第3話 人型の竜
俺は取り敢えず[魔法一覧]を開いてみる。
[魔法一覧]
【竜軀(竜気順応・竜鱗障壁・骨格強化)※常在】
【竜息(竜核創生・竜気生成・竜気循環)※常在】
【竜瞳(知覚強化・思考力強化・神経強化)※常在】
【竜腕(腕力強化・体幹強化・爪撃強化)※常在】
【竜脚(脚力強化・平衡覚強化・蹴撃強化)※常在】
衣服と戦闘力の強化を両立するにはどうするべきか。創った魔法の中で一番衣服と親和性が高いのは竜軀だろう。靴は竜脚以外に候補がない。
まずは竜軀に具現を繋げて衣服を創る。竜気を操作しやすくして、自動で発動する竜鱗障壁を、部分的に竜気を集めることで強化出来る様にする機能と、常に暑さや寒さを軽減するような機能を追加する。
『魔法【竜軀】に【
[魔法創造]
【竜軀(竜気順応・竜鱗障壁・骨格強化)※常在
┗ 竜纏衣(竜気操作・環境適応)※具現】
【竜息(竜核創生・竜気生成・竜気循環)※常在】
【竜瞳(知覚強化・思考力強化・神経強化)※常在】
【竜腕(腕力強化・体幹強化・爪撃強化)※常在】
【竜脚(脚力強化・平衡覚強化・蹴撃強化)※常在】
魔法が完成すると、体にくっついているだけのかつては服であった物を剥ぎ取り、それで全身の汚れをできるだけ拭き取った。多少は身綺麗になったところで竜纏衣を起動してみる。
黒い粒子が全身に纏わり付いたかと思うと一瞬にして服へと変化した。デザインは明るめな灰色の太極拳服(カンフー服)の上下で、左肩から竜(ドラゴン=西洋竜)が飛びかかってくるような絵が描かれている。袖や裾などには龍(こちらは東洋龍)をイメージしたような模様が描かれていて、紐や描かれた絵や模様などは光沢のある赤色で統一されていた。
「おー、イメージ通り。竜の絵と模様も格好良いな」
上機嫌になった俺は、次に靴の形と機能を考える。
竜脚に具現を繋げて靴を創る。一歩目から最高速度になるような加速機能と、足元に竜気による足場を作り沼地や水の上、空中などに立ったり走ることが出来る機能を付ける。
『魔法【竜脚】に【
[魔法創造]
【竜軀(竜気順応・竜鱗障壁・骨格強化)※常在
┗ 竜纏衣(竜気操作・環境適応)※具現】
【竜息(竜核創生・竜気生成・竜気循環)※常在】
【竜瞳(知覚強化・思考力強化・神経強化)※常在】
【竜腕(腕力強化・体幹強化・爪撃強化)※常在】
【竜脚(脚力強化・平衡覚強化・蹴撃強化)※常在
┗ 竜天靴(浮身瞬動・天地自在)※具現】
魔法が完成してすぐに起動させると、黒い粒子が両脚を覆い竜天靴を形作った。
中華風の竜纏衣とは違い、竜天靴は足首まである靴紐のない灰色のトラッキングブーツで、爪先部分に三つ、踵部分に一つずつ白い小さなドラゴンの爪が付いていた。竜腕の爪撃強化が靴にも適応するように工夫した結果だ。
「これで取り敢えずは街中を歩いても捕まらないだろ」
服と靴に満足したところで、残り三つの魔法の創造に取り掛かる。竜瞳と竜腕はそれぞれの性質をそのまま利用する形で機能を強化することにした。
まずは竜瞳に発動を繋げる。相手の弱点などを探しだす機能と、普通では対応出来ないレベルの高速戦闘が可能なようにする。
『魔法【竜瞳】に【
[魔法創造]
【竜軀(竜気順応・竜鱗障壁・骨格強化)※常在
┗ 竜纏衣(竜気操作・環境適応)※具現】
【竜息(竜核創生・竜気生成・竜気循環)※常在】
【竜瞳(知覚強化・思考力強化・神経強化)※常在
┗ 竜刻眼(万象看破・思考加速)※発動】
【竜腕(腕力強化・体幹強化・爪撃強化)※常在】
【竜脚(脚力強化・平衡覚強化・蹴撃強化)※常在
┗ 竜天靴(浮身瞬動・天地自在)※具現】
竜腕は汎用的な継戦能力を得られるように、爪を竜気で覆うことを発動条件にした。爪撃の威力を強化した上で、竜気の消費量を増やすことで瞬間的に攻撃範囲が広がるようにして、白いドラゴンの特性(因子)だった魔法を壊す機能を追加する。
『魔法【竜腕】に【
[魔法創造]
【竜軀(竜気順応・竜鱗障壁・骨格強化)※常在
┗ 竜纏衣(竜気操作・環境適応)※具現】
【竜息(竜核創生・竜気生成・竜気循環)※常在】
【竜瞳(知覚強化・思考力強化・神経強化)※常在
┗ 竜刻眼(万象看破・思考加速)※発動】
【竜腕(腕力強化・体幹強化・爪撃強化)※常在
┗ 竜爪閃(爪撃巨大化・魔法破壊)※発動】
【竜脚(脚力強化・平衡覚強化・蹴撃強化)※常在
┗ 竜天靴(浮身瞬動・天地自在)※具現】
「竜息には当然アレしかないだろう」
こちらには黒いドラゴンの特性だったものを追加した。
『魔法【竜息】に【●●●】を追加し創造します。よろしいですか?』
◇◆
「ははは……、想像以上にとんでもないな、これは……」
自分が為した結果とはいえ思わず乾いた声が漏れた。完成した魔法を一通り試した結果。二体のドラゴンが暴れたあとの大地が、三体のドラゴンが暴れた大地へと変貌を遂げたからだ。
「しかし消耗も相応に激しい。当たり前だが竜気の消費には気をつけるべきだな」
一息ついて呼吸するたびに、新たに竜気が生成されるのを感じていると、ふと周りの不自然さに気付いた。
「鳥はまだしも虫の気配すらない。これは……俺から漏れ出てる竜気のせいか?」
先ほど魔法を試した時の結果からすると、今の俺はドラゴン達と然程違いがないぐらいの威圧感を発している可能性が高い。そこで竜気の放出を制御して、辺りを威圧しないように意識してみた。
しばらくすると今までが嘘だったかのように森に生き物の気配が溢れ出した。
「よし、そろそろ移動するか。転移してから数時間は経っているはずなのにまるで飢えも乾きも感じないが、取り敢えず川でも探してみるか」
俺は飢えと乾きについては、竜気が何らかの作用をした結果なのだろうと意識して軽く考えると、水場を求めて歩きだした。
◇◇◆◆
しばらく森を歩いていると、少し高台になっている場所に出た。高い位置から森を見渡していると、この辺りは木が余り密集しておらず、まばらに生えているためか先の方までよく見えるようだ。
その時、竜眼による鋭敏な視力がはるか先に在る狼の群れを捉えた。獲物までの距離は2kmほど、群の数は全部で八頭のようだ。
転移前の俺からすると考えられないほどの好戦的な思考に、ほんの少し疑問を覚える。今は敢えて無視した。
まずは竜天靴に竜気を込めて足場を造ると、静かに力強く地面を蹴った。
一歩進むごとに急激に加速する。しかし世界はむしろ緩やかに流れているかのように感じた。俺はあっという間に獲物との距離を詰めると、一番近くにいた狼の首を竜爪閃を発動して一息に刎ねた。狼の首が宙を舞い地面に落ちる前に、三頭が集まっている場所に踏み込み、両手を振り抜いて回転するように切り裂く。
残りの狼達が俺に気付いた時には、群れの数はすでに半分になっていた。慌てふためく狼達に再び襲い掛かりながら、俺は獰猛な笑みを浮かべて獲物を狩る喜びを感じていた。
◇
狼達の動揺が治まる前に狩りを終えた俺は、一息ついているとまたもや頭の中に通知が響いた。
『実績が解除されました。報酬が与えられます。』
—————————
▼《Tips》
〈
世界を越える際に、世界と世界を遮る膨大な魔力の奔流に曝され耐え切ったことに対する
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