幼馴染が寝てる間に告白した俺、次の日何故か幼馴染の妹が病んでる

ミナトノソラ

第1話

 今日俺は幼馴染に家でテスト勉強をしている。

 来週に控える期末テストの勉強会として幼馴染に誘われた俺は、勉強道具を持って彼女の家にやってきた。


「よし、やるか」


「だね、碧人」


「おう、涼花はなにするんだ?」


「うーん、数学かなぁ。今回のテスト範囲の数学やばいんだよねー。まったくわかんない」


 数学か、俺は得意な教科だが苦手な人はとことん苦手な学問だ。そもそも俺は理系、涼花は文系だから得意不得意がわかれるのは当たり前なんだが。


「俺は英語やるわ。このままだと赤点まっしぐらだし」


 受験が来年に控えている俺たちにとって勉強とは逃げようにも逃げることのできない鎖でつながっている。

 出来ることなら勉強なんてせずに進学出来たらいいのにな、と何度思ったことか。


「俺数学得意だから教えれるよ。涼花は英語得意だったろ?教えあわないか」


「いいねそれ、そうしよ」


 それから俺たちは軽く目配せをしてから机の上に広げられた参考書に目を移した。


 とりあえず一時間は集中しよう。




 お互いに分からないところを聞きあいながら勉強に励んでいると、あっという間に一時間が経過してしまった。


「結構時間ってすぎるの早いよね」


「だよな。別に好きなことしてるわけじゃないのに早い。早すぎるよ」


「ふふ、私疲れちゃった」


「俺も」


「だよねー、あ。ちょっと寝ようかな」


「寝る?」


「うん、別に本格的に寝るわけじゃないよ?ちょっとした仮眠」


「なるほどな。じゃあ、少ししたら起こすよ」


「ありがと」


 涼花はそう言って目の前にあるベッドに身体を横にし入眠した。すぐに呼吸音が聞こえたし、相当疲れていたのだろう。


 俺は自前の水筒に入ったお茶を一飲みすると、おもむろに立ち上がる。そのまま涼花のそばに立ち寝顔を眺める。


 綺麗な顔だ…出来ることなら触れてみたい。ばれたら嫌われるかもしれないし、俺にそんな行動を起こせるほど肝っ玉は据わってない。


「好きだ…」


 俺は彼女、園寺町 涼花のことが好きだ。

 物心ついたころから俺と彼女は傍にいた。


 親同士が仲が良く、幼稚園は違えど週末はほとんど涼花と遊んでいた。


 小学校は同じところに進学し、何度か一緒にお風呂に入ったこともある。中学生に

 なった時、俺は彼女への好意を自覚した。


 ちょっと涼花が他の男の子と話しているだけで心がモヤっとした原因がわかった瞬間もその時だと思う。


 涼花はモテた。それはそうだ。

 小学生の頃は容姿なんて気にしていなかったのに、ちょっと成長した途端に彼女の魅力に捕われた。


「なんでこんなに無防備なんだよ…俺は男だぞ。思春期真っただ中の男子高校生なんだぞ」


 涼花は気持ちよさそうに眠っている。

 気兼ねなく寝ているということはそれだけ心を許してもらえているという証なのだろうが、同時に男として意識されていないことに胸がキュゥと締め付けられる。


 これも俺に男としての魅力がないからだ。もっと小さい頃から自分を磨いていれば、涼花を仕留められる男になれたのかもしれなかったのに。


 今更悔やんでも意味がないのは分かっているのだが…どうしても諦める気持ちにはなれない。


 どうせなら告白してズバッと振られた方が潔く次に進める覚悟は着く。


「涼花、寝てるよな?」


「…」


「俺は涼花のことが好きだ。愛してると言っても過言じゃない。出来ることなら涼花が俺の物になってほしい。俺のことを好きになってほしい…」


「…」


 そうだよな、寝てるのだから聞こえてるわけがない。


「でも別に無理にってわけじゃないんだ。俺は涼花の幸せが一番だからさ。どうか俺に涼花の幸せを手伝わせてくれよ」


「…」


 言葉にするとすっきりすると良く聞くが本当だったんだ。思った以上の効果に内心驚きが止まらない。


 コンコン


 突然ノックオンが鳴る。

 涼花は誰もいない、って言ってたんだがな。誰か帰ってきたのかな。


 俺は小さな声でどうぞー、と答えてノックの主を待つ。


「こんにちはお兄さん」


「あ、霞ちゃん。帰ってきたんだね」


「はい、今日も勉強会ですか?」


「そうだよ」


「そうですか、なにやら碧人さんらしきお声が聞こえてきたのでお飲み物をと思って…」


 霞ちゃんの手を見てみると、おいしそうなリンゴジュースが注がれたコップを持っていた。


「お兄さん、りんごジュースお好きでしたよね?」


「うん、よく覚えてたね」


「はい、じゃあごゆっくり」


 リンゴジュースを受け取ると霞ちゃんは部屋を出た。


「美味いな」


 俺は再びゆっくりとベッドに近づき、涼花の寝顔を眺める。


 なんだか起こすのも申し訳ないな。一人で勉強しよう。

 リンゴジュースを飲みほして荷物をまとめると、俺は涼花の部屋を出た。


「帰ろ」







 ???


「はぁ、今日もなにもされてない」


 私はパソコンを開いて部屋中に設置された隠しカメラの映像を眺めて、にやりと微笑んだ。

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