第22話 少し経って

「ねぇ栞華、抱きついてもいい?」

「いいよ……」


「お姉ちゃん、私も……」

「左側空いてる。」


2人が私に殺意を向けていることに気づき、2人の要求の殆どを受け入れる様にしてから2日。

要求がだんだんとエスカレートしつつあり、若干……いや、かなり後悔しています。


「「大好き。」」

「……そう。」


最近では耳元で『大好き』や『愛してる』など、普通の姉妹ならまず言わない事を言われるようになり、だんだん恐怖より困惑が強くなっています。


「今日も学校休んじゃう?」


ほらね?ヤバイ要求きたよ?


今日も、って言ってることからもわかるように昨日は学校に行ってない。連続での休みは流石に私の評価に関わる、なんならお姉ちゃんも進学や就職に影響してヤバイだろう。

だが断るのもヤバイ、何がヤバイかって変に要求を受け入れてしまった影響で断ろうとすると2人は人が変わる。


昨日の夕食の時、畔華に箸を取り上げられ夕食を食べさせられそうになったのを流石に断ろうとしたのだが、2人は無表情になり私を見つめ、私は真っ暗な穴に落ちていくような感覚に陥いった。


アレは逆らってたら殺られてたよね。


うん、間違いない。


「う〜……」


ダメだ、色々と考えすぎてて語彙力がとても落ちてるし、自分の考えのはずなのに自分で納得するという意味分からないことまで起きた。


私の脳内はヤバイという言葉で埋め尽くされている。


「そんな可愛く唸っちゃって、猫耳付ける?」

「……これから学校行くから付けません。」

「えぇ〜、行くのぉ〜〜?」

「行きます。」


これは先生のところへ、先生に相談して解決方法を本格的に探さないとダメだ。

このままだと私は生活が壊される。


「ケッ、お姉ちゃんはサボり魔の姉さんと違って真面目なんだよ。

テストで0点取っちゃえ。」

「私ってテストで90点以下取ったことないんだよね、基礎さえ固まってればどんな問題でも答えを出せるんだよ。

畔華は何回か赤点取って泣いてたからわからないかもだけどね〜。」


生活の前にストレスで胃が壊されちゃうかも……


「へー、なんか学校が面白くなさそ。」

「私は栞華が居てくれるだけで楽しいから別にいいの。」


私が頭を押さえるのを堪えていると、2人の煽り合いはどんどんヒートアップしていく。

止めなければ。


「ご飯……」

「「すぐ用意するね!」」


一文字も違わずタイミングも完璧なんだから仲良くしてよぉ……


「「何食べる?」」

「パン。」


今回は2人ともキッチンに行った、今のうちに準備しちゃおう。



ーーーーー


学校内の私のオアシスに到着しました。

何処かって?


「久しぶり。」

「うん、久しぶり先生。」


雫先生の居る保健室です。

傷ついた心が癒やされていくのがわかるよ、きっと雫先生からマイナスイオン的な何かが出てるんだと思う。


「風邪引いちゃったって連絡があったみたいだけど、大丈夫だった?」

「大丈夫ですよ、ご心配をおかけしてすいません。」

「良かったぁ……」


一生徒の休みの理由まで把握して、心の底から心配してくれるとは、流石は雫先生!

みんなに愛される保健室の先生!


「少し、相談したいことがあるんですが今いいですか?」

「はい、大丈夫ですよ。」


実は、と最近の2人との生活を雫先生に話す。


生徒の相談を沢山聞いているのもあってか雫先生はとても聴き上手、2人が怖いという言うつもりが無かった事まで話してしまった。


「そうだったの……」

「雫先生、私どうしたらいいのかな。」

「う〜ん。」


悩んでるなぁ。


私も姉妹達に命を狙われて怖いです〜、なんて相談されても困る。なんなら関わりたくないって思って適当に話しを切る自信がある。


それか、貴方のしたいようにすると良い、って相談した側からしたら意味ない返答をするかな。


まぁ、雫先生は素晴らしい解決案をくれるはず──


「栞華ちゃんの好きなようにするべきだと思うよ、私はどんな選択でも応援する。

もし2人から離れたいだとしてもね。」


悲報、雫先生でも解決できないことがあるようです。


「あっ、はい。」

「具体的な解決策じゃなくてごめんなさい、でもこの問題は栞華ちゃん自身が解決するしかないと思うの。」


うぅ、見捨てられたわけじゃないけど結局は1人でなんとかしないといけないのがわかって悲しいよ。


「そう、ですよね……」


うわぁ……うわぁ……


「大丈夫?」

「は、はい……」


雫先生に心配そうに手を握られて私はショックから目覚めた。


「……」

「……?」


最近、お姉ちゃんと畔華が私を抱きしめている間は怖い雰囲気を出さない事に気づいたけど、やっぱり人の暖かさって安心したりするんだろう。

手から伝わってくる温かさは私の心を癒してる。


「ごめんなさい。」

「え?あっ、え?」


雫先生を抱いて横になる。


「おやすみなさい。」

「えっ、はい……」



─眠りに落ちてから少し経って─


「栞華ちゃん授業がそろそろ終わっちゃうから起きて。」


「……」zzz


「眠りが深い、家で眠れてないのかな。

いっそのこと私が栞華ちゃんと暮らせば解決するかな?」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


次回・ブラック



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ドジで怪我した私 1ヶ月後に目が覚めると姉と妹がめっちゃ病んでた ノツノノ @pannda1617491021

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