよね?」
俺は頷くことしかできなかった。
「お見舞いの品は私が買っていきます。なので碧人はもう帰ってください」
「え、それは無理だよ」
「逆らうんですか?」
「で、でも…涼花が心配だし」
「はぁ、あいつなら元気ですよ。今頃自慰でもやってるでしょうね」
「今頃、なんていった?」
「いえ、気にしないでください。今日は取り合えず帰ってください。さもないと…」
そういって霞ちゃんは手に持ったスマホを左右に振った。
ダメだ。あれを見られてしまっては涼花に嫌われてしまう。いつか告白するときまでは、嫌われることなんてあってはならない。
「分かった。帰るからそれは勘弁してくれ」
???
「はぁ、はぁ…んっ///」
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