第19話 ふ、普通?
ピザ、それはデリバリーする事で謎に特別感を感じる不思議な料理。
私達の家では両親が居た頃、極々稀にLサイズとMサイズを1枚、サイドのポテトとサラダを注文していた。
姉妹同士でピザの具を何にするかでジャンケンをしたり、届くまでワクワク気分で待っていたりと注文するだけで子供にとっては楽しいイベントが盛り沢山、それがピザ。
「パイナップルだけでいい?」
正気か?
せっかくのピザなんだからもう少し味を考えない?せめて半分ずつは変えたいと思うんだけどな。
「久しぶりだし、色んなの食べたい。」
「わかった〜、どんな系統のやつがいい?」
系統……ビーフメインかシーフードか的なのだろうけど、私にとってはどっちも新鮮だから本当に色んな種類が食べれればそれでいいや。
「色々……」
「う〜む、じゃあ適当に選ぶね!」
頼んだ畔華、2ヶ月に1回ぐらい急に自分の分だけピザを頼んでた畔華のセンスが光るよ!
……でも1人で食べるぐらいなら、良い匂いしてたしお金は私が払うから声かけて欲しかったなぁ。
あっ、1人では絶対に頼まないよ。なんかワイワイ食べるイメージが強いピザを1人で食べるのって寂しいじゃん?
「おっラッキー、サラダのクーポンあるじゃん。」
まだ幼い頃は電話注文だったのに今はもうスマホでネット注文が主流、時代は変わるなぁ。
「注文完了!
配達まであと30分だって、意外と早いけど時間が少し早いからかな。」
「いくらだった?」
「4000円ぐらいだけどスマホで決済したから安心して。」
「そっか。」
未だに殆どの買い物が地元のスーパーで現金で払っている私にとってスマホで決済は少し抵抗がある。
使えると便利なんだろうなぁ、とは思ってるんだけど、なんというか怖いんだよ。
「今度さ、時間がある時でいいからさ……スマホで決済するやり方教えて欲しいな。」
「い、いいよ。」
私のお願いに畔華は何処か気まずそうにしていた。
それもそうか、今時の高校生がやり方分からないなんておかしいもんね。
基本的にメールとか電話しか使わないから、ゲームやる時間も勉強しなきゃで全く無いからね。
……なんか行動が年寄りみたいになってる気がする。
畔華とは1歳しか差が無いはずなのにジェネレーションギャップ的なのを感じるのが辛い。
「「……」」
あとは注文を待つだけ、何して時間を潰すべきか。
「ねぇ、お姉ちゃん。」
「ん?」
「パジャマ姿の写真撮っても良い?」
えぇ……
「何に使うの。」
「私だけが楽しむ。」
それ絶対に嘘でしょ、絶対に壊滅的に似合ってない写真見て笑うつもりじゃない?
でも、出来るだけ要求には応えないと……
「わかった。」
「やった!
あっ、ポーズも指定して良い?」
「……!」
自分の醜態を記録として残す覚悟を決めた私に、畔華はスマホを手に取りカメラをこっちに向けて嬉しそうに更なる要求を重ねて来た。
「ちなみに、どんなポーズをしたらいい?」
「顔の横に猫の手ポーズ。」
恥ずっ!
それは2次元だからこそ許されるポーズだとお姉ちゃんは思うのですよ。
なんて考えてるけど、
「……わかった。」
「やった!」
私に拒否権は無いのであった。
「じゃあ、こっち来て。」
「うん……」
畔華にリビングの椅子に座らせられた。
そのまま指示通りに猫耳フードを被り、細かい位置の調整、目の前の机に肘を付いて顔の横に猫の手を作る。
「あとは顔を少し傾けてみて。」
「こう?」
「そうそう!いい感じ!」
その姿勢のまま待機してると写真を撮る音が聞こえた。
「うん!じゃあ体勢は自由にして大丈夫だよ。」
「そう……」
こうして思い出したくない歴史が増えてしまった。
「ほら、見て見て!」
そんな呪物を私に見せてこようとする畔華、内心嫌々ながらも平常心を装ってスマホを見る。
「あれ?」
画面に映っていたのは猫耳パジャマを着た私だったが、顔には猫髭がついてて頬はほんのりピンク色に染まっていた。顔の横にはニャーンと丸い文字で書かれている。
「可愛いよね!」
「え、あっ、うん……」
「これ簡単に写真を編集できるアプリで、私のは買い切りで1つの写真に無制限にスタンプとか追加できるんだ〜。」
クラスの女子がとある日の休憩時間に写真撮る時にウサギ耳付ける?とか言っていた意味がわかった。
「次は2人で撮ろう!
お姉ちゃんがやりたい編集してみて!」
「やる。」
友達が全くいない高校1年生な私、こういう友達とワイワイ出来るのには興味がある。
いや正直にいえばめっっっちゃ、やってみたかった。もう妹と2人でワイワイやりたい。
「ここは動物で、こっちが不思議で、こっちが──」
加えられるのが多すぎる。
畔華のわかりやすい説明で自分がやってみたいと思った編集を種類が多くて目移りしながらも完成させた。
私が作ったのはシンプルに顔の周りに羊っぽいモコモコが現れるやつ、あとは写真を撮るだけ。
「じゃあ頬っぺたをくっつけるよ。」
「ん?」
「女の子同士で写真を撮るなら、これぐらいの距離普通だよ?」
ふ、普通……?
そうか、意外と友達同士の距離って近いんだな。
まさか畔華から友達としての距離を教わることになるとは思わなかった。
いつか、いつか私にも友達ができた時に役に立つ、ありがとう畔華。
「ん。」
「……えへへ。」
畔華の頬っぺた柔らかい。
「撮る。」
「はーい。」
「距離が近い!!!」
写真を撮るのとショックから復帰して来た姉が乱入して来るのはほぼ同時、スマホの画面にはブレて何を撮ろうとしたのかすらわからなかった。
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次回・私の方が……
投稿時間23時40分、なんとか月曜日に更新出来ましたが遅くなり申し訳ありません!
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