第16話 お持ち帰り

エビドリアはとても美味しかったです。

量的にも値段的にもコスパはかなり良い、サラダとポテトも美味しかったし、久しぶりに味が濃くて重いものを食べれて私は満足。


「アイス食べる?」

「ん〜、アイスはいいや。」


ちょっと調子に乗って食べすぎたかもしれない。


「むむ、あ〜んが出来ない。」


食べてる途中、姉が何回もあ〜んしてこようとポテトを差し出していたけど、ファミレスで人も沢山いるし断固拒否した。

店内は食事をしている人でいっぱい、入り口にも席が開くのを待っている人がいる。


「待ってる人も居るし帰ろう?」

「そうだね。少し残念だけど家に帰れば出来るし諦めて帰るよ。

ちゃんと飲んだ?」

「う、うん。」


もっとあ〜んの為に粘ると思ってだんだけど、意外とあっさりしてるな。


人が多くて狭くても車椅子が通ろうとすればみんな道を譲ってくれる。

人の優しさを強く感じた瞬間だった。


「お会計は1900円になります。」


1人あたり950円くらいか……

これが外食にしたら高いのかわからないけど、自炊した方が安く済むのは間違いなさそうだ。


会計は姉頼り、家に帰ったら私の分は渡そうと思う。


「ありがとうございました〜。」


ここから家まで……多分30分くらい?

私は基本的に家の買い物以外に外に出ないから道は知っててもどれぐらい掛かるかはわからないんだよね。


それにしても、満腹になったせいか眠いな。


「うぅ、眩しい…」


暖かい日の光が眠い私の目に突き刺さる。まるで拷問のようだ。


「大丈夫?ハンカチしかないけど目隠ししておく?」

「お願いしよう、かな……」


本当に突き刺さる……

身体も重くなって来たし、保健室で寝たとはいえ寝不足が解消しきれなかったのかもしれない。


「きつかったら言ってね。」

「え?」


姉に手に握られていたのはどう見てもハンカチには見えない大きさのタオルだ。

それを私の目に合わせて結んだ。


これ周囲から見られて大丈夫?

目隠しされた女子高生が車椅子で運ばれてるけど通報案件じゃない?


あっ、でも光入ってこなくてとても快適だな。


「寝ててもいいよ〜。」


そう言ってくれてるけど、視線が気になって無理っす。

景色が見れないから感覚が鋭くなって視線をよく感じる、すんごい見られてるのがわかるんだよ。


「あ、なにか歌ってあげようか?」

「絶対に辞めて。」


恥ずかしいから!



ーーーーー



「着いたよー。」


鍵を開ける音が聞こえ、タオルの結び目に姉がふれた。


ただいま我が家。


「まぶしぃ……

それに、体が重い……」

「ふへへ、体から力を抜いてお姉ちゃんが全部やってあげるからリラックス、リラックス。」

「うん……」


頭が働かん、保健室でもっとガッツリ寝てればよかった。


でも寝不足にしてはちょっとおかしい気もする。

身体がだるいし、とても暑く感じる、ワンチャン普通に風邪をひいたかもしれないな。


姉に背負われた状態で階段を登っていく。


「さてと、皺になっちゃうから制服を脱ごうね〜。」

「うん……」

「ついでにシャツも脱いじゃおっか〜。」

「そうだね、熱いし……」


ベットに座らされ制服を脱がされていくのがわかる。脱いですぐはヒンヤリとした空気を感じだけど、直ぐにまた暑苦しくなった。


「ふっは!」


その声は一体なんだ、息も荒いし姉も体調があまり良くないんだろうか。


「可愛いね。」

「さい、で……」


ベットに横にされた影響か意識が飛び飛びだ。

姉の言ってる事も支離滅裂に聞こえるのに加えて、私の思考能力が落ちてて理解できない。


「抵抗しないと触っちゃうよ?チューもしちゃうし、抱きついてスリスリもしちゃう。」

「ぇぇ……」

「いいよね?」


もうわからん、わからんけど、


「好きにして、いいよ。」

「!!!」


何やるのかわからんけど必要な事ならもうやってくれ〜…


「この私、西川菁華。

生姜とかを上手く使い身体がポカポカする薬を作り出した、栞華に使うように作ったけど正直に言って本当に効くとは思ってなくてビビってる。

でもそれはそれだ、下着姿でベットに寝転がってる栞華から『好きにしていい』と言われてしまったら仕方ないよね?

では、いただきます。」


なんかブツブツ呟いてるけど何言ってるんだろ。


ピト


「んっ。」


冷たい手が私の首元に触れてくる。

最初はびっくりしたけどヒンヤリして気持ちが良い、触れている手はそのまま顔の方まで上がった。


「目を開けて?」

「ふぇ?」


あっ、顔がすごい近い。


「お姉ちゃんと目を合わせて、そう上手だよ。

栞華はお姉ちゃんの言う事が聞けて偉いね。」


頭を撫でながら褒められてる、温もりを感じるというか、すごく幸せな気分になる。

待って、お姉ちゃんの指示に従った今が幸せってことは、お姉ちゃんの言うことを聞くのが正しい?


真理だ、真理に気づいてしまった。

(※現在の栞華は身体がポカポカで、思考がフワフワしており、とてもチョロくなっております。)


「は?何してんの?」


そんな中お姉ちゃんの声とは違う声が聞こえた。


「なんで帰って来てるんだよ。」

「今日はテストだから半日なんですぅ!

というか、この状況を説明しろ!」

「うわ、怖いなぁ?」


なんか喧嘩してる?

よくわからないけど喧嘩はダメだよ、ダメダメ。


「栞華、この五月蝿いのはすぐに片付けてくるから良い子で待っててね。」

「片付けられるのは姉さんだけどね?」


扉が閉まる音が聞こえ、部屋が静かになった。


眠い……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


次回・何があった?!

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