第15話 急転直下
アルマさんに〈
新しいアプリの〈
そんなことを黙って考えていたら、アルマさんがじっとこちらを見ているのに気付いた。
「どうしました?」
「……ススム、きみは——」
アルマさんが何かを言いかけたその時、途端に全身が泡立つような感覚と妙な高揚感を覚えた。
アルマさんも何かを感じたようで、慌てた様子で家の外へと向かった。眠っていた猫たちも即座に目覚め、俺と一緒にアルマさんの後を追う。
俺はこの妙な感覚の原因へと近づくにつれて、少しずつ増してゆく高揚感に引き摺られるかのように、溢れ出す歓喜に支配されていった。
あれは同胞だ。そうだ、俺の獲物だ。
村長の家の近くにある村の中央広場の少し開けた場所に、俺と同じく歓喜に支配されている藍色のドラゴンが佇んでいた。
俺はドラゴンに引き寄せられるように、ふらふらと近付いていく。
「ススム! ダメっ——」
俺を見つけた
ドラゴンの咆哮が生み出す衝撃波が、周りの家々を震わせる。意味を持たないはずの叫びが、俺には不思議と感情と共に意思を伴って聞こえてくる。アプリの〈
そんなどうでも良いことが頭のすみによぎったが、湧き上がってくる興奮と歓喜にかき消されて、だんだんと俺の視界が、思考が
◇
「ススム! ススムッ!!」
気が付くと血を流しているアルマさんに後ろから抱きしめられていた。
目の前では
俺の体や手には血が付いている。俺の血ではなく返り血だ。アルマさんの怪我は俺が彼女を振り払おうとして出来た傷だった。
何度も振り払っては、その度に止めようとしたアルマさんに抱きしめられたのだろう。
興奮と歓喜が消え去り、一気に思考が冷めていく。自分への怒りと嫌悪が湧き上がり、どうしようもない不甲斐なさを感じた。
「すいません……アルマさん。俺……」
「ススム! 良かった、正気に戻ったのね」
「アルマさん。その、傷は……」
「ああ、大丈夫。大したことないから。それよりも、しっかりしなさい。あれは間違いなく竜王。私たちだけで倒し切るのは難しいから、ススムにも協力して貰うよ」
そう言って俺から傷口を隠すように、アルマさんは緑色の光を纏い服を
俺は一刻も早くドラゴンを倒すことを決意した。
『実績が解除されました。報酬が与えられます』
『実績が解除されました。報酬が与えられます』
何故か頭の中にいつもの声が繰り返しで二度聞こえてきた。気にはなったがアプリを確認している暇はないと判断した俺は、無視して戦闘に加わろうとする。
すると、視界の中に二つのアプリアイコンが現れた。
〈
〈
混乱する俺をよそに、アプリは指示をしていないのに勝手にそれぞれの性能を表示して知らせてきた。
〈
アプリ管理 / ALL+1%
所持しているアプリと連携して、
〈
アプリ補助 / ALL+1%
所持しているアプリと連携して、AR(拡張現実)表示にてアプリの能力を補助。
今の状況にとって都合が良すぎるアプリの獲得を訝しんだが、そもそもが俺のための俺の異能だ。都合が良いのならばそれで良い。俺にとって今重要なことは、一刻も早くあのドラゴンを倒してアルマさんの介抱をすることだ。
すると、またもや頭の中に声が響く。
『実績が解除されました。報酬が与えられます』
間髪入れず、視界に取得したアプリの性能が表示された。
〈
能力覚醒 / ALL+1%
新しいアプリの性能を確認したとたんに、感覚が研ぎ澄まされて全身から力が湧き上がってきた。今まで常にあった全身が泡立つような感覚、威圧感や恐怖にも似たそれも消え失せた。
自分が本当の竜王に成ったことを、そして実績の達成を実感した。
するとまたもや頭の中に二度声が響いた。
『実績が解除されました。報酬が与えられます』
『実績が解除されました。報酬が与えられます』
一瞬にして視界に二つのアプリの性能が表示される。
〈
種族特効 / EXP+3%
〈
異能補助 / EXP+3%
次々と実績報酬が生み出され、段々と分かってきた。俺の
『実績が解除されました。報酬が与えられます』
こうして手にしたアプリが、ある意味でその回答といえた。
〈
万象看破 / DEX+3%
隠れているもの、隠されているものを見破る。
手に入れたアプリは、奇しくも俺の竜刻眼に准えたような性能だった。敵を知るにはより捗ることだろう。
さあ、準備は整った。竜王狩りの時間だ……。
—————————
▼《Tips》
〈
未知の食材を使って作られた冷たい料理を食したことに対する
冷却水循環式調理アプリ。
カメラ画面で指定した食材を粒子状の魔力で包み、その内部を魔力でコーティングした水が循環することで熱を奪い、一定の温度を保ちムラ無く冷却することが可能。急速冷却(5℃から−5℃)機能と急速冷凍(−15℃以下)機能有り。
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