第14話 愛されてた

「うああぁぁぁ!」


保健室には泣き声が響いている。

少しずつ大きくなりベッドで眠っている栞華ちゃんが起きてしまわないか心配だ。


泣いてしまった子の途切れ途切れの話を繋げて私なりに理解したのは栞華ちゃんは好かれていたということ。

助けられたと語るこの子はもちろん、クラスメイト達も憧れや尊敬といった感情を向けていたらしい。


でも、私は知っている。

栞華さんと何度か話しているうちにボソッと溢したあの一言、


『クラスメイト達とは上手くいってるんですか?』

『えぇ、まぁ…

話さないですけど関係は悪くない、かな…』


濁して話していたから余り触れられたくないのかと話をずらそうとしたとき、


『私も遊んだりする友達が欲しい…』


私に聞かせるつもりがなかったのだろう、とても小さな声だったが私には聞こえた。

つまりだ、栞華ちゃんのクラスメイトは栞華ちゃんへの憧れが邪魔をして気軽に接することができなかったのだろう、遠くから眺める事しかできない高嶺の花と言えるだろうか。


だけど皆の高嶺の花である栞華ちゃんは普通に接してほしかった、寂しかった、友達がほしかった、決して孤高の存在ではなかった。


とても悲しいすれ違い、でもどちらも悪くない。


そんなすれ違いに気づいた私だけど、仮に私から栞華ちゃんにそれを説明しても納得してくれないだろう。

人が動いてる気配はしないしベッドで眠っているんだろうけど、この子の訴えを聞いたら理解してくれたんじゃないかって少し残念。


「落ち着くまで此処にいていいからね。」

「ぁい、ありがとぅございまず…」


本当なら教えてあげたいけど、限界が来ちゃった栞華ちゃんにクラスメイトを会わせるのはダメだな。


「いつか、栞華さんが落ち着いたら話せると思う。

その時は憧れとか罪悪感とか、そういうのをほとんど排除して話してみるといいよ。」


私にはこんなアドバイスしか出来なかった。



ーーーーー



「ん…」


目が覚めた。

時計を見ればまだ授業中にも関わらず深く眠りにつけたおかげか疲れが吹き飛んだ、睡眠は大事だってハッキリとわかった。


え、やば。

頭の痛さ、身体の怠さ、全てが嘘のように消え去っている。


「あ、よく眠れた?」

「おはようございます。」


ベットに腰掛けてカーテンを開けると、クラスメイトはすでにおらず雫先生が眼鏡をかけて何かの作業をしていた。


にしても生き返ったな、身体の調子がいい。


グ〜…


「あっ。」///

「あっ。」


身体が整ったからかお腹が鳴った。

恥ずかしいし、その音を聞いたらお腹が空いてることに気づいたり忙しい。


「ふふ、もう少しでご飯の時間だけど、なにか食べる?」

「いいんですか?」


あの美味しいクッキーかな?!

卑しい考えが浮かんだけど、雫先生と一緒に食べたクッキーはマジで美味しんだ。


「今日の私のお弁当はサンドイッチだからね!」


速報・空腹の生徒の私、保健室の先生の手作りサンドイッチを食べる事になりそう


「えっと、雫先生が食べる物が無くなっちゃうので時間まで我慢します。」


よくよく考えれば姉がお弁当持ってるだろうしあと少しの辛抱だ。


「これです!」


我慢すると伝えた筈なのにお弁当箱を持ってきた雫先生、お弁当箱の中には一口サイズのサンドイッチが複数個入っていた。


「可愛い…」


なんというか、ミニチュアのようでとても可愛いお弁当に見えた。

サンドイッチ以外は何も入っていないのにサンドイッチの中にレタス、トマト、ハム、など彩りの良い物で色んな種類で作られており、すごく綺麗だ。


「私のオススメは、ミートサンドイッチです。」


ミートサンドイッチ?あまりお弁当として作るとは聞かないな。


「お店とかで出るローストビーフが使われている物とは全然違うんですけどね。」

「どうやって作ってるんです?」

「えっとね。

食パンの上にほそ〜く切った千切りキャベツを乗せて、レンジでチンするだけのミートボールを少し潰して挟むの。」


あのミートボール美味しいよね。

不思議な中毒性があるというか、自作してもなんか違う気がして買っちゃうんだよな。


「美味しそうですね。」

「どうぞ!」


いや、それは断ったんですけど…


でもキラキラしてる雫先生に見つめられ、私は1つのサンドイッチを手に取った。


「美味しい…」


うわ、これウマ!


「良かったです。

ミートサンドイッチはもう無いですけど、もっと食べます?」

「いや、あと少しなので我慢します。」


元は雫先生が食べる分、量もあまり多くないしね。


「わかりました。」


今度はアッサリと引き下がった。

その姿を見て意外だと感じた私は姉妹達に毒されている、あの2人なら多分引き下がらずにあ〜んで食べさせようとしてくるだろう。


いや多分じゃないな、絶対だわ。


「……」ゾクゾク


あの2人の事を考えたせいか、身体に悪寒が走った。


「大丈夫ですか?」

「え、はい。

全然大丈夫です、少し嫌な予感がして。」


変なシンパシー的なので向こうに伝わってないといいなぁ。


バン!


…フラグだったのか、この扉の開け方は例の奴しかあり得ない。


「栞華、飽きたから帰ろっか!」


なんやねんその理由。




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次回、身の危険(意味深)

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