第28話 雰囲気◎

「ヒダリガワヲ、コウヤッテアワセル。」


滅多に、というか初めて着る服だから仕方ないんだけど、この歳になってまで他の人に服の着方を教えて貰うの本当に恥ずかしい。


多分着物なら真面目に着付けを学ばないと!って考えるからこんな気持ちにはならない。

一方でバスローブの下は下着無し、服が直接肌に当たるのと、


「ソシテ、ミギガワヲ、ウエニシテ、カサネル。」


布を挟んでいるとはいえ、明らかに意識してカチコチの雫先生の手が私の肌にちょくちょく当たるから。


「コレデ、ヨシ。」

「ありがとうございます……」


なるほど、こんな風に着るのか。

鏡に映る自分の姿を見て、ドラマで見たのと一緒だ!なんか気品がある気がする!とか色々と考えて恥ずかしさを紛らわす。


「ヤワラカ、カッタ……」

「……」///


いや雫先生にそんなこと言われたら無理だわ、恥ずかしすぎる。

そして、ちょっと危ない雰囲気も感じる。


「……」


さりげなく離れてリビングの椅子に座ったけど、雫先生はその場で固まってた。


「「……」」


んー、気まずい!

なんだこれ、もしも此処が自分の家で気まずい空気になった相手が姉妹のどっちかなら、部屋に篭って寝るぐらい気まずい。


「あの、雫先生……」

「……!な、なにかな?」


ん?言葉がカタコトじゃなくなってる、復活した?


「お風呂、ありがとうございました。」

「ゆっくり入れた?」

「はい。」


自分以外に誰も居ない浴室っていいな、って思いました。


「じゃあ、あったまってるうちに少しマッサージしようか。」

「嬉しいですが、大丈夫ですか?」


さっき私に触れたらカタコトになるぐらい意識してたし、逆に疲れちゃうんじゃないかな。

それにやってくれるのは嬉しいけど、お風呂にゆっくり入れただけでも身体はだいぶ楽になったからこのまま寝ても良いかな〜、なんて、


「じゃあいただ──部屋を用意してあるから行こうか。」

「……?はい。」


思ってたけど拒否権は無い。

変に断って雫先生に嫌われたら私のオアシスが無くなっちゃう、そうなったら本格的に両親へ電話して一人暮らしの相談する必要が出てくる。


「何か飲んでから行く?」

「いえ、大丈夫です。」

「そっか。」


バスローブを着てるとはいえ、少し肌寒いんじゃ無いかと思ってたけど何故かちょうどいい温度で快適すぎる。

リビングだけじゃなくで廊下も、これ床暖房ってやつかな?


「ここだよ〜、入って入って。」

「お邪魔します。」


わーお。


「さっ、早くベットに横になって。」


オレンジ色の電気で薄暗くて、しつこくない程度にアロマが炊かれてて、ベットはとても大きく大人3人が横になってもある程度の余裕がありそう。

……実際に行った事ないから完全な妄想なんだけどさ、恋人と行くホテルってこんな感じなんだろうなって。


もっとハッキリ言うと、なんかえっち。


っと、あまりの衝撃に固まってしまった。

ベットに入ってと……


「ふわふわ……」


なんだこの掛け布団、軽すぎてかけてる気がしない!ベットは少し硬めだけど体に負担が一切感じられない、体が1番楽な体制にジャストフィットしてる。


「ふふっ……」


軽く左右に揺れると包み込まれるような感覚がとても気持ちいい。大きさ、快適さ、そしておそらく高級品であり20万円ぐらいかな?


ずっと布団で包まれていたい……

そんな気持ちにさせてくれる最高の布団、私も欲しいな。


「えっと、掛け布団を取ってもいいかな?」


あっそうだった。


ポスッ……


「?」


腕を出したら力が抜けて掛け布団を上から押さえつけた、全く力が入らないし身体が掛け布団を取るのことを拒否してるとしか思えない。


「ふふっ、先にお風呂入ってきちゃうね。お布団楽しんで。」

「……はい。」///


子供みたいな扱いをうけてる気がする。

まぁ、このふわふわなベットで横になれるなら子供でいい。なんなら演技もしちゃう、赤ちゃんレベルは難しいけど小学生なりたてレベルまでなら羞恥心を殺してでも演技できる。


いや、このベットのためだったらワンチャン赤ちゃんも……?


「……ばぶぅ。」


……

…………

………………


ああああぁぁぁぁぁぁぁぁ?!?!?!

くっ、途轍もない羞恥心が!誰だよ赤ちゃんもいけるんじゃないかって考えたのは!(※自滅です)


「寝る!」


1人で寝てた時の横向きで膝を抱える安心出来る体制になって目を瞑る、頭まですっぽり掛け布団に収まればオレンジ色の光がなくなり、眠るのに最適な暗さになった。


「ん……」


意識が遠のいていく、今日も色々あったし疲れたのかな。


「ちゃんと、御礼言わない、と……」zzz




─シャワーを浴びて戻ってきた雫先生─


「さっきは理性が壊れてしまう寸前だった、なんとかシャワーを浴びて冷静になれてよかったな。」


職場の生徒が待機してる雰囲気がちょっと危ない部屋の前でこれまた危ない独り言を言う不審者、それが今の私です。


「よし……」


さて、扉を開けよう。


「お待たせ〜……?」


部屋の中ではベットの上で掛け布団が膨らんでおり、頭まで入ったのか顔も見えない。


「栞華ちゃん?」


掛け布団を捲ると丸まって寝てる栞華ちゃん、これまた破壊力のある寝顔だ。


「……膝を抱えて眠る、なんか無かったっけ?」


心の中で不安を抱えているとか、自分の身を守ろうとしてる、だっけ?


「栞華ちゃん……」


今思えば何も知らない、それとなく聴いた時は誤魔化されちゃったけど栞華ちゃんは何を悩んであの屋上から……


浮ついた気持ちが冷めた私は横になり栞華ちゃんを後ろから抱きしめる。


「おやすみ。」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「害虫にも等しい存在だよね。」

「そうだねお姉ちゃん」


次回『取られたシマイ』






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