第2話
次の日の朝、俺は朝から憂鬱な学校の準備をして家を出た。
向かうのは涼花の家だ。彼女の家とは言ってもお隣さんなんだけどな。
普段から俺と涼花は一緒に登校している。だからなのか学校では俺と涼花が付き合っているという噂が流れているらしいが、真っ赤なデマである。
いつか本当になる時が来るかもしれないけど。
時間通りに涼花の家の前に立つと同時に玄関の扉が開かれて中から…霞ちゃんがでてきた。
「おはようございますお兄さん」
「おはよう霞ちゃん。涼花は?」
「お姉ちゃんは今日体調不良で休みです。連絡するの面倒だから私から伝えて置いてと言われました」
「なるほど」
じゃあ今日は久しぶりに1人での登校か。たまにお互いの用事とかで朝から一緒になれないことはあったが、今回は久しぶりだ。
体調不良っていうことなら帰りにお見舞いの品でも買ってから行こう。
連絡を面倒くさがるのは如何にも涼花って感じなので思わず笑みがこぼれる。
「じゃあお大事にって伝えておいて」
そう言って俺が歩き出そうとすると。
「待ってください」
と霞ちゃんに呼び止められた。
「どうしたの?」
「今日はお姉ちゃんの代わりに私がお供します。ちょっとだけ待ってて頂けますか?」
「そういうことなら別に構わないけど」
霞ちゃんと2人きりなんて何時ぶりだろう。たまに俺と涼花と霞ちゃんの3人で登校することはあったけど2人きりは初めてな気がする。
霞ちゃんはいい子だから変に心配しないでいいし、逆に新鮮で楽しみかもしれない。
数分で霞ちゃんが制服姿で家から出てきた。霞ちゃんはうちの高校の1年生で必然的に涼花と同じ制服を着ていることになる。
姉妹だから顔も似ているし…この姉妹をよく知らない人からしたら涼花と霞ちゃんを見分けるのは難しい。
2人の違う点をあげると涼花は目がキリッとしているが、霞ちゃんは丸い感じだ。
霞ちゃんの方がホンワカ美人って感じで男ウケは良さそうである。
あとは身体付きが2人で全く違う。姉の涼花は彼女に申し訳ないが胸の方はあまり豊満では無い。
対して霞ちゃんは…これ以上言うと涼花に悪いから控えておこう。
「お待たせしました」
「全然待ってないよ。行こうか」
「はい」
そうして俺たちは2人並んで歩き出した。
気まずい、二人の間に会話がない。沈黙だ。
周りにいる生徒たちは楽しそうに歩いているのに、俺と霞ちゃんとの間にバリアでもあるような壁がある。
空気に耐え切れなかった俺が苦し紛れに質問する。
「霞ちゃんって彼氏さんとかいるの?」
まずい。あまり親しくない俺が女の子である霞ちゃんに出す話題じゃなかった。これは霞ちゃんに引かれてもおかしくない。
「なんでそんな質問をするんですか?」
「いや、別に嫌なら答えなくてもいいんだよ。ちょっとした興味本位だから」
「いませんよ。好きな人がいますから」
そうなんだ。霞ちゃんには好きな人がいるのか。
霞ちゃんのようなかわいい子kら好かれている名前も知らない男子君は幸せ者だな。
「へー、結ばれるといいね」
「お兄さんは好きな人はいないんですか?」
「いるよ」
それがあなたのお姉さんですよ、とはいえず俺は霞ちゃんを見続けていると、思わぬ返事が返ってきた。
「そうなんですか、未来は明るいですね」
と。
俺は霞ちゃんが何を言いたかったのか分かるはずがなく、頭を悩ませた。
「別に深い意味はありません。気にしないでください」
「はぁ」
しばらくして俺たちは学校へとたどり着いた。
「ありがとう。楽しかったよ」
「私もです。また後で」
そうして俺たちは生徒玄関前で別れた。
彼女の発言の真意を知らずに。
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