第17話 竜王狩り
竜刻眼で観察しながら、様子見で少し力を抑えてひと当たりしてみたが、俺自身に予想以上の余裕があり驚くこととなった。
容易くはないが油断さえしなければ、ほんの少しだけ俺が優位に動けるだろう。
それと、
〈
魔力盾/ RES+3%
魔力を消費して防御盾を生成。
シンプルながら使いやすい性能のアプリだ。竜気ではなく魔力を消費するのも助かる。
アプリの確認も終えたので戦闘へと意識を戻した。
「アルマさん! 先ずはこいつを村の外へと出します。協力して下さい」
「わ、わかった! 牽制は任せて! あとはススムに合わせて風を当てるから上手く利用して」
アルマさんに改めて協力を要請すると、猫たちが牽制を再開する。
俺は竜天靴の反発を調整してほんの少し速度を落としつつドラゴンへと接近すると、後少しというところで力強く踏み込み、緩急を作りだしてドラゴンの隙をついた。
ドラゴンの腹の下に肉薄すると、靴先に作った竜気で形成した巨大な爪に、反発する性質を持つ竜天靴の不可視の足場を纏わせて、下から斜め上に掬い上げるように力一杯蹴り上げた。
人型とはいえ、完全な竜王へと至った俺のパワーと、竜の力を模した魔法による爪の威力、圧倒的な速度を生み出す不可視の壁による反発力が合わさることで、巨体を誇るドラゴンの体を空中へと弾き飛ばした。
続いて、風の女神の祝福を受けたアルマさんの風がさらにドラゴンを村の外へと押し出す。
次に俺は、周りに漂うエネルギーを取り込むように息を吸い込むと、体内で竜気を練り限界まで蓄える。
村の外に向かって飛んでいくドラゴンが、今まで周りに存在した家の高さを越えてちょうど良い位置に到達したのを見計らい、それまで体内で練っていた竜気をドラゴンに向かって勢いよく口から吐き出した。
竜息に追加して創造した魔法〝竜息吹〟だ。
取り込んだ竜王の一体、竜骨の谷の主である黒い竜王の特性だった『崩壊誘発』という物騒な性質を付与したドラゴンブレスは、俺の口から吐き出されると渦を巻きながら直径二メートルほどに膨張して空中のドラゴンの腹へと直撃した。
すると、ドラゴンブレスは意外なほどあっさりとドラゴンの腹を貫通したあと、空に浮かぶ雲に穴をあけて消えていった。
空中で事切れたドラゴンは弾き飛ばされた力にドラゴンブレスの威力が加わったことで、そのまま惰性で飛んでいき村から少し離れた場所へと落下した。村の中心である俺たちがいる場所まで、ドラゴンが落ちた時の地響きが届く。
俺の竜王としての本能が、倒したドラゴンの何かを強く求めていた。
「アルマさん、あいつの生死を確認してきます!」
「……! ま、待って私も行く!」
呆然としていたアルマさんと共にドラゴンの生死を確認する名目で、急いでドラゴンが落ちた場所へと向かった。
◇
ドラゴンが落ちた場所は湖の反対側、鎮守の森から少し外れた平地にあった。
俺は腹に穴をあけて横たわるドラゴンの前に立つと、本能に従ってドラゴンの周りに漂う靄のようなものを吸い込む。
少し吸い込んだだけで、周りに漂っていた靄が勢いよく俺に向かってくる。全ての靄を取り込むと一度全身が脈打つような感覚があり、そのあとに身体中が熱くなった。
熱がおさまると、自分自身が今までより一つ先に進んだことを自覚する。
俺には、これが竜神へと近付いた感覚だと何故か理解できた。
『実績が解除されました。報酬が与えられます』
『実績が解除されました。報酬が与えられます』
すると当然のように二度の通知が頭の中に聞こえてきた。すぐにAR表示でアプリの性能が映し出される。
〈
進化補助 / EXP+3%
〈
進化補正/ EXP+3%
「なんでやねん」
同じ意味の名詞と動詞が付けられたアプリを見せられた俺は、自分の
「どうしたのススム!」
「あ、いえ、アプリを獲得しただけなので大丈夫——」
『おめでとうございます。二十個の実績の解除を確認しました。特別な報酬が与えられます』
「——ではなさそうです……」
「え?」
今回は無事に竜王との戦闘を終えることができたが、まだ色々と悩むことがありそうだった。
—————————
▼《Tips》
〈
自分のためでは無く、他人のために困難へと挑むことを決意したことに対する
アプリを管理するアプリ。
所持しているアプリと連携して、アプリ所持者の使いやすいように全アプリの能力を管理し制御する。補完し合うのが前提の性能のため、
〈
自分よりも強い相手へと挑むことを決意したことに対する
アプリを補助するアプリ。
所持しているアプリと連携して、AR(拡張現実)表示にてアプリの能力を補助する。補完し合うのが前提の性能のため、
〈
アプリによる能力の覚醒。
〈
完全な竜王に成ったことに対する
種族特効付与アプリ。
アプリ所持者の種族と同種の対象に対して、弱点への特効付与。所持者の場合は人と竜と人竜が対象。AR表示が前提の性能のため、
〈
アプリ所持者の固有の
〈
万象を看破するアプリ。
隠れているもの、隠されているものを見破ることが可能。AR表示が前提の性能のため、
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