第20話 私の方が……
畔華と2人で写真を撮ってから、少しだけ関係が改善された気がする。
どことなく私が畔華から感じてた悪い雰囲気が改善された気がするし、喋り方が柔らかくなってる。
「美味しい……」
「今は蟹フェア中だから、シーフード系を多くしてみたんだー!」
「美味しいよ。」
「……」
でも、何故かお姉ちゃんは悪化してしまった。
いかにも不機嫌オーラを出して、黙々とピザを食べてる。畔華と私が会話するたびにジトッとした視線を感じる。
ぶっちゃけ怖いを通り越して不気味です。
「そう言えば、今日はどっちとお風呂に入りたい?」
「さっき入ったからいい。」
「そっか!」
今日の畔華は聞き分けがいい。
ちゃんと私の意見を聞いてくれてる気がして、とても会話がしやすいです。
写真如きでここまで関係が改善されるとは思わなかった。
いや、まさか写真を友達と撮るのは関係の改善のためだったとか?
写真を一緒に撮れば友達という事を再認識出来て結果的に仲が深まるとかありそう!
(※そんな事はありません、ただの妄想です)
「湯冷めしてない?」
「大丈夫です。」
そんな事を考えている私にお姉ちゃんの冷たい声が聞こえ、思わず距離のある敬語で話してしまった。
「チッ……」
これは、まずいぞ……
お姉ちゃんの不機嫌オーラが凄まじい勢いで大きくなっている。
「ごちそうさま、少し上にいく。」
「いってら〜!」
あのピザを全然食べてないんですけど、これ確実に不機嫌でこの場から離れようとしてる。
そんなお姉ちゃんにビビらず普通に話せる畔華は凄い。
「あっ!これも美味しい!」
「……そうだね。」
私はこの後のことを考えたら憂鬱だよ……
「テレビ見る〜?」
「見ないかな…」
ピザを食べ終わり、畔華と一緒にのんびりしている。
「畔華〜、塾から電話だよ?」
お姉ちゃんが固定電話片手にリビングへ入って来た。
「えぇ〜〜、なんて?」
「サボりすぎだからいい加減にしろって、早く行って来な。」
「やだぁ〜。」
サボりは流石に見過ごせないぞ?
「畔華、サボりはダメだから行って来て。」
「えぇぇ〜〜、わかった……」
凄い嫌そうにだが畔華は塾へと向かった。
畔華が頭がとても良いのは知ってるけど、サボった影響で受験が上手くいかない可能性もある。今は嫌でも後々やっといてよかったって思える日が来るよ。
多分!
「……」
さてと、現実を見ようか私。
「……」
目の前で無表情の姉が私を見つめているこの現実を……
いや私にどうしろと?!
そもそも機嫌が悪くなった理由もわからないし、近づいたり動こうとしただけで不機嫌さが増してもうどうしようもない。
話しかけたりしたら殺されるんじゃないかな……
「ねぇ栞華。」
「……はぃ。」
その雰囲気のまま話しかけられて怖い。
なんだろう、例えるならこっちから近づくと威嚇して来るくせに向こうから寄って来るニャンコみたいな怖さ。
ニャンコから寄ってきたのにシャーシャー鳴かれたのはトラウマ……
「もう寝ようか。」
「えっ…あ、うん…」
有無を言わさぬ瞳だったなぁ。
ーーーーー
栞華のパジャマ姿に脳を焼かれ意識が遠くに行っていたとき、どうやったかわからないが栞華と畔華の距離がかなり近くなっていた。
本当にどんな手段を使ったのか、栞華が畔華に近づいているように見え畔華への嫉妬を隠しきれなかった。
それは隠しきれずに態度にも出ちゃって、私も畔華みたいに近づいて欲しかったのに逆に栞華が離れちゃった。
「おやすみ……」
「うん、おやすみなさい栞華。」
ほら、今だってせっかく2人きりでベットを使えるのに私に背中を向けてる。
「なんで後ろを向くの?」
「……!」
「こっちを見て?」
私の言葉に軽く肩を振るわせるだけで、他の反応は一切ない。
畔華を含めて私達が避けられるてしまうのは仕方ない、だけど畔華と距離が近づいたのに私は更に距離が離れるのが納得できない。
私の方が畔華なんかより栞華の事を考えてるんだよ?
栞華が快適に過ごせるように学校の教師をどうやって黙らせるか、栞華が毎日を楽しく過ごせるようにするにはどうしたらいいか、栞華が傷付かないようにするにどうするか、
そして、高校を卒業したあと栞華との2人きりの生活のこと。
ずっと、ずーっと栞華の事を考えてるんだよ。
「なんか怒ってる、気がして……」
「え?」
怒って……え?
「雰囲気が怖いな、って。」
「雰囲気が?」
「うん……」
雰囲気って畔華に向けてた殺意のことか!
なるほど、畔華にだけ向けてたと思ったんだけど栞華も感じとっちゃったみたいだ。
「ふぅぅ……」
もう出してるつもりは無いし、どうすれば落ち着くかわからないけど深呼吸をしてみる。
「どうかな?これで消えた?」
「消えた、かも?」
「そっかそっか〜、よかった。」
じゃあ怖い雰囲気が消えたから、
「向かい合って寝ようか!」
「ぇ……」
「さっ、早く早く!」
栞華は緩やかな動きで寝返りをうち、目と目が合った。
「「……」」
でも距離が遠い、多分15cmくらい離れてる。
最低でも5cmぐらいまでは近づきたい。
「……」
「……!」
近づこうと動いたら栞華が距離をとった。
恥ずかしがり屋さんめ。
「こうしたら暖かいから。」
「……そうだね。」
腕を伸ばして抱きしめる、少しの抵抗を感じたあと大人しく腕に収まってくれた。
可愛い。
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次回 慣れてきた恐怖
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